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2004.07.09
「4トラ」とは何か?:アクティブシニアの動きに注視せよ [コラム]
皆さん、こんにちは。木村剛です。明後日7月11日(日)の「報道2001」(朝7時30分スタート)に出演することとなりました。テーマは、「近鉄・オリックス合併問題」だそうで、私は「プロ野球と企業経営」という角度からコメントをすることになりそうです。ライブドアの堀江社長やスポーツジャーナリストの二宮清純氏も出演します。朝が強くてお暇な人はどうぞご覧ください。
さて今日は、毎週金曜日のコラムです。4月23日のコラム「団塊パワーは景気の牽引役となるか」において私は、日本経済の今後の動きを占ううえで、「団塊の世代」の購買力をウォッチする必要があることを指摘しましたが、景気の回復が明確になりつつあるなかで、日本企業がこの層の顧客開拓に力を入れる傾向が益々強くなってきているようです。今日は、「アクティブシニア」と呼ばれる、中高年層の消費マーケットについて、改めて考えてみたいと思います。
最近、業界の一部で「4トラ」という聞きなれない単語が使われ始めているらしい。検索エンジンでチェックしても引っかからないこの言葉、今後の「団塊世代」の消費動向を見る際のキーワードとされている。「4トラ」は、トラベル、ドライブ、ドラマ、トライの頭二文字をピックアップしたものというが、これら「4トラ」市場は、時間と金銭に余裕のある年配者をターゲットとしたものだ。
健康で活発な「アクティブシニア」層
財務省の財務総合政策研究所は昨年11月から「団塊世代の退職と日本経済に関する研究会」を開催している。この研究会は、2010年頃に60歳を超える「団塊世代」の大量の定年退職による影響、労働市場や企業経営、オフィス需要、貯蓄・消費の変化、金融資本市場への影響、ひいては日本のマクロ経済への影響や財政、税収等への影響などを幅広く研究し、対応策やわが国の経済社会のあり方について議論してきた。
その第5回研究会で、研究会メンバーの一人である関沢英彦氏(博報堂生活総合研究所所長・東京経済大学コミュニケーション学部教授)が、「団塊世代の引退と消費市場」と題した報告を行っている。この報告では、次のようなポイントが指摘されている(抜粋)。
・消費に関する中高年市場として、ライフとしての市場(生理的加齢)、ライフスタイルとしての市場(嗜好的加齢)、ライフステージとしての市場(社会的加齢:定年退職による消費態度の変化など)があり、特に、団塊世代の引退市場としては、ライフステージの変化(時間的余裕ができる)ことが大きい。
・60代では、時間的余裕度は、男性では大きく上昇するが、女性では余り変わらない。経済的余裕度は、男性ではそれほど変わらないが、女性では上昇。金銭と時間の組合わせでは「時間・経済的ゆとりがある」タイプが多いが、「金はないが時間はある」タイプも多い。
・働き盛りが多いと耐久消費財が売れるが、高齢者が多いと、旅行のような時間消費型消費が多くなる。団塊世代で今後消費増が期待される分野は、男性の場合、国内旅行、自動車、海外旅行、住宅改装、習い事。女性の場合、国内旅行、住宅改装、習い事、海外旅行、自動車。
・旅行需要は高く、在宅時間が増えるためリフォーム需要が発生。カルチャーセンターも、最近は男性も多い。「4トラ」(トラベル、ドライブ、ドラマ、トライ)が、年配者として時間のある人たちの市場。
・彼らを消費に導く大きな力は「友人」「人間関係」。孤立した退職者は消費に向かわない。「お仲間」の存在は消費市場には重要。人間関係の充実したグループは好奇心が強く、消費意欲も高い。
・団塊世代は「サブカルチャーの世代」と言われる。ビートルズやテレビに親しんできた第一期の世代で前の世代とは異なる。楽器演奏、カメラなど、昔のサブカルチャーが復活する。
(以下省略)
