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2004.06.18
証券仲介業とIFAが株式市場を変える![コラム]
皆さん、こんにちは。木村剛です。毎週金曜日はコラムの日。私が竹中チーム入りした2002年10月3日には日経平均株価の終値が8936円と9000円を割り込みまして、「竹中ショック」(9500円割れ)に続く、「木村ショック」などと揶揄されましたが、最近の株価はその頃と比べて3割程度も上回るところまで回復してきました。そういうこともあってか、株式投資に興味を持つ方々も増えてきているようです。
そこで今日のコラムでは、この4月から実施されたわが国の『証券市場改革』にスポットを当ててみたいと思います。その改革とは、「証券仲介業」と呼ばれる制度を導入したこと。これまで証券会社だけに限られてきた株式取引の窓口を、スーパーやコンビニ、不動産業者など異業種に大々的に開放することによって、個人投資家のすそ野を拡げる。そして、個人投資家が主役となる証券市場を確立することを目指しています。じつはこの改革、預金に偏在したわが国の個人金融資産の構成を根本的に変える可能性を秘めているようにも思えます。
この4月から証券仲介業制度が、わが国の証券市場を活性化させる対策の一環としてスタートした。ともすれば、銀行vs証券などという業界の縄張り争いに終始しがちなこの種の議論が、「個人投資家の利便性を高めるためにはこうした制度を入れるべきだ」という正論をベースに進んできたことは評価してよい(逆に言えば、これまでの金融改革と呼ばれるものが、如何に利用者不在の議論で進められてきたか、ということの証左でもあるのだが……)。
銀行などが国債や投資信託を限定的に取り扱ってきた事例を別にすれば、これまで株式を中心とするフルラインの証券サービスは、300社に満たない証券会社が独占してきた。しかし、証券仲介業の導入を契機に、証券サービスが提供される拠点や窓口は質量ともに飛躍的に拡充されるだろう。そういう意味で、今回の制度改正の意義は極めて大きい。
進む異業種からの証券仲介業務への参入
この5月29日に、総合スーパー最大手のイオンが系列のカード会社イオンクレジットサービスとともに、証券仲介業に参入する方針を明らかにした。証券仲介業制度を梃子にして、証券会社も異業種とのアライアンスを進めている。
日興コーディアル証券は、すでに昨年9月にローソンとの間で、店舗を使った証券仲介業ビジネス推進に関する提携を発表しており、3月には不動産会社ケン・コーポレーションの子会社ケン不動産投資顧問と証券仲介業制度を活用した総合コンサルティングに関する業務提携も打ち出している。
松井証券は、昨年9月に保険通販専業最大手であるアドバンスクリエイトとの間で、証券仲介業における両社の経営資源を活用した制度運用の可能性につき共同研究を進めることを公表している。また、仲介業ではないが、りそな銀行が窓口で松井証券への口座開設を進めるというコラボレーションも現実のものとなった。
インターネット専業のDLJディレクトSFG証券においても、親会社の楽天が証券仲介業者となり、今年8月にも楽天が運営するポータルサイトを通じて証券を売買できるようにするという。さらに、イー・トレード証券も、2月にマーケティング事業を手がけるネクシィーズと証券仲介を委託する業務提携を結ぶことを発表した。イー・トレード証券は、今後提携する証券仲介業者に対して営業活動がスムーズに開始できるよう「イー・トレード塾(仮称)」と題した実践的かつ総合的な証券外務員研修を行い、コンプライアンスを含めた専門的な情報を補充していく予定ときく。
このように制度導入を受けて証券会社と異業種の提携が活発化している半面、個人投資家の間で、「証券仲介業制度」という言葉はいまだに馴染みが薄い。日経金融新聞が3月1日に実施したアンケート調査では、「証券仲介業」を知っているかという質問に対して、「名前を聞いたことがあるが、内容はよく知らない」(36.7%)、「知らなかった」(36.2%)が合わせて全体の7割を超えている。
