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2004.04.30

大阪は名古屋に負けるのか? [コラム]

 毎週金曜日のコラムの日です。私の部下に、熱狂的な阪神タイガースのファンがいます。昨年、星野前監督の下でセ・リーグを制したタイガースですが、今シーズンは今一つ波に乗れず、勝率5割程度で行ったり来たりしているとのこと。今のところ、去年ほどの勢いはないようです。
 しかし、勢いがないということで申し上げると、深刻なのは「大阪経済」でしょう。今回は、企業の本社機能の東京集中という問題と絡めて、大阪経済の「地盤沈下」について考えてみたいと思います。

<大阪府発表「『在阪企業等の本社機能に関する調査の結果』等について>http://www.pref.osaka.jp/fumin/html/03108.html

 日本を代表する都市の一つである大阪府は、日本のほぼ中心に位置し、古くから海上交通の要所として、そして日本経済・文化の中心地として栄えてきた。面積は都道府県で2番目に小さいが、人口は約880万人と東京都に次いで多くの人が居住している、まさに大都市である。
 しかし残念なことに、この日本第2の大都市・大阪の「地盤沈下」を指摘する人々が年々増えてきている。

地盤沈下著しい大阪経済

 近年における大阪府の経済規模(名目県内総生産)は、ほぼ40兆円前後で横ばい圏内の推移だ。もっとも、全国における大阪経済のシェア(2001年度)は、10年前(1991年度)から0.5%も落ちており(8.4%→7.9%)、同時期において、東京都が微増し(16.7%→17.0%)、愛知県が同水準である(6.8%→6.7%)こととは趣きを異にしている。県別の完全失業率(2002年9月)でみても、大阪府の失業率は8.6%と全国の5.4%を大幅に上回り、沖縄県(9.3%)に次ぐワースト2となっている。 
 こうした経済低迷の影響をもろに受けて、大阪府の税収は大幅に悪化。経常的な支出を地方税や交付税で賄えるか否かという観点でみると10年連続で全国ワースト1。昭和20〜30年代、臨海部の工業地域において年間20cmもの地盤沈下を記録して社会問題を惹起した大阪は、いま経済の「地盤沈下」に脅かされている。

「逃げたらあかん 逃げたら くちびるかんだけど」

 こうした大阪経済の地盤沈下の象徴が、日本企業における本社機能の東京移転である。4月20日に大阪府は「在阪企業等の本社機能に関する調査の結果」を発表したが、その調査では、大企業(資本金100億円以上の上場企業)56社のうち27社の社長が東京に常駐しており、取締役会も東京で開催しているという。
 業種別では、金融・商社の本社機能の東京シフトが著しい。例えば、大阪を登記上の本店としていた旧住友銀行は、旧さくら銀行との合併に伴って三井住友銀行の本店を東京に移している。日本経済新聞の証券欄をみれば、大阪証券取引所上場銘柄の大半は東京証券取引所にも上場しており、大証での取引が実質的にないケースが目立つ。前日比の欄は気配値を示す「ケ」の文字がずらっと並ぶだけ。
 本社機能の東京移転を進めている企業は、東京という巨大マーケットの魅力、取引先や中央省庁、さらにはマスコミや業界団体の関係など情報量の優位性などから東京へのシフトを進めていると答えている。大阪に本社機能を置かない理由として、「大阪にいると経済・金融情報が入ってこない」、「交通が不便で路上・違法駐車などマナーが悪いため移動時間がかかる」などというものまで挙げられてしまう始末だ。
 一昔前、関西出身の上田正樹は「悲しい色やね」をヒットさせて一世を風靡したが、「逃げたらあかん 逃げたら くちびるかんだけど」のフレーズとは裏腹に、企業が大阪から逃げていく様が目に浮かぶようだ。大阪府の思いをよそに、日本企業の大阪脱出は想像以上に進んでいる。

