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2004.05.28

UFJはハンドだった?[コラム]

 皆さん、こんにちは。木村剛です。毎週金曜日のコラムの日がやってきました。今日のコラムでは、今週、大手銀行グループの2004年3月期決算が出揃ったこともあり、金融にスポットを当ててみたいと思います。

<大手銀3月期決算、5グループが黒字転換(NEWS@nifty)>http://newsflash.nifty.com/news/te/te__yomiuri_20040524it13.htm

 5月24日、大手銀行7グループは、2004年3月期決算を発表。昨年5月に実質国有化されて1兆6639億円の当期損失を記録したりそなグループと、異例とも言える決算再修正によって4028億円の赤字決算に落ち込んだUFJグループの2グループを除いた5グループ(みずほ、三井住友、三菱東京、住友信託、三井トラスト)が黒字転換を果たした。もっとも、UFJグループの決算直前までのドタバタ劇をみていると、他の5グループの今後に全く懸念がないのかと言えば、そうとは言い切れないかもしれない。

UFJグループにおける乖離

 竹中平蔵氏が金融担当大臣として就任した2002年秋以来、金融改革は遅々とした歩みながら着実に進展してきた。昨年11月に発表された2003年9月期中間決算以降、景気の回復や株式市場の持ち直しを受けて、少なくとも一部の銀行の問題が金融システム全体に波及するシステミックリスクの懸念は大幅に後退したといえる。ただし、不良債権問題への見方は、過度の悲観から楽観に振れている局面も見受けられた。問題の大口融資先は、数こそ少なくなったが未だマーケットに残存している。色々と複雑な仕組みを使って、実態が変わったかのように見せかける再建計画も少なくない。

 今回の決算発表において、UFJグループは、金融庁や監査法人の指摘を受けて大口問題先などの引当を積み増した結果、不良債権処理費用は、4月28日の2004年3月期業績予想の修正時における8130億円から1兆3115億円と、5000億円以上も膨らんだ。報道によれば、金融庁は、昨年8月から今月までの通常検査および本年1月から4月までの特別検査(株価や外部格付などに著しい変化が生じている等の大口債務者について検証を行い、直近の企業業績等をリアルタイムに反映した適正な債務者区分の確保を図るとともに、再建計画を有する債務者については再建計画の検証を行い、その結果も踏まえて債務者区分を判定する検査)を行ってきたが、その結果、UFJグループの自己査定による不良債権残高と検査によって判定された不良債権残高に2〜3割もの大幅な乖離が判明したという。

じつは、ハンドしてました!

 金融再生プログラムに基づいて、金融庁は主要行における自己査定と検査結果の格差を公表しているが、2002年11月の初公表時における貸出金分類額の格差(自己査定結果と検査結果の乖離幅)は、50%以上が5行、25〜50%が7行、25%未満が3行という惨憺たる結果であった。
 こうした実態を受けて、2002年12月には金融監督に関する「事務ガイドライン」が改正され、正当な理由がないにもかかわらず自己査定と検査結果の格差が是正されない場合には、銀行法に基づき業務改善命令が発動されることになっている。各紙で報道されているとおり、UFJグループにおいて自己査定と検査結果に2〜3割の乖離があったとすれば、この1年半もの間、同グループでは自己査定をどう考えていたのか、首を傾げざるを得ない面がある。

 行政におけるルールはすでに明確になっていた。それにもかかわらず、4月の業績予想修正から1ヶ月も経たないうちに、不良債権処理費用が一気に5000億円以上も拡大している。UFJグループの2003年中間期ディスクロージャー誌には、「経営課題の解決に向けた取り組み」として、「UFJグループでは、これまで、大口貸出先の再建に向けた支援の実行、厳格な自己査定の実施など不良債権問題の解決に向けた取り組みや、株式保有にかかるリスクの圧縮を進めるなど、経営上のリスクの低減に努めてきました」と記されているのだが、同グループにおける「厳格な自己査定の実施」とか「不良債権問題の解決に向けた取り組み」とは一体何だったのだろうか。まさか贅を凝らした先送りの芸術だったわけではあるまい。
 UFJグループでは今回の赤字決算の責任を取る形で、寺西正司UFJ銀行頭取らトップ3人の退任を決定した。かつて寺西前頭取は、2002年10月の金融再生プログラム始動時に、税効果会計の見直しに関し全国銀行協会会長として、「銀行はルールのなかで経営されており、サッカーをしていたのが、突然、アメフトになった感じだ」と述べていた。しかし、今回のドタバタ劇をみていると、「サッカーはやっていたが、じつはハンドしていた」と批判されても致し方ない面があるのではないか。

