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2007.06.18
[ゴーログ] コムスン:介護保険の問題を考える
皆さん、こんにちは。木村剛です。「keep on your easy pace」さんが、「コムスンの悲鳴(厚生労働省の横暴)」と題して、長文のブログを書いていらっしゃいますので、是非、訪ねてみていただきたいと思います。
私自身は、介護保険制度のプロフェッショナルではないので、「keep on your easy pace」さんの主張が完全に正しいということを保証できるだけの知見を持ち合わせていませんが、耳を傾けるべき論点がいくつもあるように思えます。
以下に、傾聴すべき論点を示しますので、ご興味のある方は、「keep on your easy pace」さんのブログの全文を読んでいただきたいと思います(読みやすくするために、ほんの僅かですが編集を施した部分があります)。
論点1:サービス提供責任者の設置義務
介護事業法では、事業申請する際に満たすべき要件として・・・サービス提供責任者(通称“サー提”)を事業の規模に応じて1人以上専任で置くこと(国家資格です)を定めています。 1人以上というのは、月間の延べサービス提供時間が450時間を超えるごとに1名追加、もしくは訪問介護員等の数が10人以上の場合は10名ごとに1名追加しなければならないわけです。 介護業界は非常に大変で離職率が高いので、サービス提供責任者(サー提)が退職することも頻繁に起こります。そうすると、当然事業所は継続できませんので、近隣の事業所と統廃合をしなければなりません。・・・ヘタをすると、サービス提供責任者が、介護業界の強いストレスから突然退職することもざらにあります。(突然、事業所に来なくなります)そんな時、ルール上はその日はサー提がいないからそのまま事業をした場合は“違法!不正!”と言われることになってしまいますので、サービスをしないか、というと当然利用者は待っています。利用者が待っているので、サービスに行ってしまうのが介護業界の人の性です。そして、サー提を採用できるまでの間、その事業所は不正を続けることになります。
論点2:事業所間でのヘルパーのやり取り
人が足らないときに隣町の事業所に人を借りたい、ということをしてはいけないことになっています。・・・しかし、ヘルパーも人間ですから、体調不良や子供が熱を出した、ということで急に休むこともあります。そんな時、同じ事業所に空いているヘルパーがいれば良いのですが、忙しい事業所だと当然空きはいません。 しかし、利用者はヘルパーが来るのを待っているわけです。当然、事業所としては利用者の所に人を出さないわけにはいきませんから、隣町の事業所から人を借ります。・・・しかし、これを行うと“不正な水増し請求だ!”と言われてしまいます。実際は利用者の所にサービスに行っているにも関わらず。・・・現場は利用者に対してサービスを行い、利用者は満足しているにも関わらず、国の制度のよって“不正請求”と言われ、返還を命じられます。
論点3:介護保険改正による認定の厳格化
利用者は介護サービスを受けるに当たって、自治体の認定を受ける必要があります。その認定は、利用者の状況によって、要介護度1~5によってランク付けされます。・・・ 問題は、昨年(2006年4月)施行の介護保険の法改正。それまで事実上要介護度1~5だったのが、要支援1~2と要介護1~5に分かれました。・・・実態は事実上の認定の厳格化。それまで、要介護1だった人も、認定を受けたら要支援に格下げ、という方が多かったようです。・・・当然、利用者の中には今まで受けられていたサービスが受けられなくなります。 “昨日まで掃除をしてくれてたのに、もうしてくれないのかい?” “この間まで2時間いてくれたのに、今日は1時間で帰ってしまうのかい?” 高齢者にこうせがまれれば、心優しいヘルパーさんは掃除をしてしまうでしょう。もちろん、これを請求すれば“水増し不正請求”の烙印を押されてしまいます。微妙なのが、認定を受けている間。認定が出るまでに、2週間~1ヶ月かかることはざらにあるのですが、その間も利用者は当然待っています。認定を出す人の事前情報で、見切りでサービスを開始することもざらにありますが、問題なのは認定が予想よりも下の介護度で出てきた場合。当然、これも“不正請求”の一つにみなされてしまいます。実際は利用者の依頼を受けてサービスしているのに、制度変更の都合(財源の都合)で補助が出ない、こんな事例は山のようにあるようです。
論点4:介護計画書とサービスの一致
