« [ゴーログ]再び、モノ書きの老婆心:「匿名性」を護るために | トップページ | [ゴーログ]ホリエモンvsフジテレビ:抗争の果てにあるものは? »

2005.02.17

[週刊!岡本編集長] 怒れる者の歌が聞こえるか?

 みなさん、こんにちは。岡本呻也です。
 この時期やっぱり、ほりえもん対フジサンケイグループの話を書くべきなんでしょうかね。
 ほりえもんにも日枝さんにも会ったことあるし、関心はあるんですけど、無責任なことを書く気にもなりません。お互いが死力を尽くして、「負ければ地獄」のビジネス・ゲームを闘っているわけですから。
 リーマンの利益は数十億円だそうですが、外資系証券大手の某社はこの話を「リスクが大きすぎる」と断ったと聞きます。バイプレーヤーたちもリスクを取って闘っていますね。

 そういう中で、いま話題の映画は「オペラ座の怪人」です (どういう展開じゃい? と自分ツッコミ)。
わたしはロンドンで2回舞台を観ました。最初に見たときはぶったまげましたねえ。「世の中にこんなすごいものがあるのか」と。
 とにかく、舞台転換の仕掛けがすごいんですよ。でも、それって映画じゃあわからないんじゃないの?
 オペラ座は都市のど真ん中の「ハレとケの同居する空間」です。その中に、怪人、オペラのプリマ、恋愛劇、劇中劇、各々の心の中に住む「幽霊」、19世紀のパリの文化、仮面舞踏会などなど……究極のドラマ性を感じさせる舞台設定が「あっ」と驚く仕掛けで次々と目の前に現れてきます。しかもそれがすべて人力で動かされているというのだからすごい。特にオペラ座の地下にある湖を船で進むという仕掛けには、多くの人が幻惑されたでしょうね。あれはおそらくオッフェンバックのオペラ「ホフマン物語」の第3幕ヴェニスの場面をパクったにちがいない。
 この舞台のすごさに匹敵するのは、ゲッツ・フリードリヒが演出したベルリン・ドイツオペラの「神々の黄昏」のフィナーレくらいのもんでしょうなー。

 思えば最初に観たミュージカルがこれでした。いちばんすごいものを最初に観てしまうというのは不幸な感じもします。
 たとえば、『カラマーゾフの兄弟』をまだ読んでいない人を、私はうらやましいと思います。だってこれから読めるんですから。まあ、そんな感じでしょうか。
 しかし、この「オペラ座の怪人」のあとに知ったにもかかわらず、より満足度が高かったミュージカルがあります。それは「レ・ミゼラブル」なんです。最初ニューヨークで観て、ロンドンで2回観て、ニューヨークでまた観て、日本で2回観ました。アホです。
 かわいそうな孤児コゼットがいて、ジャン・バルジャンに拾われて育てられて、かっこいい青年と結婚しました。ジャン・バルジャンは彼女のために命をささげたも同然ですが、そういう親身な恩人だけではなくて、革命を通して世の中を前進させてきた多くの人たちの犠牲の上に、コゼットたちの幸せがあるんですよ、というのを見事に表現したお話です。悪かったですねえ、わたしはこういうのが大好きなんですよ。
 特に島田歌穂のコゼットは、舞台に出てきただけで泣けますねえ。彼女は昔は「がんばれ!!ロボコン」で「ロビンちゃん」を演っていたのですが。

 この劇中の、パリで革命を試みてバリケードに立てこもった青年たちの歌が有名ですよね。歌詞は、

「民衆の歌声が聞こえるか? 怒れる人民の歌を歌っているんだ 二度と奴隷にならないという 人民の歌声だ! 君たちの心臓の鼓動が ドラムの音と共鳴するとき 新しい人生が始まり 明日が訪れる!」 
「この戦いに参加して 自由になる権利をつかもう!」
「すべてを投げうって 我々の旗とともに進んでくれるか? 倒れる者もいれば行き残る者もいよう 思いきって立ち上がろうじゃないか」 

