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2005.11.29

[木村剛のコラム] 医療費削減に報いる制度改革を!

 11月22日、厚生労働省は、市町村が自営業者などのために運営している国民健康保険の2004年度の財政状況を発表した。
 一般会計からの赤字補填分を除いた実質赤字は、3284億円。全体の支出をみると、10兆6998億円と3・6%増加しており、その中でも保険給付が5202億円も増えている。制度改正によって若干改善しているものの、赤字は放置して置けないほど巨額だ。

 厚生省の試算によれば、今後20年間に33兆円も医療負担が増加することが予測されている。そこで、医療費の総額を抑制するという議論がでてくる。
 総額を抑制する方向感に異論はない。効能が同水準で価格が安いジェネリック(後発医薬品)を使用するなどやるべきことは山積しており、その結果、かなりの削減効果は望み得る。
 ただし、そこで忘れてはいけないことがある。それは、医療費削減に汗を流した者が報われる制度設計を導入しなければならない――ということだ。
 わが国では、長い間、「医は仁術」という建て前の下で、経営や損益に関する議論が先送りされてきた。誤った平等意識や公平感が重用され、制度の歪みが放置されてきた。
 特に、お上がサービスやモノの値段を決めてきたために、努力した者が報われない制度になっているのは大問題。サービスの中身がどうあろうとも、価格が同じなのだから、サービスを向上させようとするインセンティブが働かない。
 例えば、ガン、心臓病、脳卒中という日本人の死亡原因の上位である病気の治療に力を入れている病院は儲からない。サービス価格が一定に抑えられている中で、高度な技術や最新鋭の機材が必要でコストが嵩むからだ。これで本当に良いのだろうか。
 その上、財団や各省庁の外郭団体、特殊法人など公が関与する病院が制度の歪みを助長する。税金でサポートを受け、コスト度外視の経営をしているから、競合している民間病院はたまったものではない。
医療法は、民間医療機関が整備されたら、公立病院は退出しなければならないと定めているのに、退出する気配はない。労災病院が診ている労災保険の患者が一割にすぎないことをどう考えればよいのだろう。
 そうした中で、せっかくジェネリックがあるのに、公立病院はコストを考えなくてよいから、従来の高い薬を処方し続ける。薬剤師の意見など聞きもしない。
 さらに、徒弟制度の蛸壺の中で、ネットワークが限定されているから、本当の専門医に紹介するという当たり前のサービスが機能しない。セカンドオピニオンもまだまだ一般的ではないのが実情だ。患者のことなど二の次になっている。
 二十年前の金融業界と瓜二つだ。当時は、同じ金利体系の下で、サービスも一律。今でもそうだが、必要なのは自由度を認めた健全な競争なのである。
 医療費を減らしつつも、患者の満足を高めることが求められている。しかし、現状の制度のままでは、努力しても報われない。改革に前向きな医師ほど、「頑張っても意味がない。むなしい」とこぼす。自由診療と国民保険の併用を認めて、建設的なサービス競争を促進すべきだと思う。


(追伸)「週刊!木村剛」は、金融経済月刊誌「フィナンシャルジャパン」(年間購読はココ)および「フジサンケイビジネスアイ」(購読希望はココ)とメディア・コラボレーションしています。本日の記事は、「フジサンケイビジネスアイ」に11月28日に掲載したものです。

2005 11 29 [04. 経済政策を語ろう!] | 固定リンク

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