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2004.04.23
団塊パワーは景気の牽引役となるか [コラム]
最近、尾花広報部長から、「ちょっとやりすぎなんじゃないですか…」と白い目で見られつつ、「腐女子の行く道、萌える道」さんや「HINALOG」さんからトラックバックをいただいて調子に乗るオヤジぶりを露呈している「週刊!木村剛」ですが、一応(?)、このブログのウリは毎週金曜日のコラムです(お間違えなきように!)。
私は経営者でもあるので、常日頃、時代の流れを読む鍛錬を自分に課しています。そういう視点から、本日は、日本経済における「団塊の世代」の意味合いについて注目してみたいと思います。
富裕層向けビジネスが活況を呈しているらしい。各企業は、この豊かな消費者層を取り込むために、新たなビジネスの開拓に躍起となっている。
総務省の家計調査(2002年度)によると、世帯主の年齢階級別貯蓄高は60〜69歳が2349万円、70歳以上は2575万円と、働き盛りである30〜39歳の720万円、40〜49歳の1150万円をはるかに上回っている。さらに、4000万円以上の貯蓄を保有する世帯主の平均年齢は63.3歳だというから、マスマーケティング的には富裕層と高齢者層はおおむね重複しているとみていいだろう。
マスコミの論調を見回していると、高齢者については、どうしても「生活が苦しい」とか「将来に不安」という紋切り型のフィーリングに浸ってしまいがちだが、冷静に現状を直視すれば、じつは、そこそこの金額の退職金や少なからぬ年金を手にした、おカネも時間も持っている豊かな消費者層が新たに台頭していると言ってよいのかもしれない。
良きにつけ悪しきにつけ、「団塊の世代」はわが国の経済に大きな影響を与え続けてきた。そして、これからも影響を与え続けるだろう。その「団塊の世代」がこの消費者層の仲間入りをしはじめているのだ。1947年から52年に生まれたこの世代は現在52歳から57歳。1400万人を超える「団塊の世代」は、今後十数年で全員65歳を超えてくる。
子育てを完全に終えて、公的年金をそこそこ手にすることもできる「団塊の世代」は、税負担が増える一方の若者層からみれば、「逃げ切り世代」と言えるかもしれない。もっとも、カネは天下の回りもの。この世代が本当の意味で、おカネと時間をもっている富裕層の仲間入りを果たせば、その消費パワーは日本経済を大々的に活性化する可能性もある。この世代は、「シルバー世代」という辛気臭い言葉を忌み嫌って、自ら蓄えた資産を自らの老後を謳歌するためにすべからく消費するかもしれないからだ。
そして、よくよく見ると、その兆候は随所に現れつつあるような気もする。
花盛りの富裕層向けビジネス
高齢者層≒富裕層は、おカネも時間もあるだけに、まずは旅行業界が熱い視線を注いでいる。格安旅行で有名なHISではあるが、熟年層をターゲットにした高級海外パッケージツアーだけは違う。顧客1組ごとに専用ガイド、専用車を用意した高級旅行ブランド「エレガンテ」のコンセプトは、「執事を連れて旅するような旅行」だとか。バリ島8日間ツアーの1名の料金は70〜80万円となっており、従来のツアー料金の5倍以上の価格となっている。
大手のJTBも銀座に高級旅行専門店をオープン。その極め付けは4月より発売されている、プライベートジェット機をチャーターした海外旅行だ。旅行のプランニングは、「旅のコンシェルジュ」が顧客の希望にあわせ、すべてオーダーメイド。飛行機は8〜14席のプレミアムクラスの専用機で、ジェット機のチャーター代だけで東京からポルトガルのマデイラ島往復で約4300万円。さらに、ホテル代やガイド代は別途加算されるという。富裕層にターゲットを絞り、初年度6億円の販売目標を掲げるこの商品の謳い文句は、「気分はハリウッドスター!」だという。
医療や介護分野でも高齢者層≒富裕層向けビジネスが盛んだ。介護関連の事業を行っているコムスンは、昨年10月より富裕層を対象にした「コムスン・プラチナサロン」を開設した。サロンの場所は展望のよい六本木ヒルズ35階で、「24時間、ホームヘルパーや看護師を自宅に常駐させて欲しい」、「ホームヘルパーや看護師に随行してもらいながら旅行へ行きたい」などといった富裕層顧客の要望をすべて聞き取り、専用メニューを用意している。
