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2006.09.02
[フィナンシャル i] マネーサプライ低迷の背景
一般に、景気が良ければ株価は上昇し、債券価格は下落(金利は上昇)する。つまり通常の景気循環のなかで、債券相場と株式相場には逆相関の関係がある。
ところが、今夏の金融市場の特徴として、債券と株式が共に堅調していることを指摘出来る。
(BNPパリバ証券 証券投資調査部長 チーフストラテジスト 島本幸治)
その直接的な背景としては、米国でインフレ懸念が大きく後退した事を挙げられる。特に8月15日に発表された7月コアPPI(生産者物価指数)が前月比▲0.3%と、市場のプラス予測に反して、9ヶ月振りのマイナスになったのが効いた。
米国PPIのなかでインフレ安定が目立っているのは、自動車や電気機器など耐久消費財である。また、同様の傾向が世界各国で顕在化している。
世界経済は未だにグローバル化や市場化による恩恵を享受しており、最終インフレは安定している。こうしたなか、構造的とも言えるディスインフレが出発点となり、長期金利の安定を通じて、資本市場全体をサポートする状況にある。そして現在も、ディスインフレのトレンドに転機が訪れるどころか、一段と煮詰まって行く展開にある。
日本ではインフレ指標のみならず、マネーサプライまで伸び悩んでいる。7月のマネーサプライは、代表的指標であるM2+CD(現金、要求払い預金、譲渡性預金など)が前年同月比+0.5%と、13年振りの低い伸びに留まった。もっとも、7月の貸出資金吸収動向を見ると、民間銀行の貸出残高が前年比+2.2%と、10年振りの高い伸びを記録している。
M&A(企業の合併・買収)など企業の資金需要は高まっており、もはや信用収縮は読み取れない。貸出が増加基調を強めるなかでマネーサプライは低迷するといった、一見あべこべの現象は何故発生しているのか。
マネーサプライの低迷は「流動性の罠」から開放される過程で発生している過渡的現象と見て良いだろう。M2+CDの伸び率が低下している背景には、経済がデフレから脱却したことで、預金から実物投資やM2+CD外の金融商品へとマネーがシフトしていることが影響している。
特に企業は、増益率の低下がキャッシュフローの伸びを制約するなかで、設備投資を積極化させている。国際競争の激化や「資本の論理」の強化が、余剰資金の滞留を許容しなくなったと言っても良い。
さらに最近では、量的緩和解除やゼロ金利解除に伴う預金から金銭信託や投資信託などへの資金シフトもM2+CDの低迷に拍車をかけている。その結果、広義流動性の伸び率はM2+CDの伸び率を大幅に上回って推移している。
つまり、現在の「マネーサプライが伸び悩むなかでの貸出増加」という現象は、「長期金利が安定するなかでの株価上昇」という現象と関連する面がある。グローバル化の進展により最終インフレは安定しており、マネーの膨張が加速する気配もない。
他方、国際競争の激化や株主からのプレッシャーが企業の積極経営を促しており、資金需要の増大や株価への好影響をもたらしている。
マネーサプライの低迷も、現在の株高・債券高と整合的と言える。
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島本 幸治 (しまもとこうじ) BNPパリバ証券会社 投資調査部長 チーフストラテジスト
1990年 東京大学卒業後、日本興業銀行に入行。91年 同行証券投資室調査班に配属。96年、同行調査部経済調査班に配属。シニアエコノミストとして日本のマクロ経済調査を担当、2000年3月より現職。週刊エコノミスト 04年(04年10月)アナリスト・エコノミスト ランキング債券ストラテジストの部 第1位、日経公社債情報 05年(05年3月)債券アナリスト・エコノミスト ランキング債券アナリストの部 第2位(2年連続)。
(追伸)「週刊!木村剛」は、金融経済月刊誌「フィナンシャルジャパン」(年間購読はココ)および「フジサンケイビジネスアイ」(購読希望はココ)とメディア・コラボレーションしています。本日の記事は8月28日にフジサンケイビジネスアイに掲載されたものです。
2006 09 02 [14. フィナンシャルi ] | 固定リンク
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