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2006.06.27

[木村剛のコラム] 格差問題の核心は中小企業だ!

 先週、ある上場企業の社長にお会いしたとき、「現在の経営課題は、格差問題の是正だ」という言葉を聞いて、思わず身を乗り出して聞き入ってしまった。

 お話を聞くと、売上げが絶好調なので、採用を増やしたいのだが、無意識に採用活動してしまうと、下請けの中小企業から従業員を引き抜くことになりかねないのだという。本社のパート採用の方が、下請けの正社員よりも給料が高く、ステータスが高いからだ。人材の引き抜きが、結果的に下請けの経営を圧迫しかねないという現状に直面して、悩んでいるわけだ。
 「そもそも、こうした給与格差を放置しておいてよいのだろうか。本当は、もう少し下請けに発注する値段を引き上げて、彼らが給与水準を上げられるようにすることによって、こういう問題が生じないようにすべきではないのか」と真摯に語る社長の志の高さに素直に感銘を受けた。
 実は、わが国における最大の格差問題は、中小企業と大企業の間に横たわっている。早急に是正すべき格差は、中小企業と大企業を巡る経営環境の格差の中に見いだすべきだ。
 2004年中の統計で確認してみよう。1000人以上の事業所における現金給与は月527,000円であるのに対し、30人未満の事業所では271,000円にすぎない。大企業の半分だ。
 この背景には、経営環境上の大きな格差がある。重要なことは、中小企業への皺寄せが、下請け構造の中にビルトインされているということだ。下請け企業群が仕事の繁閑の調整弁になっているほか、コスト削減の捻出先となっているため、すべての皺寄せが重畳的に中小企業に覆い被さっていく構造になっている。
 しかも、支払手形のサイトが下請けになればなるほど長くなっていくため、必然的に資金負担も嵩んでいく。資金調達力のある大企業は、無意識のうちに、資金調達力のない中小企業に、コストだけでなく資金調達の皺寄せも行っている。
 そういう状況であるにもかかわらず、中小企業に対して積極的に貸し出している銀行は、いまでも少数派だ。主要な貸出先として機能してきた貸金業者は、グレーゾーン金利の撤廃を受けて、経営困難になっていくだろうから、中小企業の資金繰り環境はさらに難しくなっていくだろう。
 このため皮肉なことに、末端の中小企業は、生き残っていくために、大企業以上のROEを維持し続けなければサバイバルできないという宿命を背負っている。だから、固定費の代表格である給与水準はなかなか上げられない。日本経済が解決すべき「格差」の本丸は、この構造問題なのである。
 日本の99.7%は中小企業。より正確に言えば、従業員20人以下の企業が87.1%を占めている。いわば9割を占める末端の中小企業が、大企業による様々な皺寄せの緩衝材になることによって、日本経済の基盤は成り立っている。
 ところが、格差論を唱える人々を冷静に眺めると、じつは、大企業や官庁や大学という恵まれた環境にいらっしゃるケースが多く、「良い大学=良い大企業=良い人生」という画一的な価値観で語っている場合が少なくない。道理で、中小企業の実態を直視しない空論が横行するわけである。

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