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2004.02.23

金融改革は遅々としてでも進んでいるが、財政改革は闇のままか? [ コラム ]

 皆さん、こんにちは、木村剛です。先日アップした「『一寸先は闇』だからこそ、問題を先送りするな」に関して、「木村さんのブログは毎週拝見しております。投稿された記事に対しトラックバックするのも、私にとってはよい頭の体操です」と書き込んでいただいている「アジア海外駐在員便利帳」さんから貴重なご質問をいただきましたので、お答えしたいと思います。

 今回は週刊!木村剛: 「一寸先は闇」だからこそ、問題を先送りするな!よりキーワードを抜き出してみました。

 ・『一寸先は闇』
 ・『問題先送り』
 ・『破綻状態』
 ・『患部の摘出手術』

どれも、かなり前から言い古されたフレーズかなとの印象です。キーワードだけでも木村さんの趣旨が推定できます。ホント、日本って変わっていないのですね。

更に、記事の最後は『「一寸先は闇」だからこそ、先送りせずに現実を直視し、常にベストを尽くすことが求められているのだと私は思う。』と締めくくられております。

興味本位の質問かもしれませんが、もし、木村さんがこのトラックバックをご覧になられていたら貴殿のお考えをお聞かせいただきたいのですが、

 ・貴殿専門の金融の分野でとりうる現実的な施策を実施したとして、X年後の日本の将来はどのようになっていますか?
 ・また、それは『一寸先は闇』の世界とは随分違うものなのでしょうか?

現実直視・ベストを尽くすことには全く異論はないのですが、将来像が描ききれなくては『一寸先は闇』の現実は変わらないのではないかと思います。それとも『一寸先は闇』の現実はこの先も続くのでそれを念頭にした行動をとるべきとの貴殿のお考えでしょうか?


3段階にある不良債権処理


 まず、私の専門分野である金融に限って申し上げますと、不良債権問題に関しては、遅々としてではありますが、着実に改善の歩を進めていると考えています。「『一寸先は闇』だからこそ、問題を先送りするな」のコラムでも、「竹中金融担当相が就任した2002年秋以来、金融改革は目にみえて進捗した。少なくとも一部の銀行の問題が、金融システム全体に波及するシステミック・リスクの懸念は大幅に後退していると言ってよい」と明記しているように、不良債権問題が改善の途上にあることは間違いありません。

 そして、同コラムで「金融プログラムに掲げられている、来年3月末までの不良債権比率の半減目標をすでに達成した銀行も出てきている」と触れたように、不良債権処理の進捗度合いで銀行をグループ分けすれば、自然体で達成できる第1グループが出てきたことは頼もしい限りです。また、歯を食いしばって努力することにより達成できそうな第2グループにも少なからぬ銀行が属しています。

 ただし、問題は残っています。それは第3グループです。未だにインチキを弄して、数字遊びの類で不良債権比率の半減を達成しようとしている輩が一部にいるようです。この第3グループに関しては警戒を怠ってはいけないという意味で、「極めて残念なことではあるが、銀行界における患部の摘出手術はまだ完全に終ったわけではない」と同コラムでは書かせていただきました。


不良債権問題は3年後には片付いている(と期待したい)


 もっとも私は、不良債権問題に関する限り、解決できる道筋はついたと考えています。それなりに解決するためのフレームワークは整ってきました。後は、その道筋を如何に素早く進めることができるかという勝負になってきているような気がします。
 もっとも、来年4月以降はペイオフが解禁されますので、今年中に患部の摘出ができなかった場合には、処理が遅延した一部の銀行でペイオフが実行される可能性も否定できません。ペイオフ解禁以降の金融マーケットでは「新陳代謝=失敗した銀行の円滑な退場」が当たり前という世界になるからです。

 そういう意味で来年一杯は、ペイオフ解禁という新しい環境に対する動揺というものがみられるかもしれませんが、そういう試練をうまく乗り越えることができれば、来年末に向けて明るい展望が開ける可能性もあると思いますし、遅くとも3年以内には日本国全体を象徴する言葉としての「不良債権問題」というワーディングが消え去ることを期待しています。

 したがって、「貴殿専門の金融の分野でとりうる現実的な施策を実施したとして、X年後の日本の将来はどのようになっていますか」というご質問に対する私の答えは、「3年後には不良債権問題は片付いている(と期待したい)」というものです。
 ただし、不良債権問題を片付けるだけで、わが国の金融システムが正常化するわけではありません。銀行行動が競争原理に基づいて、真にお客さま本位のものに変わっていく必要があります。そのためには、「新陳代謝=新しい銀行の参入による競争促進」が大切なのです。私が「日本振興銀行の成功が重要だ」と認識している理由はそこにあります。


財政赤字問題は依然「一寸先は闇」


 不良債権問題が片付き、新銀行の参入によって、銀行業界において健全な競争メカニズムが働くようになれば、少なくとも金融の分野に関する限り、「一寸先は闇」という状況からは脱することができると私は考えています。
 ただし、わが国が抱えている巨額の財政赤字という問題については別です。私が政策の実務家としてみる限り、経済的にも政治的にも現状の枠組みの下で実行可能と思われる処方箋がなかなか思いつきません。そういう意味で、残念ながら、財政赤字問題に関する限り、「一寸先は闇」という状況は継続するものと思います。そして、その副産物としての金利高や物価高が再び金融問題を惹起させる可能性についても、完全に否定することは難しいだろうと覚悟しています。

 したがって、「また、それは『一寸先は闇』の世界とは随分違うものなのでしょうか」というご質問に対する答えは、「不良債権問題に関しては、随分と違うものになると思いますが、財政赤字問題に関しては、一段と悪化してさらに『一寸先は闇』という状況になっているかもしれない」と取り敢えずはお答えしておきたいと思います。

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