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2004.02.19

なぜ日本振興銀行は経営体制を変更したのか? [ コラム ]

 皆さん、こんにちは、木村剛です。多種多様なご意見をうかがうことができるココログを毎週書き込むことが楽しみになってきました。「日常/非日常blog」さんから、「まずは開設おめでとうございます。日本振興銀行にはとてもとても期待しておりますので、頑張ってください」という応援をいただいたので、最近公表した日本振興銀行における経営体制の変更について解説させていただきたいと思います。というのは、マスコミは、誤った先入観や大銀行からの情報操作で、憶測に基づく記事を垂れ流しがちだからです。


「日本振興銀行のガバナンスの強化について」から


 去る2月12日、4月に開業を目指している日本振興銀行は、ガバナンス体制の強化とともに、経営体制の変更を公表した。突然の発表のように受け取られたせいか、様々な憶測が乱れ飛んでいるようなので、整理した上でお話しすることとしたい。
 今回の経緯については、翌2月13日、日本振興銀行の前身である中小新興企業融資企画株式会社の株主向けに発送された「日本振興銀行のガバナンスの強化について」というレターが最も正確に記述している。そこで、その文面を紹介しておこう。

 拝啓 時下、益々ご清祥のこととお慶び申し上げます。
 現在、私たちは、本年4月の日本振興銀行の開業に向け役職員一丸となって日々業務に励んでおります。お陰さまで関係各位の多大なご支援、ご協力も賜り、これまで概ね滞りなく作業が進捗しております。こうした中にあって、私たちは、銀行本免許の取得を迅速化し確実なものとするべく、日本振興銀行の根幹を成す重要なコンセプトである「日本一厳しいコーポレートガバナンス」のあり方について、改めて検討を行い以下の結論を得ました。

一、 執行と監督の分離を一段と明確にするため、代表執行役と取締役会議長を分離すること
一、 営業等のフロント業務部門の影響が及ばない執行部内の組織が、リスク管理、コンプライアンス等のミドル業務を所掌すること
一、 落合伸治は、取締役、執行役への選任を辞退し、全預金に対する無限連帯保証の実施を見送ること
一、 代表執行役社長に小穴雄康、同副社長に阪田登が就任し、落合伸治をバンカーとして教育する後見人となること
一、 落合伸治は、小穴雄康、阪田登の薫陶の下で研鑽を積み、2~3年後に満を持して代表執行役社長に選任されるよう努力すること

 日本振興銀行の設立は、中小企業金融において需要の多いミドル・リスク・マネーの供給を目指して、落合伸治が中心となり推進してきた一大プロジェクトであり、その本質にいささかの変更もございません。そういう中で、「名実ともに一流のバンカーとなるために、小穴雄康、阪田登の薫陶を受けながら一兵卒として一から銀行業を学びたい」という落合伸治の強い意思により、銀行設立当初においては、取締役、執行役への就任を辞退することになりました。開業予定を間近に控えたこの時期にこのような変更を行い、株主のみなさまにはご心配をお掛けし誠に申し訳ありませんが、今回の組織・人員体制の変更は、日本振興銀行の経営・内部管理体制を強化するものであることをご理解頂き、引続き暖かいご支援を賜りますようお願い申し上げます。


人事変更の原型とその経緯


 じつは、日本振興銀行では、昨年10月31日に予備認可をいただいてからも、最適なガバナンス体制のあり方を模索していたところだった。リスク管理やコンプライアンスというミドル業務までも、ガバナンス側が統括するという厳しい態勢を想定していたため、執行部門に対してはかなり強烈なプレッシャーが掛かる仕組みになっていたのだが、逆に言えば、資産残高が積み上がっていない初年度からかなりのコストをガバナンスのために必要とする構造になっていた。

 ご存知のように、新しい銀行を開業した場合には、3年目に黒字化するという条件が課せられている。初年度から多額のコストを前提とする場合には、その負担が後々響いてくることにもなりかねない。
 このため、日本振興銀行では、昨年12月頃より、ミドル業務については、ガバナンス側ではなく、執行部門が所管するものの、人事権についてはガバナンス側に残すという方法で、実質的にコストを下げながらも、ガバナンスのクオリティを落とさないようにする工夫を模索してきた。実際、幾度も議論を重ねている。

 そこには問題がひとつあった。その案を採用する場合には、実質上、ミドル業務に対するガバナンス側のプレッシャーが弱まってしまう。このため、議論する中で、代表執行役と取締役会議長を分離するとともに、執行部門のフロント業務(融資等)におけるコントロールを強化すべきという考え方が強まっていく。じつはそのときから、今回の人事変更の原型となる、「落合→小穴→阪田」という序列ではなく、「小穴→阪田→落合」という構図が望ましいという意見が支配的になっていった。
 落合伸治氏から「一兵卒として、一から銀行業を勉強したい」という申し出があったのは、じつは、そういう状況下だったのである。

 ひとつは、彼自身、認可手続をこなしていく中で、ノンバンクの常識とバンカーの常識との隔たりに少なからず考えさせられたことがあったということがあったように思う。また、自分としては何ら問題のない取引であると確信しているにもかかわらず、あたかも問題取引をしたかのようにミスリーディングな報道をされてしまうことに対する警戒心というものが芽生えたという側面もあるだろう。さらに、おそらく決定的な要因となったものとしては、「預金すべてに対して連帯して無制限の個人保証を行う」ということのプレッシャーにかなり悩まされていたということがあったに違いない。