これらの指摘がすべて当てはまるかどうかは定かでないが、団塊の世代のなかに、健康的で様々な活動に積極的な「アクティブシニア」と呼ばれる人々は確かに存在しよう。アクティブシニアという捉え方自体は数年前から存在するが、「時間・経済的ゆとりがある」タイプが多いとされるこの層が、各企業にとって中期的な消費市場を俯瞰する中で、重要なターゲットとなる可能性は高い。国内・海外を含め旅行需要が高い(トラベル)のみならず、団塊世代以上は思春期の時期にマイカーブームを体験しており、自動車には深い思い入れがあるらしい(ドライブ)。追憶旅行などの再体験や、昔できなかった冒険などにも意欲があり、また恋愛市場も友人関係を含め大きいとされる(ドラマ)。さらに、習い事はもとより財産運用にリスクがあるものに挑戦しようという意識が増えていること(トライ)なども指摘されている。
アクティブシニア市場を狙う企業
確かにそういう視点で、最近の企業の動きを見てみると、「4トラ」がキーワードとして、この市場に当てはまるのではないかという感じもする。
少し遠出をすると年配の方の旅行団体によく出会う。このような背景には、旅行代理店のJTBやHISが50歳以上にわざわざ対象年齢を絞ったパッケージツアーを大々的に販売していることが背景にあるのかもしれない。同様に、観光地サイドもアクティブシニアを狙っている。例えばミサワリゾートは、健康に重点を置いた会員制リゾートクラブをオープンし、直営のホテルや旅館などでは、人間ドックやマッサージなどが無料で受けられるというサービスを展開している。
30代を中心とするビジネスマンをターゲットにしてきた語学に関するサービスを提供しているベルリッツも、50歳の女性を中心としたアクティブシニア向け英会話プログラム「大人の英会話」を4月より開設した。同社によると、50歳女性層は、年代別推定市場規模がもっとも大きいうえ、英語・コミュニケーションに対する関心が高く、海外旅行や映画・音楽、芸術などに対する興味を持っているからだとしており、これは「4トラ」でいえば「トライ」を狙っている典型例だ。
また、中高年層が最近、大学での公開講座に積極的に参加したり、退職後に大学に入り直したなどという話をよく聞くのも、アクティブシニア層の「トライ」したいという気持ちの現われなのかもしれない。実際、私自身、ニフティの主催でブログを紹介するためのトークライブに出演したら、50~60代の方がメインだったのでたまげた思いをした記憶もある。
ちなみに、服飾品販売のユナイテッド・アロースも、今春より、45歳から60歳前後の大人に向けた「ダージリンデイズ」という新しい店舗を展開する。新店舗のコンゼプトは、「ゆたかな大人」。時間をかけて成熟し、ライフスタイルのひとつまで浸透した「紅茶」のように、人生のゆたかな時間を楽しむための「服」を提供するということらしい。
シニアアクティブの消費はGDPを支えるか
トラベル・ドライブ・ドラマ・トライの「4トラ」が今後のカギになるか否かという点については、いずれ歴史が証明することであるが、日本企業が競い合って、この年代向けの商品やサービスを次々と試していることは事実だ。そこには、顕在化しつつある需要が存在する可能性が高い。
「団塊世代の退職と日本経済に関する研究会」は、6月29日に最終的な報告書を公表した。この報告書は、現行の定年制を維持した場合、労働人口の減少などで、GDPが2010年度に16兆円減ると試算する一方、団塊世代の旺盛な消費意欲などは経済に好影響を与えると指摘している。「4トラ」がキーワードになるかはさておき、団塊世代の消費意欲が今後益々旺盛になっていく可能性は決して低くないし、今後の消費を支える中核層として捉えるべきは、これまで消費の傾向を主導するとみられてきた若年女性ではなく、アクティブシニアなのかもしれない。
2004 07 09 [04. 経済政策を語ろう!] | 固定リンク
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