« 「悩める母親党」が投げかけたコト:政策論とポジティブ・コミュニケーション | トップページ | ナベツネは独占禁止法より強し!? »
2004.07.28
改革を成就するモノは何か?:ケーキとネギの関係
皆さん、こんにちは。木村剛です。少なからぬ人々による善意のご支援によって、「公的年金タスクフォース」は少しずつではありますが前進しております。出てこないと思われていたデータやプログラムが紙で出てくる、門前払いかと思われていた厚生労働省が定期ミーティングに応じてくれる、不可能かと考えられていたCD‐ROMでの受領が可能になるかもしれない、たった一部のブロガーのボランティアだったのにマスコミや永田町を巻き込む動きになりつつある、など目に見えて効果もでてきました。
6月21日に「McDMaster」さんが「公的年金タスクフォース」の立ち上げを提案してくれたとき、私は非常に嬉しく感じたと同時に、大きな心配事を抱えるようになりました。というのは、私のコレまでの経験から申し上げると、善意によって立ち上げられた改革が、悪意と中傷にまみれて惨憺たる結果に終わるケースを幾度もみてきたからです。現実を直視すれば、「善意さえあれば改革が進む」という考え方は戯言であって、そういうケースは極めてマレです。
現実の制度や慣行は何らかの存在意義を持っているわけで、そこには既存の制度や慣行に恩恵を受けている人々が必ず存在します。社会的にみた「善意」も、彼らからすれば、たちの悪い「悪意」にしかすぎませんし、そこには必ず熾烈な「戦い」が生じます。「善意」が「戦い」を生む――というパラドキシカルな現実を直視し、次々と発生するハプニングに耐えて、初期の目的を追求しつづけない限り、現実を改革することは出来ません。
思うように改革が進まない。 何故こんなことが受け入れられないのか。 始めの計画と違うじゃないか。 もっとうまくやれよ。 何でこの程度のことが出来ないの。
改革の実態は、こういうグチと悩みの集合体です。いわば「矛盾の塊」なんです。そして、「善意」の塊の方々が改革の現場に立ち会ったとき、こういう「矛盾の塊」に触れると、自らが描いている理想像とのギャップに耐え切れなくなり、改革の仲間たちを批判し始めることが往々にしてあるのです。現実問題として、識者の方々が「改革」を成し遂げられないのは、このためです。「どのようにして、改革を成し遂げるべきか」という観点を忘れて、「俺の方が頭がいい=俺の案が最高だ」という神学論争に没頭しまうのです。
ブロガーたちの善意で生まれた「公的年金タスクフォース」がそういう失敗の轍を踏むことだけは避けさせたいと私は思っています。「改革の現場」に足を踏み入れたことのない純粋な若人たちだからこそ、必要以上に配慮が必要になるのではないかと感じていました。そこで私は、7月2日、老婆心ながら「公的資金タスクフォース」のメンバーに、以下のEメールをお送りしています(今後の戦略上、一部捨象しています)。
公的年金タスクフォースのメンバーの方々へのお願い 1)私がもっとも配慮したいことは、公的年金タスクフォースに参加された方が過度な負担を感じたり、不愉快な思いをしないようにする、ということです。このタスクフォースはあくまでも有志のボランティアによるものですので、規律や義務を強調することになりますと、折角好意で参加されたのに、嫌な思いをされることになりかねません。私としては、そういうことだけは避けたいと考えています。 2)「改革」という言葉は耳に心地よく響きますが、内実はそれほど格好いいものではありませんし、相当の我慢や忍耐や持続力が必要とされる長い作業が待っています。「ちょっと頑張ればすぐになんとかなる」とういうことは絶対にありません。したがって、有志のボランティアで運営する以上、各人に過大な負荷を掛けることは避けるべきだと思います。というのは、相当の負荷を掛けて何らかの前進を成し遂げても、それに見合う成果が得られるとは限らず、「こんなにやらされたのに・・・」という気持ちが出てくると、折角の善意が恨みつらみなどに変質しがちで、内部対立すら生まれる場合があるからです。 3)したがって、公的年金改革に関して私がしようとしていることは、インスタントに出来栄えを楽しめるというものでないことをあらかじめご理解いただく必要があります。私たちと相対するのは公権力であり、一筋縄でいく相手ではありません。時には戦略上、猛然と戦うこともあれば、柔和にお話し合いをすることもあり、一見理想形から遠ざかるようにみえる戦術を採ることさえありえます。長く複雑な戦いが待っているわけで、私がタスクフォースにお願いしたいのは、無理をしないで出来る範囲で、息長くサポートしていただけるとありがたい、ということにつきます。 4)短期的に素晴らしい成果を求めると必ず失敗します。私や皆さんが少し動いただけで、年金改革が実現するのであれば、とっくの昔に公的年金はもっとよい制度になっています。私や皆さんができることは、公的年金制度を改革する機運を盛り上げる切っ掛けになり得るという程度のことに過ぎない公算が大きい。それでも私はやる意義があると思いますが、捨て石になる可能性の方が高いという認識ぐらいは持っていただきたいと思うのです。・・・・・・
さらに、このEメールを送付した上で私は、7月3日のプレキックオフミーティングに集まってくれた「公的年金タスクフォース」のメンバーに、以下のお願いをしています。