 日本振興銀行の経営陣は、落合伸治氏の申し出を受けて、最善の処方箋を探ることになる。その討議の結果ひねり出された案が、落合伸治氏が取締役からも執行役からも外れて小穴・阪田氏の監督下に入ることによってガバナンス体制を強化するとともに、代表者による預金保証を撤回するという処方箋だったのだ。
 その経営方針の決定を受けて、日本振興銀行は、2月12日、急遽「日本振興銀行におけるガバナンスの強化について」と題した記者会見を行い、代表執行役と取締役会議長の分離等について発表を行った。記者会見資料の内容は以下のとおりである。


 私たちは、昨年10月31日に金融庁から銀行設立に関する予備認可をいただいてからも、「日本一厳しいコーポレートガバナンス」を実現するためのガバナンス体制のあり方を検討してまいりましたが、このたび、執行と監督の分離をさらに明確化するため、代表執行役と取締役会議長を分離することを決定いたしました。私どもとしては、この措置が、日本振興銀行のコーポレートガバナンスを一段と強化することを確信しております。

1. 基本的なコンセプト
 執行部を代表する代表執行役が、コーポレートガバナンスの主体である取締役会を代表する取締役会議長を兼ねることは、執行と監督を分離するという観点からみると、画龍点睛を欠くことになりかねません。日本振興銀行におきましては、そうした懸念を払底するために、代表執行役と取締役会議長の兼務を認めない扱いといたします。

2.メンバー構成の変更
 上記の結果、日本振興銀行の主要組織におけるメンバーは、以下のとおり、変更されることとなります。

(1)執行役会(予定)
・ 代表執行役社長:小穴雄康(元第一勧業銀行専務)
・ 代表執行役副社長:阪田登(元日本債券信用銀行専務)
・ 執行役:大久保資(前あおぞら信託銀行社長)
・ 執行役:砂長淳洋(前E&Yグローバルフィナンシャルサービス部長)

(2)取締役会(予定)
・ 取締役:小穴雄康(元第一勧業銀行専務)
・ 取締役:阪田登(元日本債券信用銀行専務)
・ 取締役(社外・非常勤):赤坂俊哉(弁護士)
・ 取締役(社外・非常勤):入山利彦(三菱商事顧問)
・ 取締役(社外・非常勤):木村 剛(KFi代表)
・ 取締役(社外・非常勤):西崎哲郎(金融イノベーション会議理事長)
(議長は社外取締役より互選)

(3)指名委員会・報酬委員会・監査委員会・経営監査委員会
(旧称:経営監視委員会)(予定)
・ 委 員:赤坂俊哉(弁護士)
・ 委 員:入山利彦(三菱商事顧問)
・ 委 員:木村 剛(KFi代表)
・ 委 員:西崎哲郎(金融イノベーション会議理事長)
(委員長は社外取締役より互選)

3.組織体制の変更
 従来は、非常勤の社外取締役で構成される監査委員会や経営監査委員会等が、内部監査業務のみならず、リスク管理やコンプライアンスというミドル業務までも統括するという管理態勢を想定しておりましたが、代表執行役と取締役会議長を分離し、執行と監督の峻別をさらに明確化することによってガバナンス体制を強化したことから、当分の間、ミドル業務部門につきましては、人事権を取締役会に留めた上で、フロント業務部門の影響が及ばない執行部内の組織において実施する扱いといたします。
したがいまして、非常勤の社外取締役によって構成される監査委員会や経営監査委員会等が統括する対象は、当分の間、内部監査部門が中心となりますが、日本振興銀行の業容が拡大し、その必要性が出てきた際には、当初の予定通り、統括する対象をミドル業務にまで拡大し、さらにガバナンス体制を強化することといたします。

4.預金に対する個人保証の免除
 これらの結果、代表執行役が取締役会議長を兼務する体制ではなくなるため、日本振興銀行全体を個人一人のみで代表する立場ではなくなります。このため、代表執行役に「預金すべてに対して連帯して無制限の個人保証を行う」までの義務を課すことは過度な責任を負わせることとなりますので、これを免除する扱いに変更いたします。


 先ほど指摘しておいたように、落合伸治氏が日本振興銀行のトップとして、組織を率いていくためには、ノンバンクの常識ではなくバンカーとしての常識を十二分に学んでいただく必要がある。だからこそ私は、記者会見においても、「銀行経営者としては脇の甘いところがある」と敢えて苦言を呈しておいた。
 ノン・エスタブリッシュメントの人々がエスタブリッシュメントの世界に羽ばたこうというとき、マスコミは必ず潰しに来るからだ。用心するに越したことはない。1%の真実に99%の真っ赤な嘘をブレンドして誹謗中傷を繰り返されても耐えられるだけの強靭な精神力としたたかな前捌きを学ばない限り、エスタブリッシュメントの世界で打たれることなく飛び続けることは至難の業だ。
 新しいことを断行する際には雑音がつきものだ。これからも色々な雑音が付いて回ることだろう。しかし、ミドルリスク・ミドルリターンの中小企業向け融資の開拓というミッションが色褪せない限り、日本振興銀行は幾多の苦難を乗り越えて、成功へと突き進んでいく。心ある人は応援してほしい。

2004 02 19 [07. 銀行はどこへ行く?] | 固定リンク

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