問題先送りから決別しよう

 UFJグループは新体制の発足に当たって、マーケットの信任を回復するために2004年度上期中に大口問題先への対応を済ませ、同年度中に、財務の健全化を完了する財務改革方針を公表した。特定大口先専担部署を新設し産業再生機構等も活用して、この半期で大口問題先を片付けるという。これは相当の決意だと信じたい。また、親密な信販会社や不動産会社に役員を送り込み、再建支援姿勢も鮮明とするという。これらの先に大ナタを振るって再建を進めるということだと思いたい。
 一般論として、インチキにインチキを重ねた再建計画を掲げて、何とか検査をしのごうとしている銀行が仮にあるとすれば、それは債務者である企業にとっても、債権者である銀行にとっても、決して望ましいことではない。多くの場合、いたずらに時を浪費し、企業価値を損なうだけに終わるのだから、その企業に勤めている従業員にとっても決して好ましいことではないのである。
 本来であれば、抜本的な再建計画に基づいて再生に向かってまい進しているはずの再建企業において頻繁に再建計画が見直されるのは、再建していることをアピールするという意向が強く働いたために、計画の内容に瑕疵があるにもかかわらず、その適用を急いでしまったことに主因がある。大手問題先と目される企業においては、再建するのかしないのか分からないような、先送りで先細りの再建計画にしがみついて、未だに長期衰退の道をたどっているケースがみられることを残念に思う。

 もっとも、先送りを許す環境は変わりつつある。今春からは、監査法人が金融庁によって監視されるようになったからだ。金融庁は、4月に「公認会計士・監査委員会」を設置して、監査法人への監督を強化している。悪質なケースが見つかったときは監査法人や会計士への懲戒処分や業務改善命令を金融庁に勧告する権限を持つ。これまでは、大口問題先の甘い再建計画を盲目的に許容する志の低い監査法人が少なくなかったが、これからはそうはいくまい。
 問題先企業の「再建計画の妥当性」は厳格に判断されねばならない。それが、企業再生の出発点だからだ。経営不振企業を根本的な問題の先送りで安易に延命させることは、問題の解決をむしろ長引かせる。金融業界では、UFJと対峙した凄腕検査官が次にどこを担当するかに注目が集まっている。
 そういう観点でみれば、金融再生における患部の摘出手術はまだ完全に終わったわけではない。システミックリスクに対する懸念が和らぎ、銀行が体力を回復しつつある今こそ意を決して、膿を出し尽くすべき時だ。ペイオフ解禁が来春に迫っているという意味で、すでに金融改革はペナルティエリアの中にある。ペナルティエリアの中でのハンドは、ご法度にしてもらいたい。

(追伸) 本日深夜1:20よりテレビ朝日「朝まで生テレビ」に出演することになってしまいました。私のメディアポリシーに合っていないものですから、ずっとお断りをし続けていたのですが、司会役の宮崎哲弥氏には義理があるので、辞退し切れませんでした。
 もっとも、テーマが「イラク、北朝鮮」なので(何故、専門外の私が出演しなくちゃいけないんだろう?)、おそらく、ほとんど発言しないと思いますが、他のパネリストは魅力的ですから、お暇な方は見てやってください。
 それより、私にとって、最も重要なのは、明日の「@nifty BB Festa 2004」です。会場には午前10時までに着かなければいけません。「朝まで生テレビ」が終わるのが午前4時20分頃なので、睡眠時間は4時間くらいになるでしょうか。でも寝坊しないで、しっかり行きますので、皆さん、品川インターシティホールに是非来て下さい。お待ちしています。

2004 05 28 [07. 銀行はどこへ行く?] | 固定リンク

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