脆い「第2の都市」の地位

 思えば、全国「第2の都市」という地位はそもそも脆いものである。
 アメリカでは、かつてシカゴが人口で全米第2位、ロサンゼルスが第3位の都市であったが、1980年代半ばに両都市の立場が逆転した。シカゴは商品取引所CME、当時世界一の高層ビルであったシアーズタワー、全米一の貨物輸送量を誇るオヘア国際空港、全米有数の美術館であるシカゴ美術館など、経済・文化の面で超一流のインフラを有しているが、こうした「超一流」のインフラとしては、ハリウッドしか持っていなかったロサンゼルスに第二位の地位を譲ってしまった。
 その理由として、国際的な認知度の差があったと指摘する声は少なくない。ロサンゼルスには、ハリウッドの他に、「チャイナタウン」、「リトルトウキョウ」などのアジア系移民がコミュニティを形成し飲食店などを営んでいる街があるが、これが国際的知名度を高める一因になったとも考えられている。
 NBAのスーパースターであるマイケル・ジョーダン率いるシカゴ・ブルズは90年代に2度にわたって3年連続でNBAタイトルを獲得したが、残念ながら、これによってシカゴの魅力が高まることはなかった。大阪経済も、阪神タイガースの優勝だけでは立ち行かなくなっているのではないだろうか。残念ながら、昨年の優勝フィーバーは、大阪経済のフィーバーまでにはつながっていない。
好対照なのが名古屋だ。ロサンゼルスと同様に、大阪を追い上げる名古屋は、来年3月から愛知万博(愛・地球博)が開催されるという追い風もあり、元気な姿をアピールしている。中部国際空港の運営に関しても、関西国際空港の轍を踏まないという強い決意が感じられる。
東京ではあまり報じられていないが、2007年に名古屋駅前に完成する豊田・毎日ビルにトヨタ自動車の海外営業部門が東京から移転してくるというのも地元にとっては明るいニュース。世の中の流れと逆行するかのように東京から名古屋へシフトするわけだ。
 名古屋の元気の背景に、トヨタ自動車の存在があることは言うまでもない。自動車産業には国内製造業としての存続を左右するような海外シフトは今のところ見られていないため、家電メーカーの下請企業が多い大阪のように海外生産シフトの影響を受けなかったという見方もある。
 こうした中、トヨタ自動車の奥田会長は、2004年1月号の文藝春秋において、「『景気回復といっても東京や名古屋といった大都市だけで地方の状況はひどい』(中略)という声があることは認識している」と書き、あたかも「大阪は大都市ではない」という風に聞こえかねない発言を行って財界人の間で静かな物議を醸したが、名古屋と大阪の全国シェアの差は1%程度に縮まっている。大阪の奮起がないまま、このままシカゴとロサンゼルスの逆転劇は、日本でもみられるのかもしれない。

「官製」ではなく「感性」を!

 とはいえ、商人(あきんど)の魂が息衝く大阪がこのまま廃れていくのは寂しい。
 それでは、大阪の「地盤沈下」を食い止めるカギはどこにあるのだろうか。1つのカギは、海外とくにアジアに目を向け、大阪の魅力を向上させることだと言われている。上述の「在阪企業等の本社機能に関する調査の結果」に関して、太田大阪府知事は、定例会見で次のように指摘している。

「外資系企業の調査で明らかになったことは、本社機能を大阪に置くかどうかということは、東京との対比においてのみならず、シンガポール、香港、上海との対比において立地を検討するということでありました。このことも当然でありますけれど、明らかになったということは大きなことで、大阪が東京ばかりを意識しないで、アジアの拠点としてどうあるべきかということをまじめに考えていかなくてはならないということを示した大事な調査結果であると思っております。」

 今さらながらという発言ではあるが、大阪は、東京に比べて、オフィス諸経費や人件費などが割安で、ビジネスだけでなく住環境にもゆとりがある。そのようにポジティブに考えれば、アジアを中心とする外資系企業の誘致に、大阪復権のカギは隠されているのかもしれない。すでに昨年9月には、シンガポールの有名ホテルを経営するラッフルズ・インターナショナルが難波駅に直結したスイスホテル南海大阪の営業を開始した。
 元々、大阪はエネルギッシュな街だ。東京ばかりを意識せず、大阪らしさを追求すればいい。官主導の第三セクターによる妙なハコモノではなく、商人の感性を最大限に発揮させるべきだろう。大阪が「官製」ではなく「感性」に訴えかける魅力を復活させたとき、アジアの有力企業は大挙して大阪に押し寄せてくるのではないか。

 (お知らせ)4月29日のゴーログ「公的年金関係者よ!公開討論会に応じよ!」において、「週刊!木村剛」は、坂口力厚生労働大臣(与党代表)、菅直人民主党党首(野党代表)、厚生労働省年金局総務課(霞ヶ関代表)、河野太郎自民党議員(与党若手)、古川元久民主党議員(野党若手)の5人の方々に対し、公的年金改革に関する公開質問状をEメールで送付いたしました。本日、念のためにファックスで同じ文面のものを送付しておきます(「Eメールを送られたことなど知らなかった」と言い訳されないようにするためです)。
 彼らがこの呼び掛けに応じるか否かは不明ですが、もし、公開討論会が開催できるようであれば、私が主宰しているウェブページ「フィナンシャルジャパン ON LINE!」において、その模様をそのままブロードバンド放送することを皆さまにお約束いたします。
 その公開討論会に備えて、「こんなことを聞いてみたい」「こういう討論をしてほしい」「俺の主張はこうだ!」など、皆さまのご意見をどんどんトラックバックしていただけると幸いです。与野党の人々や霞ヶ関の方々が「出ます!」と言わないと成立しない企画ですが、公開討論会にすら出ることができないのに、公的年金を抜本的に改革しようなどというのは片腹痛い茶番劇です。
 良いチャンスです。彼らが本当にわれわれの生活を改善しようとしているのか否か、確かめてやろうじゃありませんか。この公開討論会に出ることができないような公的年金関係者はウソツキ野郎に決まっていますから。
 ちなみに河野太郎自民党議員は、下記の通り、早速返信してくださいました。

From: 河野太郎 [mailto:taro@konotaro.org] Sent: Wednesday, April 28, 2004 9:47 PM Subject: RE: 質問状の送付
三つともイエスです
三番目は時間の制約などがありますが。
河野太郎

2004 04 30 [04. 経済政策を語ろう!] | 固定リンク

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