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2005.12.04
[フィナンシャル ジャパン] バブル再燃!?(3)
バブル再燃!? ―― このシグナルは「買い」なのか(後編)
[フィナンシャル ジャパン 11月号掲載]
急騰する東京の一等地「ミニバブル」か?
不動産業界はバブル崩壊以来一四年ぶりの好景気に湧いている。
「この一年で都心一等地の地価が二倍近くになった」「南青山に建てられたタレント・神田うのの新居の土地は、昨年坪五〇〇万円強で買われた。一昨年の二倍だ」「銀座界隈の取引価格は路線価の二.三倍が当たり前だ」。このような真偽の確認できない景気のいい話が飛び交う。日本経済の傷となっていた地価は底入れししつつある。
買い手の中心は不動産ファンド勢だ。業界推計では不動産への投資金額の七割がファンドから出ているとされる。ファンドは機関投資家から資金を集める。不動産証券化といって権利を細分化し、それを売買する手法が盛んになっている。日本の不動産で証券化された金額は現在推定で約三〇兆円。日本の地価総額一四〇〇兆円、物件を含めると二〇〇〇兆円から比べるとわずかな割合にすぎない。
二〇〇一年からは不動産投資法人を株式市場に上場させ、株を売買するJリート(日本版不動産投資信託)も始まった。今では不動産は金融商品のように流通する。オーストラリアでは上場リートの時価総額は対GDP比の約一割、米国では同約三%。同約〇・五%の日本と比べると、欧米の金融市場の中で不動産は大きな存在だ。 こうした欧米で発展した技術を使って、不動産業界は金融との融合が加速している。今では不動産会社は大規模な開発や土地の購入などでも、大口投資を行わなくてもよい。そしてリスクを負わない。バブル崩壊を乗り越えて、不動産業界も「賢く」なったのだ。
そうしたリートやファンドへの資金の出し手は運用難にあえぐ地銀、信金などの金融機関や年金基金などだ。現在上場リートの利回りは年三~四%だ。私募ファンドの場合、最低でも年五~六%で回り、年一〇%以上の商品も珍しくない。長期金利(十年物国債利回り)はこのところ一%台前半で推移しているから、魅力的な金融商品だ。
金融との融合で流れ込む資金
「不動産の現状を『バブル』とひとくくりでまとめられると、違う感じがします」。
東証一部上場のクリードの経営企画室長・藤野匡生は首をかしげる。
現在の不動産の値動きは個別色が強い。都心部では過熱感が出る一方で、地方で地価が上昇しているのはごく一部だ。さらに「私たちの会社のように地価の変動によって、収益が大きくぶれない不動産業も増えている」と藤野は強調する。
クリードは不動産の価値再評価、そしてファンド事業といったビジネスを、日本に導入した企業。今年五月期決算で純利益が前期比約二倍の二一億円となる急成長を遂げた。
「不動産を株にたとえるなら、私たちはディーラーではなく、証券や投資信託会社のような立場です。
取引が増えることで収益が上がります」(藤野)。不動産取引市場と、「証券化」された不動産市場は密接に連関しているものの別個の存在となりつつあるという。
藤野はメガバンクの経営企画部からクリードに転じた。企画部門といえば、将来は取締役も狙えるエリートコース。上司も「辞める人などいない」と驚愕して引きとめたという。しかし「新しい世界に飛び込みたかった」と藤野は話す。成長する市場は意欲的な人材をひきつける。クリードの宗吉敏彦社長も伊藤忠商事出身だ。不動産と金融市場の融合は、人材面でも加速している。
「地価が上昇し続けるという『土地神話』など、今では信じる人は誰もいません。しかし株や債券の『ペーパーアセット』とは別の値動きをする、資産としての不動産は定着するはずです」と藤野は将来を期待する。
クリードの成長計画は意欲的だ。不動産運用ビジネスでの預かり残高を〇五年五月の一二八四億円から、〇八年同月までに八〇〇〇億円(上場リート、私募不動産ファンド、自己投資分の合計)にする予定だ。一%程度の長期金利の金利上昇を織り込んでも、これだけの資金が入ると見込む。「不動産価格の調整が生じ、ファンドの選別が起こるかもしれません。不動産の評価能力で、国内でも有数の力を持つ当社は、競争力のあるファンド商品を作り出すことができると思います」と藤野は話す。不動産市場にカネは今後も流れ込み続ける可能性は高い。