しかし、その一方で、どのような人や店、場所が証券仲介業になれば利用してもいいかという質問に対しては、「ファイナンシャル・プランナー」、「コンビニエンスストア」、「税理士・会計士」が上位を占め、個人投資家は証券仲介業制度に専門性や親近性を求めている姿が浮き彫りになっている。これは、今までの証券会社によって行なわれてきた証券サービスというものが「必ずしも信頼できるものではなかった」ということの裏返しととらえることもできる。
しかし、前出した業務提携のケースなどに鑑みると、この証券仲介業の制度を逆手にとって、既存の証券会社に付着している悪いイメージを払しょくし、証券サービスに対する親しみやすさを増す絶好のチャンスに活かすことができることに気付く。つまり、証券会社が証券仲介業者をうまく組織化することができれば、伝統的な証券会社に対するイメージを変革することができるのだ。
これは、個人投資家のマインドセットに関する大きな変革をもたらすことになるかもしれない。魅力的な証券仲介業者は、証券会社にとって、いわばキレイな包装紙の役割を果たす可能性がある。
資産運用の「ホームドクター」としてのIFA
しかし、如何に包装紙がキレイになったところで、中身が腐ったままで変わらないのでは一過性のフィーバーに終わってしまうだろう(犠牲者を増やすだけかもしれない)。だとすれば、勝負は証券サービスの内容ということになる。その際のポイントは、証券仲介業者が証券会社の味方なのか、それとも個人投資家の味方なのか、という点に尽きてくる。
そこで最近、独立系のファイナンシャル・アドバイザーである「IFA(Independent Financial Adviser)」という存在の重要性が認識されつつある。「IFA」の定義を一般的に言えば、独立・中立の立場で、長期的・継続的に顧客の資産形成をサポートするファイナンシャル・アドバイザーのことを指す。個人投資家サイドに立って、資産運用に関するコンサルティングを行うプロの助言者ということだ。立派なIFAが証券仲介業者として機能するようになれば、キレイな包装紙はしっかりと中身を伴うことになるだろう。
金融庁は、2002年8月に「証券市場の改革促進プログラム」を公表し、「預貯金中心の貯蓄優遇から株式・投信など投資優遇への金融のあり方の転換」を目指して、「投資しやすい市場の整備」、「投資家の信頼が得られる市場の整備」、「効率的で競争力のある市場の構築」という3本柱の証券市場改革を進めている。このような動き自体は好ましいものではあるが、そもそも金融や証券というものは、一般の個人にとって極めて分かりにくい。
金融広報中央委員会の「金融に関する消費者アンケート調査」でも、実に7割の個人が「株式・債券等の証券投資」について「ほとんど知識がないと思う」と回答している。要するに、個人投資家に「証券市場にアクセスしろ」と言っても、分からないことが多すぎるということだ。ただし、個人投資家が証券投資に消極的かというと、そうでもない。大手広告代理店の電通が行った「個人投資家の投資性向及び情報性向についての調査」では、個人投資家の7割以上が株式を「買い増したい」、「銘柄を入れ替えたい」と考えており、実は証券市場に興味を持っているようだ。
デフレ懸念が薄らぎ、個人の金融資産が預貯金から投資商品に移行しつつある過渡期において、個人投資家が必要としているのは、自分のことを親身になって考えてくれて、おカネに関するすべてを相談できるファイナンシャル・アドバイザーの存在である。しかしながら、実態はどうかというと、現在のFP資格をベースとするファイナンシャル・アドバイザーは基本的に運用商品を提供する金融機関のお抱えとなり、金融機関の営業戦略や商品ラインアップに縛られてしまっている場合が多い。
誤解を恐れずに申し上げれば、これらのファイナンシャル・アドバイザーは、個人投資家の側に立った金融商品の「購入サポート」ではなく、金融機関の側に立った「販売サポート」を行う立場にあるということだ。事実、大手広告代理店の電通の調査でも、投資先選択時に重視する点について65.9%、3人に1人の投資家が「外交員からの推奨」を「重視していない」と答えている。こうした流れの中で注目されるのが、資産運用の「ホームドクター」としてのIFAの存在——本当に個人のためにアドバイスしてくれる人々の登場だ。いまだに「株は危ないから手を出さない」という個人投資家は少なくない。わが国では「株をやる」という表現を使うが、これではまるでドラッグに手を出すかのような言われ様だ。
