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2005.06.29

[フィナンシャルi] 控除縮小・廃止拍車へ

 政府税制調査会は、6月21日に2006年度以降の税制改正のたたき台となる「個人所得課税に関する論点整理」(以下「論点整理」と略)を発表した。主な内容は、①給与所得控除の見直し、②配偶者控除・扶養控除の見直し、③退職所得課税の見直し、④所得税から住民税への税源移譲に対応した税率変更、⑤定率減税の残り半分の全廃―という項目が大きな柱になっている。(第一生命経済研究所主席エコノミスト 熊野 英生)

 この論点整理から窺えるのは、今後の税制改正では控除の縮小・廃止の範囲が大きく広がりそうだということである。今までの税制改正は、1994年以降景気配慮を目的に実施されてきた定率減税、配偶者特別控除といった優遇措置を外し、課税ベースを広げることに主眼が置かれていた。一旦低下した所得税の担税力を「復元」することが建前だったと理解できる。
 ところが、今回の論点整理では、1994年以前への「復元」という範囲を超えた見直しが散りばめられている。この点はあまり指摘されていないが、従来と質的に大きく異なることを確認しなくてはなるまい。
 個別に論点整理の内容をみると、最大のインパクトがあるのは給与所得控除の見直しである。所得税に諸控除が存在することによって約15兆円の税収減につながっており、その中で給与所得控除が占める金額は6.8兆円分と言われている。政府税調は、サラリーマンに適用されている所得比平均28%のみなし必要経費率が高すぎると指摘し、一方で職務遂行上の経費の対象範囲は別途拡大しつつ、一律のみなし課税控除を縮小していこうと議論を進めている。
 しかし、現在でもサラリーマンが特定支出を確定申告で控除できる仕組みはあるが、それを利用するのは年間10人に満たないのが実情だ。給与所得控除を切り込むと、最低課税限度は大幅に引き下がるが、サラリーマンだけが大幅な負担増を強いられる。
 子育て支援についても、恩恵を考えるうえでの重要な点が抜けている。論点整理では、扶養控除の恩恵を所得控除から税額控除に切り替えるアイデアが出ているが、肝心の税額控除の金額である。そこはまだ詰められていない。
 また、子育て支援と同時に議論されている配偶者控除の縮小についても、これがそもそも子育てをする専業主婦の負担を高める意味でマイナスなのではないかという疑問だある。主婦の労働供給を増やそうとして配偶者控除を縮小しようとする思惑は、かえって子供を育てにくい経済環境をつくりはしないか。この点も詰めた方がよい。


 もうひとつ、あまり議論にならない不思議なことがある。これまで検討事項とされてきた定率減税の全廃がいつの間にか既定路線になったことだ。以前、定率減税全廃は2006年度の抜本的な所得税改革の中で、プラスとマイナスのバランスを取るとされていたはずだ。
 「景気に配慮しつつ、縮減額を減額する」という弾力条項の話もどこに行ったのかわからない。
 筆者は、所得税の担税力を上げなければ、財政赤字の削減は容易に進まないという原理原則には同意するが、そのタイミングには慎重を期し、さらに決定プロセスは公明正大に議論されなくてはならないと考える。
 過去の所得税減税の復元の範囲を越えた給与所得控除の縮小は、過去の控除廃止とは区別して議論を深めるべきであるし、その際の最大の論点は、事業者とサラリーマンの税負担の不公平感であると考える。

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熊野 英生(くまの ひでお) 第一生命経済研究所主席エコノミスト。金融政策、財政政策、為替・長短金融市場を担当。横浜国立大経済卒。67年7月、山口県生まれ。90年4月、日本銀行入行。調査統計局、情報サービス局を経て、00年7月退職。同年8月より現職。主な著書に「籠城(ろうじょう)より野戦で挑む経済改革」(東京経済新報社)、「どうすればリスクに強くなれるか」(近代セールス社)

(追伸)「週刊!木村剛」は、総合ビジネス月刊誌「フィナンシャルジャパン」(年間購読はココ)および「フジサンケイビジネスアイ」(購読希望はココ)とメディア・コラボレーションしています。本日の記事は、「フジサンケイビジネスアイ」に6月27日に掲載したものです。


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