「金利上昇までの勝負」か冷静な不動産のプロたち
もちろん不動産の先行きに対する見方は多様だ。一四年間も続いた不動産業界の暗雲。それを乗り越えた不動産マンたちからは、慎重な見方が続く。
「これはバブルだな」――。「デジタル不動産コンサルタント」という不動産調査会社を経営する長谷川高は最近、調査をするごとにつぶやく。東京の青山、六本木、赤坂といった土地を調査すると、一年間に四.五回、転売されていた例が多いのだ。一九八○年代末のバブル期並みのペースだ。
長谷川は仕事で二つの顔を持つ。一つが資産家や投資家への不動産投資へのアドバイスだ。もう一つが、リートやファンドのための不動産の調査業務。いずれのビジネスも活況だ。
新築マンションの供給戸数は、バブル期を超えるペースで推移している。マンションの購入や投資に関心を持つ人が、長谷川の会社をひっきりなしに訪れる。不動産ファンドを作るための調査も昨年から急増した。
しかし長谷川は冷静だ。「年金基金のカネを引き入れて、巨大リートを作りました」。バブルを経験しない若い不動産マンが誇らしげに語る姿を見ながら、危うさを感じ続ける。
長谷川は不動産ディベロッパー、リクルートコスモスの出身。バブル時代は土地買い付けの最前線に立ち「C級戦犯」と自称する。その長谷川は「高値安定している不動産へ投資するのに、今は最適のタイミングではない」と顧客にアドバイスしている真っ最中。そして上場リートの一本調子の上昇にも懐疑的だ。
長谷川が懸念するのは金利だ。八九年から始まった日銀の金融引き締めと、同時に起こった不動産融資規制。過熱した不動産市場は二年後の九一年に破裂した。その激変を長谷川は肌で体験している。「金利は必ず二~三年以内に上昇します。そのときまでの勝負と、多くの不動産マンは割り切っていますよ」。
近いうちに不動産の変動はある
「あなたは間違っているよ。地価は上がり続ける」――。一九九〇年に、土地の売却を言って歩いた不動産コ
ンサルタントの林尚道は、第一声で顧客に必ず叱られた。不動産会社の誰もが浮かれていた時代に、林は過熱ぶりへのおかしさを感じていた。必死の説得によって、多くの顧客はなんとか売り抜けることができた。
林はバブル崩壊の荒波を乗り切り、現在では東証マザーズに上場する不動産コンサルティング会社、エリアリンクの創業社長だ。「困った物件の駆け込み寺」として知られる。収益性の上がらない土地や建物を調査して、SOHO、駐車場、トランクルームなど多様な解決策を提示した上で、借り上げて運用する。不動産の価値を高めるサービスを提供する。社員わずか約三〇人で売上高一二〇億円(二〇〇五年一二月期予想)をあげる。同社も地価に左右されない新種の不動産会社だ。
その林は最近「何かがおかしい」という懸念を感じている。評判を聞きつけて、同社には各地から投資の依頼が舞い込む。しかし同社は慎重にビジネスを進める。昨年までにホテル買収を済ませた。今は熱海、長崎、屋久島で買収したホテルの運用で益を出している。
「利は元にあり」――。古い商売格言通り、底値で買って投資額を抑えなければ商売で利益が出ないと、林は考えている。リート事業にも慎重だ。一方で、ファンド勢は地方のリゾート地で不動産を物色しはじめたという。
「地方で融資先が不足しているためには、何か大掛かりなプロジェクトがあると、金融機関が殺到する状況があります。加えて、今は不動産ファンドでも、まず資金があり、とりあえず作るという動きが出ているのです。資金が出口を求めているのです。入札でも『とにかく都心で物件を買え』という危険な動きが出ています」と懸念する。
同時に不動産の活況はしばらく続くだろうとも、林は予想する。いつの時代のどの市場でも、相場のエネルギーが去ってもブームはしばらく続くためだ。かつてのバブル期でもそうだった。