バス・トイレ付きのホテル形式の病室を用意し、ルームサービスや料理のオーダーも可能な、超豪華ホテル並みのサービスを提供する医療機関も続々と誕生しているようだ。なかでも明確に富裕層にターゲットを絞って登場したのが、すべての診療を自費で行う医療機関「クリントエグゼクリニック」。完全予約制とすることで、待ち時間ゼロで個々人の患者に十分な診察時間を確保しているが、保険のきかない高額の自由診療で提供されている。医師はすべて提携大学病院から派遣されており、入院が必要な患者は当該大学病院の特別個室(一日20万円の室料差額が加算される)を紹介される。
このように高齢者層≒富裕層向けビジネスはまさに花盛りの様相を呈しつつあるのだが、これらには、最高級のサービスをオーダーメイドで提供するという共通点がある。新しく勃興しつつある豊かな消費者層は、おカネに糸目はつけないものの、その分だけ、いかに自分の要望に合うか、満足できるかを重要なポイントとして要求してくる。
少子化にも関わらず好調なベビー用品市場
こうした中で、意外に堅調な展開を見せているのがベビー用品市場だ。素直に考えれば、少子化に伴って苦戦しているはずのベビー用品市場は、じつは着実に拡大している。1人の女性が生涯、何人の子供を産むのかを推計した合計特殊出生率は年々低下し、2002年には1.32と過去最低を記録した。ゼロ歳児の平均的な子育てコストは年間約50万円(「子ども未来財団」調査)といわれているので、2002年の出生数約115万人を単純に掛け合わせると、ゼロ歳児を対象にすると約6000億円弱の市場となる。
報道によれば、ベビー関連市場(妊娠関連を除く)の規模予測は、6000億円にとどまらず2004年には1兆円を超え、その後も微増を続ける見通しのようだ。その背景には、商品の多様化や高級化などもあるが、何よりも子どもにかける金額が増加しているという点を見逃すわけにはいかない。俗に、1人の子どもの背後には親、祖父母、親類などの「10のポケット」が控えている、ともいわれるが、特に祖父母にとっては、かわいい孫のためなら財布の紐も緩みがちというもの。
このような状況下、大手総合スーパーは、孫を持ちはじめた「団塊の世代」をターゲットに、ベビー用品売り場を相次いで拡充している。西友はベビー用品専用売り場を前年比3倍の50店に増加させ、イオンも5000平方メートル近い国内最大級の売り場を展開しているところだ。
消費回復のカギを握る「団塊の世代」
余談になるが、2003年平均の東京都区部消費者物価指数をみてみると、お子様ランチの値段が前年比1.6%値上がりしていた。上昇品目ランキングでも第8位となっている。これも、少子化が進展する中、裕福な祖父母が孫に対する支出を増やしていることを反映しているのかもしれない。
企業の回復などを反映して、給与所得の減少には歯止めがかかりつつあるとはいえ、増加ペースは依然として緩慢である。それにもかかわらず、ここへきて個人消費の改善を示す指標が多く発表されているのは心強い。とくに、今年に入ってからは、株高の資産効果もあって消費者心理は上向きはじめているとも言われる。4月12日に発表された3月の消費者態度指数(東京都)は3ヶ月連続で上昇した。
こうした「所得増加なき消費回復」を支える主役は、資産効果を享受していると思われる高齢者層≒富裕層なのかもしれない。今後、「団塊の世代」が定年を迎えはじめ、このような富裕層入りすることを考えれば、個人消費の行く末を占うためには、彼らの動向をウォッチしておく必要がある。団塊パワーが景気の牽引役となる可能性があるからだ。そういう意味で、各日本企業がこの層の顧客開拓に躍起になっているのは象徴的な出来事でもある。
2004 04 23 [04. 経済政策を語ろう!] | 固定リンク
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