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2005.06.21
[木村剛のコラム] 大手銀の貸し出しスタンスの変化注視
大手銀行は揃って、不良債権比率の半減目標をクリアした。不良債権処理の目途がついたため、「守り」から「攻め」に転じる。大都市圏では、地価が下げ止まり傾向にあることもあって、不動産開発が活発化しており、不動産融資も活況を呈している。
特定の不動産事業に融資し、その特定事業からの収益だけに返済原資を限定するノンリコース融資は、一昔前には考えられなかったブームとなっている。かつては新生銀行しか実施しようとしなかったこの融資に大手銀行が怒涛のごとく押し寄せてきているのだ。
日本経済新聞によれば、大手銀行におけるノンリコース融資の3月末残高は4兆円となって前年度比5割増えたという。国内銀行全体では新規融資が2.9%減っている中で、不動産向けだけは15.3%増加している。新規融資全体に占める不動産業向けの割合は19.9%に達し、バブル期の水準を上回っている。
中小企業向け融資も本格的な活発化の兆しがある。融資先の在庫や売掛債権に着目した新型融資を強化しており、2-4%の貸出金利は中小企業にとって干天の慈雨になるだろう。
大手銀行において、この分野のリーダーシップを発揮しているのは三井住友銀行。今年度の中小企業向け無担保融資の新規実行計画は前年度比1割増の4兆円だという。みずほ銀行は前年比五割増以上の1兆円を融資する方針と報じられているし、三菱UFJも積極姿勢に転じた。
そういう中、地方でも変化の波が訪れているようだ。地銀の雄である横浜銀行は14年ぶりに東京都内への出店に踏み切るというし、京都銀行では3月末の貸出金残高が5.2%増え、来年には3兆円の大台にのせる予定だという。
「中小企業に資金需要はない」と言われていた2-3年前とはムードが変わった。これは吉報である。
特にこのゴールデンウィーク明けからの融資攻勢は目を見張るものがある。ひょっとすると、これまで滞りがちだった中小企業向け融資が本当に正常化する兆しなのかもしれない。
そうなれば、低下する一方だった信用乗数(現金などベースマネーに対して、信用をどれだけ供給しているかを示す数値)もいずれ反転してこよう。1992年にベースマネーに対して13.3倍の信用を供給してきたわが国の銀行システムは、直近では6.4倍程度の信用しか供給していない。これが正常化するということになれば、大量のマネーが日本経済を駆け巡る可能性も否定できない。
マネーサプライの動きは未だ緩慢ではあるが、2%程度の水準をかなり長い間持続しており、日本経済が正常化したとするならば、まずまずの伸び率。
この間、名目GDPに対するマネーサプライの比率は140%と、バブル期のピークである110%を大きく上回っている。名目GDPに対するキャッシュの比率でみると、バブル期ですら8.8%止まりだったのに、デフレ局面でのタンス預金増の影響もあって現在は何と14.6%。マグマは密かに眠っている。
大手銀行の貸出スタンスの変化は、信用乗数に、そしてマネーサプライにいかなる変化をもたらすのだろうか。
(追伸)「週刊!木村剛」は、総合ビジネス月刊誌「フィナンシャルジャパン」(年間購読はココ)および「フジサンケイビジネスアイ」(購読希望はココ)とメディア・コラボレーションしています。本日の記事は、「フジサンケイビジネスアイ」に6月20日に掲載したものです。
2005 06 21 [04. 経済政策を語ろう!] | 固定リンク
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