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2007.06.02

[フィナンシャル ジャパン] 「所有」から「利用」へ注目される新しい不動産の収益モデル

フィナンシャル ジャパン』 2007年6月号掲載 
「ミクロが変える経済」 経済ジャーナリスト 財部誠一氏

 六本木の防衛庁跡地の再開発プロジェクトである「東京ミッドタウン」がオープンした。「六本木ヒルズみたいなのがまたできたのか」程度の認識しかない人もいるかもしれない。
 だが「東京ミッドタウン」の推進役、三井不動産に焦点をあててみると、このプロジェクトが、じつは特別な意味をもっていることがわかってくる。昔から三井不動産は、三菱地所と比較されることが多かった。東京・丸の内の一等地を独占所有する三菱地所は「持てる経営」の代表格。一方、三井不動産は「持たざる経営」といわれた。ビジネスモデルの違いといえなくもないが、「土地持ち」で裕福な三菱地所に比べると、優良資産の少ない三井不動産は「持たざる経営」をするよりほかに選択肢がなかったということである。
 もっとも「持たざる経営」といっても、それは三菱地所との比較であり、三井不動産もバブル時代には相当な不動産を所有するにいたっており、バブル崩壊の地価暴落は、三井不動産の経営を直撃した。2003年までの10年間で三井不動産はなんと1兆2000億円もの償却をせざるをえなくなり、その間には6年連続の赤字決算に追い込まれた。
 いつ経営破たんしてもおかしくないというギリギリの状況下で、社長に抜擢されたのが岩沙弘道氏だった。「最後の社長になるわけにはいかない」
 1998年の社長就任時、それがいかに切羽詰まった状況であったかを、岩沙社長はそんな言葉でふりかえった。ミッドタウンの竣工は岩沙社長にとっては、まさに感無量だったに違いない。テレビキャスターなどは東京ミッドタウンのオープンを指して「これはもうミニバブルか」などと話していたが、それはあまりにも無知にすぎる。ただの金余りで、ただ土地を買い集め、地上げした80年代の不動産バブルと、東京の再開発ビジネスを同じ土俵で論じるのは、なさけないにもほどがある。
 ことに東京ミッドタウンの場合は、3700億円の総工費のうち三井不動産の出資額は40%で、残りは全国共済農業協同組合連合会や生命保険会社などの機関投資家が出資をしているのだ。地上げと土地転がしで売買益を稼いだバブル時代とは対照的に、いまは不動産にいかに付加価値をつけるかが勝負になっている。「所有」から「利用」へと、土地に対する考え方そのものが変わっているのだ。
 そこに金融の手法を取り込んだのが三井不動産だ。不動産事業者が全部自分で土地を所有すれば、家賃はすべて手に入る。だが、それだけ巨額の自己資金が必要になる。しかし三井不動産は、ファンドを組むことで、自己資金の負担を減らした。もちろんそのぶん家賃も減るが、開発やテナントの募集、ビルのメンテナンスといった手数料収入で収益を稼ぎ出す新しいビジネスモデルを創出した。
 ファンドで投資家から資金を集めて、不動産の付加価値を高める手法は、まず汐留の再開発に始まり、ミッドタウンで花開いた。この収益モデルが今後、どうなっていくのか注目される。「所有」から「利用」へと大きく変わった不動産のあり方。東京ミッドタウンはその象徴だ。しかも敷地の半分近くが緑地である。いいモデルだ。

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