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2006.10.29
[フィナンシャル ジャパン] 美しいものを見る目を養う
「フィナンシャル ジャパン」11月号掲載
【書店人の一冊】
『茶と美』
著者:柳宗悦 出版社:講談社(学術文庫)
定価:1313円(税込)
茶道の世界で最高峰とされる「喜左衛門井戸(きざえもんいど)」というお茶碗があるのだそうで、しかしこのお茶碗は名のある陶芸家の作品ではなく、高麗の無名の陶工が、一般向けの量産品として作った安物の飯茶碗なのだそうです。
しかしこの安手の茶碗に、かつての茶人は究極の美を見いだしました。
本書の著者、柳宗悦も、この喜左衛門井戸なるお茶碗がいかに無造作に作られ、いかに平凡であるかを強く説いています。
「しかし、そこがいい」
そう柳氏は言うのです。作為がない、無意識である。そこには自然があり、自然こそ真の美であると柳氏は言います。
なぜかつての茶人はこの平凡きわまる雑器に美を見いだし得たのか。
それは茶人がこの茶碗を曇りのない目で見たからだと柳氏は言います。雑器だからといって見くびらなかった。ありふれた物の中にある美しさを見逃さなかったからだというのです。
ここまで読んで、柳氏はなんと禅を理解していることだろうと私は思いました。
どこかにある究極の答えを探し求めるのではなく、思考を転換することによって身近なものの中に真理を発見しようとする、いや世界そのものが真理であることに気付こうとする禅の思想と、この安物のお茶碗に対する柳氏の見解は何と似通っていることでしょうか。
美しいものがないのではない。美しいものを見る目がないのだ。普段、私達の目は一体何を見ているのでしょうか。
昨今は禅についての本も多く出されていますが、そういう本よりもかえって本書のほうが禅の本質に近いような気がします。
[書店人 川手啓史 弘栄堂書店吉祥寺店雑誌担当]
2006 10 29 [13. フィナンシャル ジャパン] | 固定リンク
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