1)このプロジェクトは主従関係のあるビジネスではないのだから、如何なるかたちであれ、仲間に対して自分の考えを押し付けないこと。どう転んでも、無駄な作業はたくさん発生するのだから、「それは無駄だ」などと指摘して、仲間の善意を挫くようなことをしないこと。 2)善意でサポートしたいと考える人々からの提案や助力については、それが如何に自分たちの進む方向と異なっていようとも、リスペクトして感謝の気持ちを忘れないこと。まかり間違っても「それは違う」などと言って拒絶しないこと。 3)結果的に目標の1kmに達しなくとも、1cm動かして僅かでも目標に近づいたならば、それは立派な前進なのだから、「1kmに達しない」ことを以って失敗とみなさないこと。周りでみている人たちは、「1kmと言いながら、1cmしか進まなかったじゃないか」と批判し、ときには誹謗中傷するだろうが、それは避けられないこととして甘受すること。
そのときの模様を「『改革』って言葉はsounds niceだけど、決して生半可なことじゃないんだぜ? どんだけ時間掛けて精一杯やったって、1cmも進まないかも知れないんだぜ? そのことをバカにしたり、弱点を突いて崩壊させようと目論んだりするやつが沢山いるんだぜ? そういう心構えが必要なんだぜ? 決して気負ったりしないで、楽しくやって欲しいぜ?」とレポートしてくれた「珠丸」さんが、「公的年金タスクフォース」における改革のやり方をうまくまとめてくれています。
今回の取り組みは「ビジネス」ではない。ガントチャート引いてコストシミュレーションして、最短の距離を突っ走らなければならない理由はない。「目的」に向かう「手段」に方式や方針を持ち込んで縛りを入れる理由はない。メンバーはお互いのどんな意見や主張であっても、そのことをお互いにリスペクトしあう。どんなに遠回りで非効率で意味のない作業でもそれでいい。そんな作業をこそリスペクト。そこから何かが生まれるかも知れない。「ケーキを作ろうとしているのに、ネギを持ってきてしまう。」なんてうまい表現されてた方がいらっしゃいました。私はネギばかり持ち込んでしまいそうですが、ネギを使ったケーキも案外おいしいかも知れません。今までになかった斬新なケーキが作れそうです。(笑) 自分なりに、自分のペースで、これからもこの取り組みに関わっていきたいと思います。
ケーキを作っているときに、善意でネギを持ってきた人がいたとします。そのときに、「俺たちはケーキを作ってんだよ! ボケ!」と突き放すようでは改革は成就しません。改革を成就させるためには、「なるほど、ケーキにネギですか。そういうやり方もあるんですね。ありがとうございます」と心から感謝して、何とかネギを効果的に使えないか、と模索しながら突き進む度量の広さと胆力と行動力が必要です。
私は、「公的年金タスクフォース」に参加しているメンバーが「1cmの改革」を成就したとき、きっと度量の広さと胆力と行動力を身に付けていることに違いないと確信しています。
2004 07 28 [05. 年金問題を斬る] | 固定リンク
トラックバック
この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/15160/1042348
この記事へのトラックバック一覧です: 改革を成就するモノは何か?:ケーキとネギの関係:
» ゴーちゃんのおすすめサイト by木村剛さん [面白いサイトを見つけたよ。 から]
■URL http://www.nenkin-tf.info/ ひと言どうぞ!: 「誰でも使える年金シミュレーションモデル」の作成をめざし公的年金タスクフォース... 続きを読む
受信 2004/07/28 9:04:18
» [Project][Pension]改革を成就するモノは何か?:ケーキとネギの関係(週間!木村剛) [いのっち日記 から]
私が過去に携わってきたプロジェクトの中で、数百人規模のビックプロジェクトがありました。当時の私は一プログラマーとして当該プロジェクトに参画したのですが、この程度... 続きを読む
受信 2004/07/28 11:29:21
» 木村剛、ショッカーの正義に悩む。 [独善概論(dokuzen-gairon) から]
さて、敬愛すべき男《木村剛》のblogゴーログ等で『公的年金タスクフォース』を共 続きを読む
受信 2004/07/28 11:29:42
» 7/28のキムタケさん [十萌航路 から]
木村剛さんのブログ、今日はケーキとネギのお話です。
昨日のポジティブ・コミュニケーションの話といい、なんか改革の進め方のお話です。
その中でも珠丸さんのお話... 続きを読む
受信 2004/07/28 12:11:32
» 責任感の強さと無行動は表裏一体 [Tinkle-Tinkle から]
議論に終始し威嚇し罵り合い、その場の勝敗に固執し何の結果も生まない行為は、結局サルのけんかと変わりませんよね。 私たちは人間であり、考える頭と行動する足と物... 続きを読む
受信 2004/07/28 12:23:54
» 神学論争:おおもとの議論と枝葉の論争 [笑わせんなヴォケが! から]
@niftyのココログをにぎわしている「週刊!木村剛」のヲチャーの一人ですけど、7月28日付の記事で不毛な議論を表わす言葉として神学論争なる用語が使われていた... 続きを読む
