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2004.06.07

年金脱退権と公的年金改革私案

 皆さん、こんにちは。木村剛です。ついに与党が年金改革法案の強行採決をやってしまいました。「ミズタマのチチ」さんは「この怒りを、どうブツケレバいい?」と怒髪天をつく形相ですし、「きっしー」さんも「もうなんていっていいのやら…」と呆れ果てています。

 お怒りやお呆れはもっともです。でも、ここでキレてしまったら、むこうの思う壺。「ビリヤード&サッカー&ニュースコラム」さんは「『年金見直し運動』のムーブメントをおこそうじゃないか!」と提案していますが、そのとおりだと思います。民主党の岡田代表には、耐え難きを耐え、忍び難きを忍んで国民のために「三党合意」をホゴにせず、国会に年金一元化を検討するための場を作っていただきたいと念じています。そこに、生データを含んだすべての情報を吐き出させなければ、何も前進しませんから。本当にお願いします。「H-Yamaguchi.net」さんが指摘しているように、「年金に関する議論は続けていってもらいたい」んです。民主党の「ふじすえ健三 blog」さん、よろしくフォローして下さい。
 それにしても、現在の(そして改革後も)公的年金制度はヒドイ。FPとして年金の専門家でもある「本家ばんちゃん」さんは、ご自身の体験をもとにこう書いていらっしゃいます。

 私はFPなんですが第3号被保険者でもあります。扶養を外れて健康保険も自分で払う、となると、私のような零細自営業者にとってこれはすごくつらいものがあるんです。妻が扶養の範囲だと、家族手当の出るところだし・・・・サラリーマンのように毎月同じ日に払えって言われても、払うことができるかどうかわからず・・・・第1号の届出をしておいて、調子のよいときだけ、年金だけ払うってのもできないし・・・つまり、知らなくても払えないけど、払いたくても払えないんです、今の制度だと。さかのぼって保険料の未納分を払うことができないし、付加給付は第1号被保険者だけだし。散々未納議員やらジャーナリストを槍玉に挙げているけれども、こういう入り口の細かいところで、変に年金保険料を納める意欲を阻んでいると思います。

 専門家が「知らなくても払えないけど、払いたくても払えないんです、今の制度だと」という怒りをあらわしているわけで、現在の公的年金制度は問題だらけで、不信だらけです。「hommania+blog」さんが以下のように寄せてくれたトラックバックに吐露されている不信感を払拭しない限り、年金問題は解決しないと思います。

 はっきり言って、わたしは未納の時がある。義務だとかなんだとか言われたって、このへんてこな社会ルールに納得していない一人なのである。なにしろ、自分がいくら払って、いくらもらえるのかがハッキリしない。コレが嫌なのである。納得できないのだ。別に損をするのが嫌なんじゃなくて、あいまいなのが嫌! こうしてわたしの税金も無駄に使われているはず。と思うといたたまれない。今の職業が会社員のおかげで否応なしにも毎月毎月勝手に引き下ろされていく・・・。会社が同じ額を支払っているのも分かっているけど。でも、払いたくない。払いたくないんじゃ~。そこで、1日も早くもっと分かりやすいルールにするってことをしてください、政治家のみなさま。それに近い皆様。もうこの際、ダレが払っていなくてもいいじゃないですか! とにかく、この悪しき法律制度を変えていただきたいのです。

 全く同感です。「1日も早くもっと分かりやすいルールにする」ことが重要だと私も思います。私はこれまで、方法論としての「年金脱退権」を皆さまに提示しながらも、私が考える公的年金の究極の姿を敢えてお示ししてきませんでした。それは、「あるべき姿」というキレイゴトの比較を言い募って時間を浪費するよりも、公的年金が抱えている構造問題に対する国民の関心を高めることが先決であると考えていたからです。
 もっとも、国民の関心はかなり高まってきたようにも思いますし、未納問題のマスコミ報道を冷ややかに眺めながら、真の解決策を求める人々が増えてきたようにも感じます。そこで、私が考える公的年金のあるべき姿を以下にお示ししておきますが、極めてシンプルな枠組みで構築しています。

① 公的年金制度と生活扶助を同じ制度の中に包含し、65歳以上の国民であれば、基礎年金として例外なく夫婦で月15万円受け取れる制度とする。
② 基礎年金(月15万円)以上の部分については、各個人の私的年金に任せることとし、付加的な部分について国は一切関与しない。
③ 基礎年金の支出は一般会計から行うこととし、各種の税金および国債によってファイナンスする。ただし、基礎年金税の新設を排除しない。要するに、保険料はとらない・・・・。
④ 上記の結果、厚生年金、国民年金、共済年金、議員年金は一元化される。

 こうなれば、誰でも分かる公的年金制度(制度の実態としては、「公的年金」ではなく「生活扶助」になります)になるはずですし、弱者の方々に配慮したセーフティネットになるはずです。また、近年問題になってきた国民年金受給者と生活扶助者との格差問題も解決することができるようになります。
 しかし、ここで一番ネックになるのは、老後におけるより高い給付を信じて、これまで高い保険料を支払ってこられた方々への配慮です(特に厚生年金、あるいは国民年金を真面目に支払ってきた人)。それらの人々からすれば、多くの年金を受け取る権利が剥奪されたように感じるでしょうし、年金を支払ってこなかった人々に過度に甘すぎるという思いも抱くでしょう。

