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2005.11.19

[フィナンシャル i ] 量的緩和からゼロ金利への復帰

 2001年3月に量的緩和政策が導入されてから5年近くが経過しようとしている。
 日本銀行は量的緩和の導入時に、消費者物価(除く生鮮食品)が前年比マイナスの間は解除しないことを宣言した。その物価もそろそろ前年比プラスの領域に入ってくることが見込まれ、量的緩和解除は間近との観測も出ている。
(UFJ総合研究所 主任研究員 小林真一郎)

 そうした中、福井日銀総裁は、「量的緩和政策の効果については、短期金利がゼロ%であることによる効果が次第に中心的な役割を占めるようになってきている」(10月12日の金融政策決定会合後の記者会見)として、量的緩和は実態的にゼロ金利政策に近づいている旨の発言をしている。
 しかし、量的緩和政策に対する一般的な解釈は、金利がゼロまで下がってしまうと、通常の金利政策では、もはやそれ以上の緩和を実施することができないので量的緩和を行ったというものである。
 量的緩和政策を解除した後に残るゼロ金利政策は、金融緩和効果を持つものなのか。そうであれば、これまでも金利メカニズムが働いて金融緩和効果は出ていたのだろうか。
 ゼロ金利政策の効果を考えるにあたっては、二つのポイントが重要である。
 ひとつは、物価の下落が収まることによって実質金利(名目金利-物価上昇率)が低下し、受動的ながら金融緩和効果が強まっていたことである。もうひとつは、業種によって直面する物価は異なるため、業種ごとに実質金利が異なるということである。
 各業種の直面する物価とは、売上高に影響を与える販売価格であると考えられる。そこで、販売価格の動きを最も反映していると思われる物価指標を業種ごとに選び、それを貸出残高の構成比に合わせて加重平均し合成物価指数を作成した。
 こうして名目の貸出金利(たとえば長期プライムレートなど)を用いて実質金利を算出すると、金利は低下しており、特に製造業で低下が顕著である。これは、製造業の販売価格動向を反映すると考えられる国内企業物価が上昇しているためである。
 実質金利が低下すると、企業はお金を借りやすくなったと感じる。日銀短観の中の貸出態度判断DIは、金融機関の貸出態度が「緩い」と感じる企業の割合から「厳しい」と感じる企業の割合を引いた値である。この数字がプラスであれば金融機関の貸出態度が緩く、お金が借りやすいと感じている企業の方が多いことになる。
 この貸出態度判断DIの5年移動平均をとって、それと企業の借り入れ金額(設備資金)の前年比の動きを比較してみた。5年移動平均をとるのは、平均的な借入期間が5年程度であるので、過去5年間の貸出態度判断が企業の借入残高に影響していると考えたからである。
 すると、貸出態度判断の変化が若干の時間差をもって借入残高に影響していることがうかがえる。実質金利の変化は企業の借入意欲を高めることによって資金需要に影響してくるようである。
 量的緩和政策からゼロ金利政策への復帰は、金融調節の操作目標の変更に過ぎず、直接的には金融政策の変更を意味しない。しかし、ゼロ金利の状態であっても金利メカニズムが働いていたならば、金利を捜査目標とするゼロ金利政策への復帰は意味がある。
 消費者物価を含めて企業の直面する物価が上昇する中でゼロ金利を維持することは、実質金利の低下を通じて企業の資金需要を高めると考えられるためである。

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小林 真一郎 (こばやし しんいちろう) 
UFJ総合研究所 主任研究員 
一橋大学社会学部卒。1990年日本長期信用銀行入行。投資顧問会社を経て、99年三和総合研究所(現:UFJ総合研究所)入社。調査部で国内マクロ経済調査(企業部門、金融・財政部門)を担当。

(追伸)「週刊!木村剛」は、金融経済月刊誌「フィナンシャルジャパン」(年間購読はココ)および「フジサンケイビジネスアイ」(購読希望はココ)とメディア・コラボレーションしています。本日の記事は、「フジサンケイビジネスアイ」に11月14日に掲載したものです。

2005 11 19 [14. フィナンシャルi ] | 固定リンク

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