介護サービスを始まる前に、ケア・マネージャという資格を持った人が、1ヶ月のケアプラン、いわゆる介護計画書を作成します。介護計画書は、利用者、利用者の家族との話し合いで、その利用者に必要な介護サービスは何か、ということを計画します。実際のサービスはその計画に基づいて行われます。 そしてその月、計画通りにサービスが行われれば良いのですが、かなりの頻度で計画が変わります。高齢者の方が入院してしまった、熱を出した、家族の方が戻れずに時間が延長になってしまった、など様々な理由があります。その際、その変更があったことをケア・マネージャに連絡して、計画に変更があったことを伝えなければなりません。 そして、ケア・マネージャ側の計画と、実際に行ったサービスを照合して、両者が合致している場合のみ介護給付(お金を貰える)がなされます。・・・ケア・マネージャは、だいたい40名くらい受け持ちを持っているので、予定の変更を的確に把握するのがなかなか大変です。 中には、連絡ミスや伝達ミスで、ケアプランと実際のサービス(内容や時間)が食い違うことが多々あります。食い違ったまま介護保険の給付申請を行うと、当然給付はなされず、実際サービスをしているにも関わらず、事業者はお金を貰えません。・・・これを解消するために、翌月にケア・マネージャと実際のサービス時間を合わせて請求するなどを行いますが、確認しようにも1ヶ月以上前の話だと、利用者も覚えておらず(特に高齢者ですから・・・)事業者が泣き寝入りするケースも多々あります。・・・“不正給付”で返還命令が下るのは、ケアの変更で月の利用時間が一定時間をオーバーしてしまった場合。・・・度重なるサービス延長で国の定める利用限度を超えてしまい、さらに超えたことに気がつかずに申請すると、不正給付で返還を求められる、なんてことになるようです。
以上の現実認識を基に、「keep on your easy pace」さんは、「この様に、実際サービスを行っているにも関わらず、介護保険制度の穴から“不正”とみなされているケースがほとんどです」と結論付けて、コムスンの事例を以下のように解説しています。皆さんのご意見をいただけると幸いです。
新聞などで、コムスンの水増し請求例として
1)介護保険の対象外の散歩への付き添いを「身体介助」とした
2)サービスの時間を実際より長くした
3)雇用実態のないヘルパーを職員数に含めて申請していた
等が報じられていますが、現場を見る限り、これらの大半が不正などではなく、制度上の穴から出てきている問題だと思います。
1)に関しては、恐らくヘルパーがサービスに行った時間・内容を加味せずに、実際行った内容をそのまま申請してしまったのではないでしょうか。(利用者の要介護度と自分の提供するサービスを比較して、どれが保険の対象になるか、ならないかを理解できるベテランヘルパーはそう多くはありません) 2)は、実際は長かったのではないかと思います。恐らく、ケア・マネージャとの連絡ミスで、サービス延長が伝わっていなかった可能性があります。その場合、ケア・マネージャのプランを正とされますので、サービスを行っているにも関わらず、お金をもらえないケースが多発しています。 3)は、申請が間に合っていなかったのでしょう。ヘルパーの出入り(入職・退職)は非常に早く、1週間で去ってしまう人もざらにいます。(業界全体で年20%以上。コムスンはもっと多いのではないかと推測します)それらの人員の変更都度に申請をしなければならないのですが、現場の変更をつかんで、統括部で申請をするのがなかなか追いつかないのが実態です。当然、ルールに該当しない分は、コムスンは自腹で持つべきであり、返金を行います。しかし、それを“不正”と言って、あたかも組織ぐるみで悪意があったかのように報じるのは誤りだと思います。・・・ 今回の不正請求で発覚した額を見ると、コムスンが・・・計2億260万円・・・ と報道されています。コムスンの昨年度の売り上げは600億円ですので、600億中の2億(0.3%)というのは、不正で水増しした、というより、連絡ミス・制度の理解不足・退職者の補充が間に合わない等の原因で発生した、と考えたほうが妥当な数字だと思います。・・・ 一番の問題は、こういった介護保険法の定めた内容(保険が有効なサービスと利用者の状況、その他の制約事項)を日本全国20万人以上いるヘルパー(コムスンは2万人)が覚えられるわけがない、ということ。(しかも、サービス内容によっては、自治体ごとに基準が異なります)ホームヘルパーの大半が、専業ではなく、主婦・主夫(男性はかなり少ない)の兼業だったり、自宅の両親を介護するかたわら行っていたりします。 彼らは、当然ある程度の介護の知識はあっても、法の細かい所まで知らないことが多いのです。事業者としては法にのっとるのは当然のことですが、それを事業者がカバーできるような制度ではなく、各ヘルパーや事業所(センター)に依存せざるを得ない制度になっている介護事業制度設計の欠陥が一番の問題だと、私は思います。
ポッドキャスティング-木村 剛が斬る!
「コムスン報道に騙されるな 」 はこちらからご覧いただけます。
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