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2006.09.23

[フィナンシャルi] 「金融CSR」と「CSR金融」

 「金融CSR」と「CSR金融」。
 これは単なる語呂合わせではなく、最近のわが国における金融機関のCSR(企業の社会的責任)にかかわる状況を表している。
(ニッセイ基礎研究所 上席主任研究員 川村雅彦)

 すなわち、「金融CSR」とは金融機関が自ら行うCSR経営を意味し、「CSR金融」とはCSRを促進するために金融商品・サービスを金融機関が提供することを意味する。

 日本のCSR活動は環境から入った、といっていい。かつて環境問題が企業の経営課題として議論され始めた頃、金融機関は環境問題から最も遠い存在であると、自他共に認識していた。それは金融機関がCO2や産業廃棄物、有害物質など環境負荷の直接的な排出量は少なく、オフィスの紙・ごみ・電気くらいだと考えられたからである。
 しかし、環境問題に限らず、金融機関は経済・社会の血流とも言えるカネを仲介することにより、経済・社会をあるべき姿へ誘導できる可能性をもつことが次第に認識されるようになってきた。それゆえ、日本の先進的な金融機関は環境問題だけでなく社会的課題への係りを意識した行動を始めたのである。
 欧米、特に欧州の金融機関では積極的かつ先進的な取組が行われており、「持続可能な社会の実現のために、金融機関は何ができるのか?」という問題意識と期待が醸成されている。
 2003年には欧米の金融機関を中心に「赤道原則」が採択されたが、これは一定規模以上のプロジェクト・ファイナンスを行う際に、社会面・環境面の影響評価を行い、終了後もモニタリングや是正措置を行うことを金融機関同士で合意した自主協定である。現在では本邦銀行も数行が採択している。
 この背景には、地球の有限性や貧困問題を強く認識した国際機関やNPOなどによる世界的な地球社会の持続可能性への取組の強化・拡大がある。特に、持続可能な社会に向けたUNEP・FI(国連環境計画・金融イニシアティブ)が1992年に開始されたことの影響が大きいといわれている。
 最近では、本年4月の国連のアナン事務総長のもと、UNEP・FIとグローバル・コンパクト(人権・労働・環境・汚職防止の原則)が「責任ある投資の原則」を発表した。これにも本邦金融機関6社が署名した。
 
 一方、わが国の金融機関ではバブル崩壊後の不良債権処理が一段落したことにより、新しい事業展開のひとつとして、環境やCSRをキーワードとする金融商品や金融サービスの開発と顧客開拓を開始したのである。
 しかし、現状では金融CSRとCSR金融が混同されており、例えば投資信託の一種であるSRI(社会的責任投資)や環境配慮型金融商品の開発・販売をもって「金融CSR」の実践と理解するところがある。
 それはあくまで「CSR金融=金融ビジネス」であり、金融機関自身のリスク管理(内部統制を含む)やステークホルダー価値の向上、さらに労働・人権や少子高齢化問題などの社会的課題を本業プロセスにおいてどう解決するかという「金融CSR」とは異なるものである。
 それゆえ、今後のわが国の金融機関が両者をバランスよく実践することに期待したい。

責任ある投資の原則(Principles for Responsible Investment)の要旨
1.環境・社会・ガバナンスを投資分析や意思決定に組み込む。
2.環境・社会・ガバナンスについて株主所有の方針や取組に組み込む。
3.投資先の環境・社会・ガバナンスについて適切な開示を求める。
4.本原則を資産運用業界が受け入れ、実践するよう働きかける。
5.本原則が効果的に実践されるよう共に協力する。
6.本原則に関する活動やその進捗について報告する。 

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川村雅彦(かわむら・まさひこ)
1976年九州大学大学院修士課程修了(土木系)。三井海洋開発でプロジェクト・マネジメントに従事した後、88年にニッセイ基礎研究所入社。都市問題、環境経営、環境格付、CSR、SRIを中心に調査研究に従事。


(追伸)「週刊!木村剛」は、金融経済月刊誌「フィナンシャルジャパン」(年間購読はココ)および「フジサンケイビジネスアイ」(購読希望はココ)とメディア・コラボレーションしています。本日の記事は9月18日にフジサンケイビジネスアイに掲載されたものです。

2006 09 23 [14. フィナンシャルi ] | 固定リンク

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