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2004.12.12
[フィナンシャルi] 銀行貸出増加へのハードル
2003年に5%程度だった銀行貸出の対前年比減少率は2004年9月末で3%にまで縮小した。02年初来の循環的景気回復、ゼロ金利政策長期継続という追い風もあって銀行部門の不良債権処理は着実に進展しており、信用リスク許容度の拡大とともに銀行の貸出スタンスも個人・中小企業向けを中心に積極姿勢に転じている。ただ、今後の貸出動向の鍵を握るのはむしろ貸出需要サイド、つまり企業部門資金需要の強弱いかんである。(白石誠司)
98年度以降、非金融法人部門の資金余剰が続いている。これは企業がバブル崩壊後の過剰債務問題に対処するため借金返済を優先し続けてきたことに対応する。
04年の全産業売上高・有利子負債残高比率はほぼ88年水準にあり、マクロ的にみて過剰債務問題が終息したとは必ずしもいえない。企業の債務圧縮の動きはそのペースこそ鈍化してもまだ数年は継続する公算がある。
さらに銀行の貸出増加を阻む二つの構造的要因が存在する。一つは企業部門の極めて潤沢なキャッシュフローの存在であり、もう一つは企業の構造的人件費抑制スタンスを背景に内需主導の自律的景気回復が期待しにくい点である。
財務省の法人企業統計によれば、04年4~6月期の非金融法人部門の設備投資/キャッシュフロー比率は昨秋来の力強い設備投資拡大傾向にも関わらず史上最低圏の66%にとどまった。企業は銀行借入をしなくても極めて高水準の設備投資を実施出来る財務状況にある。
しかも、この構図は、技術革新を背景とした半ば構造的な資本財物価デフレのもとで今後も根強く継続する可能性がある。
キャッシュフローの過半を占める減価償却費は過去の設備取得原価に基づいて計上される。一貫した資本財物価デフレ下においては、昔の高い設備取得原価に基づいて計上される減価償却費が潤沢となる一方で、当該キャッシュフローの設備購買力は高まり続けるという循環が働くためである。
また、日本の製造業は経済のグローバル化という流れの中で、低廉な労働力を有する新興工業国との競争激化を余儀なくされており、景気回復下においても人件費抑制スタンスを大きくは崩していない。非製造業もパート比率引き上げによる人件費抑制に余念が無い。
こうした企業部門の労働分配率引き下げは個人消費、延いては内需主導の自律的景気回復の障害となり、延いては企業の能力増強投資抑制につながる。実際、最近の設備投資動向をみると、外需・IT関連などの一部特需業種で能力増強投資がみられるものの、全体的にはこれまで抑制されていた更新投資が顕在化している色彩が濃い。
一方、貸出金利の動きをみると新規貸出平均金利が残高ベースの貸出平均金利より0.2%程度低い状態が続いている。全体平均よりも低いものを加えて平均値を出すと全体平均が低下するという意味において、残高平均金利の低下傾向は今後も続く。
このことは、貸出残高と残高貸出平均金利の積である銀行の貸出受取利息額がまだ根強い減少トレンドにあることを意味する。銀行は引き続き(価格変動リスクに留意しながらも)債券投資による期間収益獲得を重視せざるをえない環境に置かれているといえる。
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白石誠司
早稲田大学政治経済学部経済学科卒。1988年4月中央信託銀行入行。91年4月日本経済研究センター出向、92年4月に中央信託に戻り調査部、資金証券部(債券ディーラー)。98年1月大和総研入社、経済調査部。01年4月から大和証券SMBC債券調査部チーフマーケットエコノミスト。日経公社債情報第9回債券アナリスト・エコノミスト人気調査(2004年3月8日発表)エコノミスト部門第7位。
(追伸)「週刊!木村剛」は、総合ビジネス月刊誌誌「フィナンシャルジャパン」(年間購読はココ)および「フジサンケイビジネスアイ」(購読希望はココ)とメディア・コラボレーションしています。本日の記事は、「フジサンケイビジネスアイ」に12月6日に掲載したものです。
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