« [週刊!スモールビジネス] 日本は魅力がある? | トップページ | [週刊!尾花広報部長] ストレスためていない? »

2007.06.24

[フィナンシャル ジャパン] MBOは常に悪か?

「フィナンシャル ジャパン」2007年7月号掲載 
【会社法がわかれば商売がわかる!】 (中央大学法科大学院教授 野村 修也)

 マネジメント・バイアウト(MBO)が新聞紙上を賑わしている。MBOとは、M&A(企業の合併・買収)の一手段で、経営者自身が自社の株式を買い占める手法を指す。通常は、経営者の資金だけでは不可能なため、投資ファンドとともに特定目的会社(SPC)を設立し、銀行からの融資金を交えて、SPCが対象会社の株式を公開買付する方法が取られる。経営者の側に、事業承継・事業再生・買収防衛などの思惑がある場合もあれば、投資ファンドがその敵対的色彩を薄めるために経営陣を抱え込むケースもある。
 会社法との関係では、公開買付に応じなかった株主から強制的に株式を取得する方法として、全部取得条項付種類株式(108条1項7号・2項7号、171条以下)が活用され始めた点が注目される。すなわち、公開買付の結果、経営陣側が議決権の3分の2以上にあたる株式を買い占めることができれば、既存の株式を定款変更によって全部取得条項付種類株式に変更した上で(111条2項)、株主総会の決議により、金銭等を対価として全部取得をすることができるわけである。
 M&Aの仲介会社であるレコフの調べでは、ここ数年MBOは急増しており、2006年は件数にして80件、金額ベースでは7000億円を超えたとのことである。中でも注目されるのは、上場企業が非公開化を図るゴーイング・プライベート型のMBOで、すかいらーく、東芝セラミックス、キューサイなど名だたる企業が相次いで実施に踏み切っている。
 そうした中、レックス・ホールディングスの経営陣らが行ったMBOが波紋を広げている。レックス・ホールディングスといえば、焼き肉チェーンの牛角や、コンビニエンスストアのエーエム・ピーエム(am/pm)などを傘下に納めた持ち株会社として有名である。
 事の発端は、昨年8月、レックス・ホールディングスの社長が業績悪化を理由に、06年12月期決算を下方修正したことにあった。その結果、株価が急落したため、11月に実施されたMBOでは、その買取価格が低く抑えられた格好になった。そこで、一部の株主が、価格に不満があるとして公開買付に応じずにいたところ、最終的には、全部取得条項付種類株式に換えられることにより、公開買付価格と同額で締め出される結果となった。そこで、これを不服として訴えが提起されたというわけである。
 MBOの場合には、買収される側の経営者が買収側に回ることから、本来ならば株主の利益のために少しでも高く売るよう尽力すべき経営者が、安く買い叩こうとする側に加担する危険性があると指摘されている。最近のマスコミは、この利益相反による安値買取の問題をことさらに強調し、レックス・ホールディングスのケースをその弊害が現れた典型的事例として断罪する。確かに、MBOには構造的な問題がある。しかし、MBOを十把ひとからげに悪者扱いする論調は、いささか乱暴なのではないだろうか。例えば、会社が倒産の危機に瀕していることを知った経営者が、事業再生ファンドと手を組んで、会社をMBOによって救済する場合などは、直近の株価との比較だけでは買取価格の適正さを判断するのは難しいだろう。

2007 06 24 [13. フィナンシャル ジャパン] | 固定リンク

トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/15160/15512989

この記事へのトラックバック一覧です: [フィナンシャル ジャパン] MBOは常に悪か?:

» 関西汽船フェリー株主優待券で快適・豪華・便利な船の旅へ [関西汽船 株主優待で関西汽船フェリー から]
関西汽船フェリー株主優待券で快適・豪華・便利な船の旅へ 関西汽船フェリーで阪神・四国・中九州の各都市へ直行 便利に予約、安心乗船の関西汽船 続きを読む

受信 2007/06/24 13:13:19

» IPOやM [世界で一番簡単なIPO入門ブログ から]
子供に株式を相続させることだけが事業承継ではありません。M 続きを読む

受信 2007/07/03 12:25:15