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2004.12.04

[BLOG of the Week] 「松本サリン事件」の教訓

 皆さん、こんにちは。木村剛です。毎週土曜日は、トラックバックしていただいた方々を中心に、私が独断と偏見でお気に入りのブログを選んでご紹介する「BLOG of the Week」の日です。第31回「BLOG of the Week」において私が選んだのは、「Espresso Diary」さんが書いた「私たちにとっての『松本サリン事件』。」です。

 一言で申し上げれば、「心を打たれました」ということに尽きます。私に対しても、配慮の行き届いた厳しい苦言を呈していただいています。あまりにも心を打たれたので、申し訳なくて一部削除などできませんでした。ということで、全文掲載の扱いにさせていただきたいと思います(「Espresso Diary」さん、問題があればご一報ください)。
 なかなか文章の癖というものは、一朝一夕に直るものではありませんが、「善悪の対立の構図を描きがちなところは残念にも思うし、また危惧もしてしまうのです。人もメディアも、そんなに単純なものではない。それが、あの事件の教訓だと思います」という「Espresso Diary」さんからの苦言を胸に秘めて、これからも精進していきたいと思います。  それでは、「Espresso Diary」さんが書いた「私たちにとっての『松本サリン事件』。」をじっくりと噛み締めながら読んでいただければ幸いです。

「私たちにとっての『松本サリン事件』。」

松本サリン事件は、「マスコミは、おかしい」などという単純な話ではありません。それは、熊井啓さんが監督した『日本の黒い夏』を観れば解る。映画では、河野義行さんを疑う松本の人々の姿が、生々しく描かれています。あれは、松本市民にとっては恥ずかしい場面ともいえる。にも関わらず、そのロケや上映会には多くの市民が協力し、今日に至るもメディア・リテラシーをめぐる勉強会などが続いています。それは、あの事件がマスコミに振り回されがちな私たちの心を見つめさせる事件だからだと思います。

松本美須々ヶ丘高校の放送部が製作した『テレビは何を伝えたか』も、同じです。私は、高校生たちがプロのマスコミ人を追及した作品ではないと考えています。どうして私たちは、間違えてしまったのか?善と悪とを単純に割り切ることの怖さ。私たちの心に大きな影響を与える報道が、どういう仕組みになっているのか。それを、静かに考えさせる作品だと思う。あれだけのことがありながら、河野さんは容疑者たちを罵ったりはしない。どうして、こんなことになってしまったのか? よく考えて欲しい。いつも、そういう発言をしています。

事件の現場は、私が小学校の頃に遊びまわっていた場所です。あの奇妙な夏のことが街で話題に出ることは、ほとんどありません。だけど、みんな忘れたわけじゃない。それは、河野さんや弁護を担当した永田恒春さんたちの集まりに行くとよく解る。報道に自分たちはどう動かされたのか?自分たちも間違えたじゃないか。本当に怖いのは、マスコミではなく、表面的なイメージで善悪を割り切ろうとする私たちの心なのではないか?少なくとも私は、そう考えています。

だから私には、木村剛さんが描きがちな「良識派vs問題あるマスコミ」のような構図が、あまりにも単純すぎるように見えてしまう。人を善と悪とに分けてしまいがちな見方こそが、いかにも二項対立に陥りがちなマス・メディア的な見方だとは言えないだろうか。そう感じてしまうのです。

長野県では、いま田中知事に対する批判や疑問が強まっています。地元の問題を先送りしながら、東京のマスコミの方ばかりを意識しているのではないか?という疑念の声です。当然のことながら、知事選で田中さんを推した私や永田弁護士にも声が寄せられる。「お前たちにも責任があるんだぞ」。11月の27日に『これでいいのか!?田中康夫県政』という集会を企画しているのは、「いま一度よく考えてみよう」という場を設けるためでもあります。知事選では、メディア戦略がズバリ的中しました。しかし、「守旧派vs改革派」という善悪の単純な構図を描いていったという点では、私たち、いや少なくとも私には責任の一端があるのです。それで、いまは集会の事務局に入っているという次第です。私は、松本サリン事件のときのマスコミと似たような誤りを犯してしまったのかもしれない・・・。

「新聞記者が文章を書く時期というのは、意外と短いんだ」。私が若い頃にお世話になった毎日新聞の人事部長さんは、そう語っていました。駆け出しの記者は、だいたいが地方の支局で「サツまわり」。20代の後半になると地方面の特集記事などを書く。よく「進む中心市街地の空洞化」とか「きしむ合併合併」という連載が地方面に載りますが、あれですね。で、30歳前後で東京や大阪の本社に転勤になって、30代の後半になるとデスクという立場が待っている。新聞社も大きな組織ですから、支局長など管理職としてのコースがあるわけです。すると、実質的に第一線の記者として文章を書く時期というのは、10年くらいの人が多い。そういうお話でした。

この数年間、私が長野県のマスコミの方々とお会いしてきて感じるのは、基本的に新聞社の人事は、20年前とあまり変わっていないんじゃないか? ということです。ですから、幾人かの新聞記者がブログで表現を試みているのは、確かにマスコミの在り方に対する疑問という動機もあるんでしょうが、より自由な自分らしい表現の場を求めてらっしゃるという背景もあるんじゃないか? 私は、そう推測しています。

まあ、信州の山の中にいる私などは小さな「家内工業」の人間ですが、木村剛さんはマスコミ界に名前が轟いている人です。ブログをめぐる新たな試みに期待されている方も多いと思う。私には木村さんが改革にかけてきた意欲も解るし、著作も何冊か買って読んできました。それゆえに善悪の対立の構図を描きがちなところは残念にも思うし、また危惧もしてしまうのです。人もメディアも、そんなに単純なものではない。それが、あの事件の教訓だと思います。

2004 12 04 [22. BLOG of the Week] | 固定リンク

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