個人投資家は一人一人リスク許容度が異なるし、ポートフォリオの中身も異なるので、常に正しい命題として「株式投資が危ない」というわけではない。しかし、個人投資家の立場で、そういうことに対する理解を深める手助けを行うホームドクターとしてのファイナンシャル・アドバイザーが少なかったことも事実である。
顧客本位徹底へ独立性や職業倫理が不可欠
そのような環境に鑑みれば、金融機関サイドに立っていない、独立・中立のアドバイザーの存在が重要になってくる。IFAのIはIndependent(独立した)のIだが、そういう意味では、Individual(個人のための)のIとも置き換えることができるのではないか。
顧客本位を徹底するIFAが重要とされる背景には、供給者側の論理(金融商品を売る立場)から需要者側の論理(金融商品を買う立場)へと向かう時代の潮流がある。IFAが個人投資家と証券市場の橋渡し役を担う以上、金融機関からの独立性はもとより、一般法令順守や職業倫理に関する高度な意識が不可欠であることは論を待たない。IFAが「絶対にもうかります」といった断定的な判断を提供するなど、不当な勧誘行為によって法令違反を犯せば証券業界全体の信認を損なうことにつながりかねないだろう。
そのためには、証券仲介業の一翼を担うIFAのステータスを守るための仕組みが必要になる。このような観点から、中立・公正な立場でファイナンシャル・アドバイザーの独立性を認証し、定期的にモニタリングする機関として、この4月に「日本IFA認証機構」が設立された。日本IFA認証機構は、IFAに関して、推奨商品、財務内容、営業基盤、金融知識の面から独立性をチェックすると機能を果たし、IFAに「お墨付き」を与えることになる。同時に、IFA相互の交流のためのコミュニティをサポートするとともに、IFAの自己研鑽についても支援していく方針を掲げている。
先述したとおり、「IFAによる証券仲介業」は今後わが国の証券業において、キレイな包装紙——無論、ホームドクターとしての実質を伴う点が重要なのだが——という役割を果たす尖兵となっていく可能性が高い。だからこそ、この「IFAの認証」については、個人投資家の立場から厳しい運用が求められるだろう。その一方で、「IFAの認証」に関するニーズは静かに増えていくに違いない。
日本IFA認証機構は、1ヵ月後の7月18日に第1回の認証試験を行うという。認証試験の結果、お墨付きをもらったIFAは、個人投資家の資産運用を助けるプロフェッショナルとして公に認知されることとなり、この秋にも活躍し始めるだろう。その実績が認められれば、IFAのステータスも次第に向上していくことになる。
個人投資家のホームドクターであるIFAの層が広がりをみせれば、個人投資家サイドに立った中立的で親身な資産運用アドバイスが普及していく。そうなれば、個人投資家の裾野はさらに大きく広がっていくだろう。それに伴ない、わが国の株式市場も厚みを増していくはずだ。魅力的な証券仲介業者の登場とIFAの増大は、車の両輪のように機能して、わが国の金融市場を大幅に変貌させる可能性を秘めている。
だから、これから証券ビジネスは面白くなる。
個々人の立場からしても、IFAとして独立する道が誰にでも開かれるようになるのだから、人生の選択肢が増えることになる。証券ビジネスに関わりを持つ人々は、投資アドバイス会社の社長になるチャンスに接していることになるわけだ。
そういう風に考えると、証券仲介業のことを勉強し、IFAの資格を取っておくことは悪くない。わが国の証券市場を健全に発展させるためにも、個人投資家のために投資アドバイスを実施していると自負している方々には、IFAの認証試験にトライしてみたら如何だろう。何でもそうだが、世の中はFirst come, First saved(早い者勝ち)だ。時代の変化が激しいときには、なおさらそうである。
2004 06 18 [04. 経済政策を語ろう!] | 固定リンク
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