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2004.02.13

デフレの終わりは始まったか? [ コラム ]

 皆さん、こんにちは。木村 剛です。

 blogをはじめて1週間が経ちましたが、早速多くの方々から貴重なご意見やご批判をいただき、blogの効果に驚くとともに、大変ありがたく思っております。
 今後も、日本の経済や金融についてホットなトピックスを挙げながら、実務家の立場で私が日頃考えていること、感じていることを書いていきたいと思いますので、よろしくお願いします。


世界経済回復の持続へ改革推進 G7、共同声明採択へ (asahi.com)
http://www.asahi.com/business/update/0207/021.html


 コンサルタントという仕事柄、色々な企業の経営者とお会いする機会が多い。こういう方々の生の声をお聴きしていると、同じ経営者として時代の潮目を読むことの重要さを痛感させられる。同時に、世の識者と呼ばれる人々の意見が、往々にして現場の認識と大きくズレがあることを感じざるを得ないことも多い。

 先週末、米フロリダ州のボカラトンというリゾート地で、G7(先進7カ国財務省・中央銀行総裁会議)が開催された。新聞各紙は、為替相場の安定に日米両国が一致したと報じ、谷垣財務大臣も「為替相場の過度の変動には必要な対応をとる」と、円高に歯止めをかけるための市場介入を継続する意向を示している。
 確かに、過度な円高は、輸出企業に与える悪影響が大きく、短期的には景気回復に冷や水を浴びせることにもなりかねない。政府・日銀が躍起になって円売り・ドル買い介入を続けて、外貨準備を積み上げているのもやむを得ないことなのかもしれない。

デフレが日本の財政悪化を隠してきた


 ただし、よく考えてみてほしい。
 長い目で見て、円高は悪いことだろうか。そもそも、ある国の通貨が強いということは、その国の政府に対する信認が厚いということだ。G7共同声明には「為替レートは経済ファンダメンタルズを反映すべき」と書かれているが、円高は、市場が「日本のファンダメンタルズはしっかりしている」と受け止めていることを示していることになる。

 本当にそうなのだろうか。

 今の円高の背景として、多くのエコノミストは米国の財政赤字に対する懸念を指摘する。しかし、日本の財政事情は、実は米国よりはるかに悪い。2003年度末における国と地方の長期債務残高は695兆円で、GDP比139.5%の水準にある。この水準は、米英はもとよりイタリアやギリシャよりもはるかに高く、OECD加盟国の中で最悪だ。3年ほど前に経済危機に陥ったアルゼンチンですら、財政赤字のGDP比は53%だった。日本の財政がこんなに悪いにもかかわらず、長期金利は低位にとどまっている。デフレが、財政悪化を覆い隠してきたからだ。
 しかし最近、どうもデフレの雲行きが怪しげになってきた感じがする。

 昨年年間の東京都区部の消費者物価指数(除く生鮮食品)は前年比0.4%の下落にとどまった。これは5年連続の下落なのだが、品目別に見ると、ティッシュペーパー、輸入品ハンドバッグ、婦人上着などが軒並み10%以上、値上がりしている。また、企業物価指数を見ても、中国の旺盛な需要などを反映して鉄、非鉄、紙パルプなどの素材の上昇が目につく。一時騒がれた「中国脅威論」は鳴りをひそめ、今や中国を巨大な輸出マーケットと捉える見方が大勢となっている。

 先日あるアパレルメーカーの経営者と話をしていたら、そのメーカーが生産する高級紳士服は、中国では日本よりも1割高い値段で売られているそうだ。これまで安売りが当たり前だった日本でも、高級品の品薄感が強まっているという。また、あるコンビニ・チェーンの役員によれば、今や消費者は安ければ買うということではなく、そのコンビニでも高めの値段が付いているプライベート・ブランドの売れ行きがいいらしい。


問題はデフレから脱却した、その先にある


 ひょっとすると、世の中のトレンドが変わりつつあるのかもしれない。すでに目先の利く外資系のブランド皮革メーカーは、相場の2倍以上の賃料を払って銀座の一等地にフラッグショップを構えている。このようなビジネスの現場を見ていると、消費者はデフレがいつまでも続くわけではないことを認識し始めているのかもしれないと思ったりする。「デフレの終わりの始まり」の兆しが見えつつあるのではないだろうか。

 モノやサービスの需要が高まることによって物価が上昇し、日本経済がデフレから脱却すること自体は歓迎すべきことである。ただし、問題はその先だ。経済がデフレから脱却した時に、マーケットは今の日本の金利水準が異常なまでに低いことに気づきはしまいか。日本の財政が危機的状況にあることを改めて認識しまいか。歴史的にも世界的にも、今の日本のように10年国債利回りが1%前後の水準で推移してきたケースはない。裏を返せば、デフレが終焉したとき、金利が今の水準にとどまることはありえないということだ。

 このような財政事情を抱える日本であれば、長期金利が5%程度に急騰する可能性すら完全に否定することはできない。そのとき、為替市場で問題になるのは、どう円高を阻止するのではなく、むしろ深刻な様相を示すかもしれない円安にどう歯止めをかけるかということになるかもしれない。

 私は予想屋ではない。したがって、金利がいつ上昇し始めるのかを的中させることに、興味の中心はない。しかし、一経営者としては、今年後半にかけて、デフレのトレンドが終焉した時のリスクについて真剣に考えなければなら
ないのかもしれない、と感じる。もちろん、それが現実にならないことを切に祈りながらということではあるが……。

2004 02 13 [04. 経済政策を語ろう!] | 固定リンク

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