 そこで必要になるのが、「年金脱退権の行使」なのです。
 年金脱退権を行使した人には、これ以上の保険料支払いを要求しない代わりに、これまで支払った分に関する権利を放棄していただきます。ただし、新しい基礎年金に関しては受給資格が残りますので、65歳以上になれば夫婦で月15万円が受け取れます(厳密には「年金」ではなく「生活扶助」として)。脱退権を行使する人が増えれば増えるほど、公的年金の含み損は軽くなり、公的年金が抱える構造問題を解決しやすくなります。
 年金脱退権を行使しない人についてはどうするか。
 私は、一定の期限を設け(例えば、2010年末)、その時点まで真面目に保険料を満額支払い続けた人に関しては、それまで支払った保険料をベースに個々人の取り分を決定して、トータルで200兆円近い年金の積立金(中身は健全とは言い難いのですが…)をすべて取り崩すことによって、個々人に払い戻しすべきだと考えています。
 その際、「私は将来のために保険料を納めていたのであって、いま払い戻してもらっても困る」という方に対しては、民間の生命保険会社や信託会社などへの移管を進めます。必要であれば、一定限度の補助金を与えることも検討されてよいと思います。また、年金支給の一歩手前なので、支払った金額よりも受け取る金額の方が大幅に多い人々についても、一定の配慮が必要になるでしょう。それでも、「積立金を使えば年金制度は破綻しない」という主張をしている一部の識者もいますから、それが本当の真実なのであれば、積立金の取り崩しでほとんどが賄えるはずです(?!)。
 「積立金は十分ではない。厚生労働省が無駄遣いして、どうせなくなっているに違いない」と信じる人は年金脱退権を行使する代わりに、積立金取崩しの分配権はもらえなくなる。その一方、年金脱退権を行使しない人々は、保険料を払い続けることで積立金取崩しの分配権を手に入れ、民間年金への移管に際して一定の配慮をしてもらえますが、積立金の内容が公表資料以上に腐っていた場合には、その分ダメージを受ける。それが、私が主張している「年金脱退権」の基本的な枠組みなのです。
 中長期的には、フローの保険料収入がなくなりますから、基礎年金支出が一般会計にとって大きな負担になってきます。そこで、積立金を取り崩した後(例えば、2010年末以降)については、現行の国民年金程度の保険料にあたる金額を「基礎年金税」として、国民全員から「保険料」ではなく「税金」として徴収することを、私は一案として考えています。

 以前にも書きましたが、私は、保険方式から税方式へ転換しない限り、年金問題は根本的に解決しないと考えています。そのための確信犯的な戦略として、「年金脱退権」を唱えているとも申し上げてきました。年金制度に詳しい方は、私がここで唱えている公的年金の姿は、民主党の案もしくは経済同友会の提案に近いことに気付かれることと思います。期せずして、「ニッポン提言」さんの「公的年金の民営化」論とも近いところがあると思います。
 ただ、現時点において重要なのは、最終形の美しさではなく、どのようにして最終形に至る流れを作ることができるのか、という点なのです。4月27日のゴーログ「年金改革の国会討論は『目くそ鼻くそ』レベル」でも書きましたが、「結婚生活を語る前に、どうやったらデートできるか考えたら?」と言うことが政策論においては極めて重要なのです。理想論を語る前に、現実を動かすための方法論が必要なんです。
 その点で、「ゆきだるま Be―忘―LOG」さんが鋭く指摘しているように、自民党の安部幹事長が、「保険料を払っていない人は(その分)をもらえない。年金財政上も、その人には出さないからロスにはならない。報道の仕方がおかしい。犯罪、脱税ではない」と指摘したのは絶好のチャンスなのです。自民党の幹事長が「年金脱退=未納・未加入」は財政上ロスではないし、犯罪でもないという見解を出したのですから、その線で政策論争を進めるべきなのです。「『年金を納めなくても、問題ないじゃん』と与党幹部からお墨付きがでたわけで、木村さんの提言されている『公的年金脱退権』が実現する日も近いかも」と喝破した「ゆきだるま Be―忘―LOG」さん、あなたはスルドイ!
 ですから、民主党が自らの年金案を通したいのであれば、安部幹事長が公言したこの論理を逆手にとって、「年金脱退権」を唱えるべきだと指摘したのです。回り道のようにみえるかもしれませんが、そうすることによって民主党案を実現する政策環境は整えられていきます。民主党にはそういう読みができる政策の玄人はいないのでしょうか。政策顧問として、「ゆきだるま Be―忘―LOG」さんを雇ってみたらどうでしょう?

(追伸)公開討論会の開催に賛成していた河野太郎自民党議員と古川元久民主党議員のスケジュールが調整できました。「bonkora」さんが言う「著名な学者さんや、コラムニスト、大手マスコミの鼻を明かすような成果」というところまでは無理かもしれませんが、7月26日(月)に午後8時~10時の2時間開催いたします。詳細は後日お伝えしますが、激論の模様は、「Financial Japan ONLINE」において、すべてお流しする予定ですので、楽しみに待っていてください。
 さて、来週には、情報公開請求に対する厚生労働省の答えが分かるはずですが、どういう風に対応してくれるでしょうか。「法案が通ったら、無視しよう」ということになるかも・・・。皆さんの予想をいただければ、幸いです。

2004 06 07 [05. 年金問題を斬る] | 固定リンク

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