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2004.07.23

自動車リサイクルと資源セキュリティ [コラム]

 皆さん、こんにちは。木村剛です。毎週金曜日は恒例のコラムの日です。来年1月1日からの「自動車リサイクル法」の施行を展望して、ここ数ヶ月、自動車リサイクルに関する新聞報道が目につくようになりました。自動車メーカー各社も、自動車リサイクル法に関する取り組みを明らかにしはじめています。今日のコラムでは、この自動車リサイクルについて考えてみたいと思います。

 < 経済産業省「自動車リサイクル法に基づくリサイクル料金の具体的な金額について」 >

 7月12日、経済産業省は「自動車リサイクル法に基づくリサイクル料金の具体的な金額について」と題するニュースリリースを発表した。来年1月1日から施行される「自動車リサイクル法」においては、「シュレッダーダスト(使用済自動車の解体・破砕後に残る廃棄物)」、「エアバッグ類」、「フロン類」の3品目を自動車メーカー・輸入業者が引き取ってリサイクルすることとなっている。これら3品目のリサイクルに必要な費用は、自動車メーカー・輸入業者がリサイクル料金として設定・公表し、消費者が原則として新車購入時に負担することになる。
 リサイクル料金の具体的な金額については、各自動車メーカー・輸入業者から今後順次公表されていくが、経済産業省が事務を司る産業構造審議会・中央環境審議会自動車リサイクル合同会議は、国内自動車メーカー各社からリサイクル料金の水準についてヒアリングを行い、ヒアリング結果をまとめた上でリサイクル料金の水準を公表した。

リサイクル料金は7千円から1万8千円程度

 このリリースによれば、上記3品目のリサイクル料金の合計額は、軽・小型乗用車で7千円~1万6千円程度、普通乗用車で1万円~1万8千円程度になるという。このリリースが発表された翌13日に、実際に日産自動車はこれら3品目のリサイクル料金を発表したが、これら3品目のリサイクル料金は、マーチやキューブなどの軽自動車で9,780円~11,330円、小型自動車のブルーバードシルフィで11,040円~11,380円、普通車(排気量2000cc以上)のセドリックで13,460円~14,020円に設定されている。
このリサイクル料金の水準が安いか高いかと議論はさておくとして、2002年に自動車リサイクル法が成立した当初、ユーザー負担は2万円ぐらいになるといわれていたことを考えれば、リサイクル料金は当初見込まれていたよりも、若干安めに設定されつつようである。

自動車リサイクル法って何だ?

 自動車リサイクル法の正式名称は「使用済自動車の再資源化等に関する法律」。従来、使用済自動車は、解体業者や破砕業者が売買を通じて市場に流通し、リサイクル処理が行われてきた。しかし、自動車リサイクル法が成立した2002年当時、シュレッダースクラップの売値は1トン1万円程度である一方、シュレッダーダストの処理単価は1トン2万4千円程度。処理費用が圧倒的に高いため、自動車ディーラーや中古車専門業者などは解体業者に処理費用を払って使用済自動車に引き渡さなければならないという、リサイクルシステムの機能不全を惹き起こしていたばかりか、不法投棄・不適正処理の懸念も強まる状況にあった。
 このような事情が、自動車リサイクル法制定の背景にある。社団法人日本自動車工業会によれば、2003年の推定廃車台数は560万台に上る。廃車は、整備業者、解体業者、破砕業者といったリサイクル網を流れ、エンジンや鉄などは再利用されている。全体のリサイクル率は75~80%に達するが、ウレタンや繊維が混ざったシュレッダーダストとエアバッグ類、フロン類の3品目は再資源化が困難なうえ、埋め立て処理場の容量も不足している。このような現状を考慮して、この法律は自動車製造業者を中心とした関係者に適切な役割分担を義務づけ、使用済自動車の適正なリサイクル処理制度を構築することを目指すものといえる。

1000億円規模のリサイクル市場参入をねらう?