受信 2004/07/28 13:12:11
» タスクフォースのポリシーについて [■公的年金タスクフォース■ から]
皆さん、こんにちは。McDMaster です。
さて、木村剛さんが、きょう 7... 続きを読む
受信 2004/07/28 13:24:56
» プロジェクト運営の秘訣 [philosophical から]
週刊!木村剛: 改革を成就するモノは何か?:ケーキとネギの関係 私的にはあらゆるプロジェクトにおいて押さえておくべき勘所がすばらしくまとまった文章に見えます。当... 続きを読む
受信 2004/07/28 14:27:54
» でも、それはプロデュースする人の腕次第? [my.Hurusato.org から]
改革を成就するモノは何か?:ケーキとネギの関係
「公的年金タスクフォース」の運営について、木村氏が気をつけていることなどが、上記
のエントリーでは述べら... 続きを読む
受信 2004/07/28 16:52:33
» 論議と実行の壁 [fareaster から]
Blogの普及とともに、「開かれていながら繋がっている」という状況が広がり、色々 続きを読む
受信 2004/07/28 20:38:19
» エントリの趣旨とはズレますが [バイオティックレイヤード から]
木村剛さんがいいこと言ってました。
相当の負荷を掛けて何らかの前進を成し遂げても、それに見合う成果が得られるとは限らず、「こんなにやらされたのに・・・」と... 続きを読む
受信 2004/07/28 22:11:55
» 週刊!木村剛 「母親党」に思ったこと [【人生設計】日吉町電停前 BLOG から]
またもや、週刊!木村剛 関連です。 自分のブログのテーマからどんどん離れてい 続きを読む
受信 2004/07/29 11:53:10
» キムタケ×河野太郎×古川元久 公開討論会の模様が配信されてます! [ビールを飲みながら考えてみた… から]
7/26に行われた木村剛主催「年金問題公開討論会」の模様が配信されています。それにしてもあぁいう対談がこんなに盛り上がるとは、、、
「木村剛 年金問題公開討論... 続きを読む
受信 2004/07/29 18:41:24
» 「ネギ」をリスペクトするのは大変難しい [つれづれ日記 から]
昨日はエントリを2つ上げたのであるが、そのうちの1つにコメントが到来した。コメントの主は某団体の方である。
(参考URL:http://blog.goo.ne.... 続きを読む
受信 2004/07/30 2:19:15
» 発想 [あけどんわーるど別館(blog編) から]
此処暫く、「週刊!木村剛」のBlogを読んでいます。そんなに細かく読んでいるわけじゃないんですが、時折、面白い部分を発見します。
今回、私がビビビ....... 続きを読む
受信 2004/07/31 1:21:17
» 「縁尋奇妙」時代のコミュニケーション戦略 [カトラー:katolerのマーケティング言論 から]
久米繊維工業の久米信行社長の本「メール道」(NTT出版)の出版パーティーがあった 続きを読む
受信 2004/07/31 2:22:06
» 考えること、伝えること [H-Yamaguchi.net から]
職場で若手の人々に対して話をする機会があった。(「自分が若手でない」という事実に 続きを読む
受信 2004/08/01 1:07:21
» 連載・恋才① [winwin から]
N@oと七人の木村剛サマ
ここはある国のはずれ。海を隔てた小さな島です。
緑色の海面とどんよりとした空、チャコールグレーの大地が
芸術的なコントラスト... 続きを読む
受信 2004/08/01 17:11:45
» 年金と介護、そして育児の「しわよせ直撃世代」 [ミズタマのチチ から]
国会関係では選挙の後始末的話題が散見されてますね。
公的年金タスクフォースでは「これは読んどけ」と言われている資料がいくつかあります。
その中の一つ、高... 続きを読む
受信 2004/08/03 19:46:42
» 現行の年金制度は「きちっとリセット」しなくてはいけない [“hima's blog” livedoor から]
今夕、芥川賞受賞作が載ってるからとねだって、嫁さに買ってきて貰った「文藝春秋」に、
... 続きを読む
受信 2004/08/14 21:22:46
» 公的年金タスクフォースが進展しているらしい [H-Yamaguchi.net から]
少し前に「週刊!木村剛」あたりで盛り上がった公的年金問題に関連して、blogge 続きを読む
受信 2004/09/19 23:52:37
» 公的年金タスクフォースが進展しているらしい [H-Yamaguchi.net から]
少し前に「週刊!木村剛」あたりで盛り上がった公的年金問題に関連して、blogge 続きを読む
受信 2004/09/20 0:01:02
» 公的年金タスクフォースに参加して分かったこと。 [ミズタマのチチ から]
昨年7月に週刊!木村剛をきっかけに、公的年金タスクフォースに参加した。
私には、本業があり家庭もある。自分が好きなように使える時間はそれほど無いと思えた。
... 続きを読む
受信 2005/01/07 18:01:31