「目先の活況の後で不動産は悪い方向に転換する可能性が高いでしょう。いつの場面でも同じですが、最悪を考えて準備する必要があります」と林は語っている。
金利上昇の後には何が来るのか
「おカネはあるところにはある」。疑問の答えは一応見つかった感じもする。だぶついたマネーは出口を求めて、不動産と株に流れ出した。そして、それに触れた一部の人々が陶酔と熱狂を始めている。
一九八〇年代末のバブルを必要以上に膨張させ、破裂のショックを大きくした一因は、日銀の金融引き締めの遅れだった。そのことは金融当局者の脳裏から離れない。異常といえる現在の日本の量的緩和政策を「景気を腰砕けにしない形で解除しなければならない」との本音は日銀内にくすぶり続ける。
潮目は変わりつつある。八月九日、日銀の福井俊彦総裁は政府と歩調を合わせる形で、「景気は踊り場をほぼ脱却したと判断しうる」との認識を表明した。日経平均株価は八月末時点で四年一カ月ぶりの水準となる一万二四〇〇円台を推移している。株価の堅調さは解除への追い風となるはずだ。債券など金融市場では先物が買われ、来年初頭の金利上昇をにらんだ動きが始まっている。
当然のことだが、金融市場の未来を占うことは誰にもできない。金融引き締めの後に、何が起こるのか。
一部で出現した陶酔と熱狂が「バブル」なのか。将来から今を振り返らないと、正確に判断することはできないだろう。
そして今がバブルの序章だとしても、その熱狂の中に飛び込む選択もある。「踊る阿呆に見る阿呆。同じ阿呆なら踊らにゃ損損」――。阿波踊りの「お囃子」の言う通りだ。バブル経済は崩壊するまで、誰に対しても甘美な夢と実益をもたらしてくれる。参加しなければボロ儲けの好機を享受することはできない。
とはいえ、「崩壊」の場合には、誰かがリスクを引き受ける必要がある。取材の中で、ある不動産業界の関係者が語った言葉が印象に残る。「前回は投資のポジションを持って痛手をくらいました。
しかし、今回は金融技術の発達で、個人や金融機関にリスクをはめ込んでいるから私は大丈夫です」。
一つだけ確かなことがある。経済の「ババ抜き」ゲームの中で、賢明な投資を選択する必要がある。自分の財産を守れるのは自分自身だけだからだ。
(文中敬称略)
(追伸)「週刊!木村剛」は、金融経済月刊誌「フィナンシャルジャパン」(年間購読はココ)および「フジサンケイビジネスアイ」(購読希望はココ)とメディア・コラボレーションしています。本日の記事は、「フィナンシャル ジャパン 11月号」に掲載したものです。
全国有力書店におきまして、「フィナンシャル ジャパン」2006年1月号は11月21日発売です。
今月の第1特集は、株式投資するにあたって失敗しないために、個人投資家にぜひ知っておいてほしい資本主義のルールについて解説、経済・市場・監査・会計の幅広い角度で常識やオキテについて特集を組んでいます。
また第2特集では、日本の財政危機が深刻になっているな状況の中で、個人投資家はどのようなスタンスをとったらよいのかについて、世界各国の資産家の事例なども織り込みながら分散投資について書いています。
特集以外でも、阪神タイガースの上場問題や2007年からリタイアを始める「団塊の世代」の価値、上場企業経営者の知られざる悩み、アメリカの億万長者の実態について、好評連載中「資産株」vs「小泉株」、小泉“硬派”チルドレンの実態など盛りだくさんです。
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私はモルガンスタンレーのウィークリー・インターナショナル・ブリーフィングに毎週目を通すようにしている。各国の経済状況が概観できる上(プロではないのでいくつもレポートを見ている暇がない)、日本企業のレポートに比べて、分析が鋭いことが多いからだ。日本株の上下に収益構造を縛られている日本の銀行系シンクタンクや証券会社のアナリストに比べ、割と思い切った発言ができるからであろう。私が一番驚いたのは、これだけ株価が短期間に上昇したにもかかわらず、日本の業界人が楽観的過ぎることだ。... 続きを読む
受信 2005/12/14 0:14:57

