 リサイクル法の制定を受けて、自動車メーカー各社は自動車リサイクル法に対処する専門部署を設置し、リサイクル対策に乗り出している。例えばトヨタ自動車は、愛知県半田市に設置した「自動車リサイクル研究所」において廃車の解体技術の開発を進め、シュレッダーダストの発生量抑制に関する技術を整備業者に公開し、効率的なシュレッダーダスト処理を促進している。
 またホンダは、廃車の引き取り窓口になる販売店などに自動車リサイクル法施行後の仕組みを周知徹底することが不可欠という判断から、同法対策の専門部署を設置し、販売店向けに廃車の情報を管理する電子システムの取り扱い方法などの教育を開始している。
 しかし自動車リサイクル法の制定は、一見、廃車処理に直接関連のない企業のリサイクル市場参入を促している。前述の通り、年間の廃車台数は年間560万台に上り、1台当たりのリサイクル費用がざっと1万円~1万8千円となることを前提とすれば、自動車リサイクル事業は、じつは「1000億円近いビジネス」になるともいわれている。事実、このビジネスに、すでにリサイクル技術を持つ大手の鉄鋼・非鉄業者や商社が参入しはじめている。
 三菱マテリアルは、7月から香川県の直島製錬所において、自動車シュレッダーダストに関する最新鋭リサイクル設備を稼動させる。全国からシュレッダーダストを有料で引き取って、そのなかから銅や金を取り出し残りは燃料に使うという。同社は、「シュレッダーダストに含まれる銅の割合は鉱山より高いため、処理費用をもらって原料を調達するようなもの」という。また新日本製鐵も、来秋を目途に、約50億円を投じて名古屋製鉄所にシュレッダーダストの再資源化施設を新設し、高炉の技術を使ってシュレッダーダストを高温で溶かして含まれる鉄を回収するとともに、残りは道路の舗装材などに再資源化する方針だ。
 さらに、鉄スクラップや中古部品の流通などリサイクル関連業界との結びつきも強く、ネットワークを持つ大手商社も、このマーケットへの参入を図っている。三井物産は、日産自動車などから、シュレッダーダスト処理の管理業務を受託し、破砕業者等との情報連絡やリサイクル料金の管理を受け持つほか、住友金属工業グループと提携し自らシュレッダーダスト処理業務にも乗り出すとのことだ。

資源のない国におけるリサイクルのあり方

 ただし、マスコミの論調は、自動車リサイクル法がリサイクル市場の拡大に一役買ったといわんばかりで、ビジネスの面にスポットを当てすぎている嫌いもある。もっと冷静に考えれば、日本は、今や自動車に限らずリサイクルおよび廃棄物の再資源化を真剣に考える時期に来ていると考えられるのではないか。
 そもそも、日本は資源に乏しい国だからだ。
 例えば日本は、エネルギー供給の49.2%を石油に依存している。そして、その石油の輸入依存度は99.7%に達する。石炭やガスそして原子力など他のエネルギー供給源をあわせて考えても、エネルギーの輸入依存度は80.0%だ。ちなみに、この数値は、アメリカでは25.0%、フランスでは49.8%、ドイツでは61.9%である。イギリスやカナダは自国にエネルギー源を大量に保有しているため、エネルギー輸出国になっている。これらの数字を見ると、日本の状況が如何に異常かが理解できるだろう。実際、われわれは昨年の夏、電力不足の危機を体験した。原子力発電所が止まっただけで節電に走り回ったのではなかったか。
 こう考えると、日本にとってリサイクルは、ある意味での資源セキュリティという観点から眺めてみる必要があるのかもしれない。これからも、リサイクル料金を巡って「高い」「安い」という議論が何度も繰り返されるだろう。とはいえ、日本が資源に乏しい国であり続ける限り、リサイクルやリユースを真剣に考えなければならない。短絡的な損得勘定ではなく、日本にとってなぜリサイクルが重要なのかという論点を踏まえた議論が必要であるように思う。

2004 07 23 [06. リスク管理の勘所] | 固定リンク

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