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2006.05.21
[フィナンシャル ジャパン] 鎖国攘夷論には「品格」がない
フィナンシャル ジャパン6月号 伯楽諫言 文:木村剛
約一四〇年前、日本は、明治維新という大偉業を為し遂げた。大政奉還という万国の歴史にも例をみない大決断が、列強の植民地になる寸前だった日本を救い、アジア唯一の先進国として世界史の舞台に送り込んだことは特筆される。
幕末においては、国際的な力関係の中で、嫌々ながらも開国していく幕府に対し、尊皇攘夷のエネルギーが漲った。開国派は幕府をサポートする佐幕派とみなされ、テロリズムの対象となる。生麦事件に代表される殺傷事件も頻発した。「日本こそが文明で周りは野蛮」という小中華思想が外国を排斥するナショナリズムへと変質していく。そういう中で、坂本龍馬を筆頭とする有為の志士たちもテロリズムの中に倒れた。
もっとも、そうした「鎖国攘夷」の流れが明治維新を成功に導いたわけではない。尊皇攘夷派の筆頭であった薩摩藩自体、薩英戦争以降は外国の力を利用して倒幕する方向へと大きく舵を切っていく。
結局「攘夷」とは、幕府というアンシャンレジーム(=旧体制)を打破するための政治的スローガンだった。開国した後で攘夷に戻ることは不可能だったし、吉田松陰でさえ、一度締結した外国との条約を反故にすることは信義にもとると考えていた。また西郷隆盛は、「攘夷は倒幕の口実」と割り切り、むしろ世界各国と交際して、西洋の長所を取り入れ、日本の短所を補うべきと確信していた。
史実をみれば、幕府が崩壊し、維新が為し遂げられると、「鎖国攘夷論」は「開国攘夷論」へと昇華していく。明治の改革者たちは、諸外国の秩序そのものを否定する鎖国攘夷論を脱するだけの叡智を持っていた。
彼らは、国際秩序に属しているという現実を自覚的に受け容れた上で、日本の実力を向上させ、国際的地位を早急に欧米諸国並みにまで上昇させることを「攘夷」とみなしたのだ。
例えば岩倉具視は、王政復古の大号令を発した直後に、「自今朝廷の欧米諸国を待遇する、漢土諸国と同札なるべし」とし、欧米を「夷(野蛮)」とみなさない方針を明らかにした。日本の先達たちは、単純で軽薄な「外資ハゲタカ論」に堕していなかった。日本国の将来を憂えていた本物の硬骨漢たちだった。
硬骨漢たちの思想は、五箇条の御誓文に凝縮された。外の世界と新しい時代に合わなくなった古い体制を、維
新たにするために発布された御誓文は、「旧来ノ陋習破リ、天地ノ公道ニ基クベシ」と明言している。
維新は成った。旧来の陋習は破られた。これは、一世紀以上も前の話である。
それなのに、この現代において、浅はかな「外資ハゲタカ論」程度の論理に溺れている人々がいかに多いことか。「市場原理主義」「米国資本主義」などというレッテルをベタベタと張り付けて溜飲を下げている「現代版・鎖国攘夷論者」たちの魂は一四〇年前からまったく進歩していない。
いま日本では、アンシャンレジームが大反撃に転じ、維新を挫折させようとしている。時代が「変化」を求めているのに、「変化」を求めないアンシャンレジームがもたらしてくれる「安定」という名の「格差の固定化」に迎合しよう
としている。ライブドア事件を契機に、盛り上がった王政復古運動は、鎖国攘夷主義へと日本を導き、将来を危うくしてしまうかもしれない。
藤原正彦氏が著した『国家の品格』が一〇〇万部を超えるベストセラーになったようだ。しかし藤原氏は、自らが擁護している勢力が、ライブドア以上に「品格」がない面々であることに気が付いていない。
このままでは、殊更に精神論を唱え、何ら具体的な対策を打ち出なかった幕末の幕臣たちのように、知らず知らずのうちに日本を三流国に落とさしむる結果になるだろう。鎖国攘夷論に「品格」などないのである。
(追伸)「週刊!木村剛」は、金融経済月刊誌「フィナンシャルジャパン」(年間購読はココ)および「フジサンケイビジネスアイ」(購読希望はココ)とメディア・コラボレーションしています。本日の記事は5月8日にフジサンケイビジネスアイに掲載されたものです。
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2006 05 21 [13. フィナンシャル ジャパン] | 固定リンク
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率直な感想は 『困った年寄りが出現してしまったなぁ・・・』です。
ちなみに パオロ・マッツァリーノ氏もスタンダード反社会学講座で藤原氏の『国家の品格』について12行ほど 感想を述べているので 以下抜粋 引用。
そういえば、『国家の品格』を読みました。なんか嫌っているかたも多いようですけど、いいこともいってるんですよ。たとえば、出発点となる前提が間違っていれば、どんなに正しい論理を積み重ねても間違いのままだ、とか。まあ... 続きを読む
受信 2006/05/23 23:43:22