 と言っているんです。

 わたしは、こういう呼びかけに共鳴してしまいますね(単に性格ですが)。
 社畜になって死んだような人生を送るくらいなら、死んだほうがましだと思います。
 自分の住んでいる社会の運営に積極的に参加しようとしない人は、まともに相手にしても仕方がないと思います。「奴隷でもいいや」と思っている人たちなわけですから。
 自由意志で立ち上がって、自分たちの新しい道を協力して切り拓いてこそ、人間だと思うのです。
 そのとき、倒れる者も生き残る者もいるはずです。犬死はごめんですから、リスク・コントロールは必要でしょう。だけど、リスクを恐れてじっと引きこもり、チャンスを失うのはごめんです。
 変革をひたすら拒否して、自分では何もしないくせに、チャレンジしている人をこき下ろすような態度は卑怯だと思います。

 だからわたしは、ほりえもんの勇気に拍手を送りたいと思います。また、防戦するフジサンケイ側にも頑張って欲しいと思います。
 かれらは日本のビジネス界に新しい時代をもたらしつつあります。このM&A劇の帰趨を見つめるにあたっては、われわれは決して「勝ち負け」の帰結だけに興味をもつ野次馬であってはならないと思います。ただ傍観するのではなく、「日本の資本市場が迎えつつある新しい時代に、われわれも参加するんだ」という姿勢すら必要なのではないかと思うのです。

2005 02 17 [21. 週刊!岡本編集長] | 固定リンク

トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/15160/2959529

この記事へのトラックバック一覧です: [週刊!岡本編集長] 怒れる者の歌が聞こえるか?:

» お笑い『「千葉国」誕生ニュース』と『尾張三河独立構想』 [貞子ちゃんの連れ連れ日記 から]
【週刊!木村 剛 投稿】岡本編集長様 いつも楽しく岡本さんの記事を拝読させていただいてます。これからも遠くでご健勝をお祈り申し上げています♪ ふたたび ... 続きを読む

受信 2005/02/18 0:43:12

» 市民・奴隷そして気概 [知的体育会系フリーエージェントの実践記録 から]
アテネの市民身分の条件は積極的に政治に参加することだった。 「ここアテネでは、政治に無関心な市民は静かさを愛するものとは思われず、市民とし 続きを読む

受信 2005/02/18 8:38:38

» ホリエモン問題再考 [McDMaster's Weblog から]
まずは、森前首相のご発言の記事より。渦中のフジサンケイグループのメディアからの引用です。 森前首相、ニッポン放送の株取得をめぐる問題について「若干の疑問を... 続きを読む

受信 2005/02/18 11:36:30

» ライブドアの件ですが分からないのですが [ゆびとま から]
計算が苦手なゆびとまは、リーマンがライブドアを支配したら何がおトクなのかよく分か 続きを読む

受信 2005/02/20 0:42:55

» 売っているものを買っただけで人格までつべこべ言われるなんて [明日は明日のホラを吹く -Tomorrow, I'll give you another big talk- から]
要はこうですよ・・・ お金を一生懸命集めて(リーマンブラザーズから) 欲しいモノ(ニッポン放送)を買ったら、 売り手(フジテレビ)が言うには 「... 続きを読む

受信 2005/02/22 18:49:59

» ゲルニカ [アマデウス から]
僕の中でピカソの「ゲルニカ」とゴヤの「プリンシペ・ピオの丘での銃殺」から受けるイ 続きを読む

受信 2005/02/25 22:24:16

» マリリン・マンソン VS ニーチェ 第二戦 2003.6.X 初出 [仙台インターネットマガジン ★仙台のフリーネット雑誌 から]
というわけで、マリリン・マンソンが ニーチェを読んでいた事を僕は発見したのです。... 続きを読む

受信 2005/07/26 22:07:46