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2005.11.27
[フィナンシャル ジャパン] バブル再燃!?(2)
バブル再燃!? ―― このシグナルは「買い」なのか(中編)
[フィナンシャル ジャパン 11月号掲載]
曲がり屋」株中毒の新たな投資先
「今すぐ株をやめなさい」。八月の昼下がり。投資コンサルタントの喜多弘樹は、大阪市内の喫茶店で初老の女性を諭していた。相手は医師の妻だ。喜多がバブル時代に証券会社のアナリストだった時代から知る。一見するとおとなしいが、株となると目つきが変わる。自説ばかりを語り、他人の意見を全く聞かない。喜多の表現を借りれば「株中毒」だ。
喜多が諭した理由は、彼女がまたしても株を大量購入したため。それもテレビでよく報道される新興市場の企業ばかりだ。この女性の株資産は、「日本経済の壊滅史そのもの」(喜多)という。
バブル初期にこの女性は右肩上がりの相場の中で少し儲けた。そして病みつきになった。バブル末期に金融・不動産株などを購入。九○年代中ごろ、ウィンドウズ95の開発によるパソコンブームの中で日本の総合家電メーカーの株を買った。ITバブルの時代にソニーとソフトバンクを高値づかみした。いずれも暴落した。そして大量の含み損を抱えたまま、現在まで持ち続ける。
株の世界でいう典型的な「曲がり屋」で、含み損はおそらく一億円を超えているだろう。もちろん、株をやめる気配はない。
現れた「カリスマ」始まった個人の熱狂
「上がっています、上がっています。ほら給料分、ほらハワイ旅行分。わずか一五分です!」――。無邪気な女性の声が会場に響く。八月に行われた「カリスマネットディーラー」のセミナーでの光景だ。この女性は自らのネット上の取引を録画して、大スクリーンに早送りで映し出して受講者に見せる。二〇万円、三〇万円――。利益を示す数字がめまぐるしく変わる。画面をよく眺めようと、後ろの席にいる熟年の男女が演壇に向かう。三○歳代の「カリスマ」は以前のバブルを知らない。
「決算書や財務諸表なんて見る必要はありません。生活者の『感性』で思いついた銘柄を選べばいい」――。カリスマが「秘訣」を公開する。理性を持って聞くとおかしな話を、誰もが真面目に聞き続ける。熱心にメモをとっていた主婦(五一歳)に話を聞いた。「彼女の本は読んでいませんが、有名なのでしょう。株で勝てないから真似をしようと思って」。
個人投資家の雰囲気が変わりつつある。株の無料講演会などでは、どれも数百人単位で人が集まり、株投資への熱気が出始めたのだ。今年三月のライブドア騒動から「投資家の空気が確実に変わった」と前出の喜多は話す。「カネがあれば何でも買える」と語るホリエモン(堀江貴文)の姿がテレビに大写しになるにつれ、「『投機を肯定する風潮』が広がったようだ」という。
ネットトレードの普及により個人の参加が容易になったことも、熱気を高める。八○年代のバブル前夜、個人投資家が動き始めた姿を知る喜多の心に不安がよぎる。
喜多は二○年前から、個人投資家の育成が、日本の株式市場に必要と考えていた。投資家が長期に株を保有して、自らの資産と会社の成長を楽しむ。こういう株式市場を夢見ていたという。以前勤めていたナショナル証券現・SMBCフレンド証券)の坂口忠一・元会長も同じ問題意識を持っていた。
これが「理想の姿」か悩む証券マン
しかしバブルがやってくる。喜多は「酔っ払った」と当時を振り返る。強気のリポートを書くと相場はその通りになる。資産運用の相談が、企業や個人から会社に舞い込み続けた。日経平均が三万八九一五円の引値最高値をつけた一九八九年一二月二九日も、喜多は「当然と思った」という。
ところが、バブルは崩壊した。ナショナル証券は銀行傘下に入り、喜多の恩人だった坂口会長は会社を手放したとの自責の念から体調を崩して他界した。喜多も会社を去る。何よりもつらかったのは、顧客のクレームや怒り、嘆きといった人の苦しみに向き合い続けたつらさだったという。喜多は今でも精神安定剤を手にしている。
現在はバブル期と違って、証券業界の姿は「洗練」された。証券会社の多くが銀行傘下に入り、収益至上主義の外資系証券が存在感を示す。喜多の嫌いだった証券界の「いいかげんさ」は消えた。しかし喜多が以前考えた、理想の姿とはどうも違う。そして喜多の好きだった「男気のある」証券マンたちもリストラされた。
「大半の人にとって相場は『ばくち』でした。バブルはまた、起こるかもしれない。これが理想の姿かと、自問しています」。喜多はさびしさを感じている。
喜多が危惧するのは新興市場の危うさだ。東証マザーズで四割、大証へラクレスでは七割の参加者が個人投資家とされる。新興市場の場合、個人が激しいディーリングをするために、相場によくある「動揺」が大きい。そしてプロにとって「いじりやすい」相場だという。
同時に喜多は期待もしている。「資産運用の中で株式市場が定着しつつあることも事実です。賢明な投資家がおかしな流れを止めることができればいいのですが」。
(続く)(文中敬称略)
(追伸)「週刊!木村剛」は、金融経済月刊誌「フィナンシャルジャパン」(年間購読はココ)および「フジサンケイビジネスアイ」(購読希望はココ)とメディア・コラボレーションしています。本日の記事は、「フィナンシャル ジャパン 11月号」に掲載したものです。
全国有力書店におきまして、「フィナンシャル ジャパン」2006年1月号は11月21日発売です。
今月の第1特集は、株式投資するにあたって失敗しないために、個人投資家にぜひ知っておいてほしい資本主義のルールについて解説、経済・市場・監査・会計の幅広い角度で常識やオキテについて特集を組んでいます。
また第2特集では、日本の財政危機が深刻になっているな状況の中で、個人投資家はどのようなスタンスをとったらよいのかについて、世界各国の資産家の事例なども織り込みながら分散投資について書いています。
特集以外でも、阪神タイガースの上場問題や2007年からリタイアを始める「団塊の世代」の価値、上場企業経営者の知られざる悩み、アメリカの億万長者の実態について、好評連載中「資産株」vs「小泉株」、小泉“硬派”チルドレンの実態など盛りだくさんです。
2005 11 27 [13. フィナンシャル ジャパン] | 固定リンク
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