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2006.05.28
[フィナンシャル ジャパン] 有限会社は無くならない?!
「フィナンシャル ジャパン」6月号掲載 --- 会社法がわかれば商売がわかる! 野村修也(中央大学法科大学院教授、森・濱田松本法律事務所客員弁護士)
新会社法の解説本を見ていると、有限会社が無くなって、株式会社に一本化されると書かれている。
間違いではないが、そのせいだろうか、会社法が施行される今年の五月一日以降は、この世の中から有限会社が一気に姿を消すと思い込んでいる人もいて、いささか厄介である。
現在、有限会社は、全国で一〇〇万社近く存在している。育った時代にもよるが、社会人の中には、日本で一番多い会社形態は今でも株式会社だと思い込んでいる人がいるが、小学生に聞けば、それが間違いであることはすぐわかる。平成二年の商法改正によって、株式会社には一〇〇〇万円の最低資本金が必要となったため、有限会社は、いつしか株式会社をしのいで日本一の会社形態になった。
いくら法律といえども、ここまで普及した有限会社を強制的に消滅させるほど乱暴ではない。株式会社に社名を変更するには、看板を塗り替えたり、登記を変更したり、名刺や消耗品の印刷をし直したり、さらには銀行や取引先に連絡したりするなど、かなりの費用と手間がかかるからだ。
確かに、五月一日をもって有限会社「法」は廃止となる。したがって、新規に有限会社を設立することはできないのであるが、既存の有限会社については、今までどおり有限会社を名乗り続けるか、名実ともに株式会社に移行するかの選択が認められる。
では、有限会社の商号を用い続ける会社(これを特例有限会社という)は、どの法律の適用を受けるのか。実は、新会社法の制定と同時に、「会社法の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律」という長ったらしいタイトルの法律が制定されており、その第一章第二節に、特例有限会社に関するルールが規定されている。
そこで、この整備法をつぶさに分析してみると、これまで有限会社であるがゆえに認められていた特典は、ほとんどそのまま維持されていることがわかる。具体的には、同じく社員の有限責任(倒産した場合に会社債権者に迷惑をかける恐れのある制度)が許容されているにもかかわらず、株式会社とは異なり、特例有限会社の場合には決算公告が義務づけられない。この違いは費用面で大きい。また、特例有限会社の場合には、株式会社とは異なり、取締役の任期が法定されていないので、同一人物が取締役であり続ける限り、登録免許税を支払って登記し直す必要がない。
そればかりではない。これまで有限会社であるがゆえに設けられてきた幾つかの制約が、特例有限会社については緩和されている。例えば、社員(出資者)の上限を五〇名とする規定は撤廃されるほか、社債の発行も許容されることになった。
もちろん、株式会社に移行するメリットが無いわけではない。株式会社というブランドが持つ経済効果もさることながら、法的にも、いくつかの注目すべきポイントがある。とりわけ強調したいのは、株主が死亡した場合に、その相続人に対して、相続した株式を売り渡すよう請求できる制度だ(一七四条以下)。相続は譲渡ではないので、いくら株式の譲渡について取締役会の承認を要する旨の定款規定を設けても、放蕩息子への相続を阻止できないというのが従来の制度だった。しかし、新会社法では、相続自体は阻止できないが、相続後に株式の売り渡しを請求できるようにすることで、同族会社の内紛の火種を消し止めることを可能にしたわけである。
要するに、特例有限会社にとどまるか、株式会社に移行するかは、各社が何にメリットを感じるかにかかっているのであるが、会社法施行後も、相当数の有限会社が残ることだけは間違いないだろう。
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2006 05 28 [13. フィナンシャル ジャパン] | 固定リンク
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