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2007.08.19

[フィナンシャル ジャパン] いま投資するなら・・・南アフリカ

 ≪フィナンシャル ジャパン 8月号  世界投資 傾向と対策 PART4 いま投資するならこの新興4カ国≫


労働力と消費が急増
資源豊かな「アフリカの盟主」 

DATA―人口:約4728万人、面積:約122万km² (日本の約3.2倍の広さ)、
首都:プレトリア、通貨:ランド (1ランド=約16.62円 2007年6月8日現在)

略奪と対立の歴史

 アフリカ大陸最南端に位置し、世界の5大洋に数えられる太平洋と大西洋に面した南アフリカ(以下、南ア)の歴史は、略奪と対立に彩られている。
 1488年にポルトガル人の航海者バーソローミュー・ディアスが到達した岬は、後に「喜望峰」と名づけられた。この地は航海上の拠点として着目され、1652年にオランダ人が入植、ケープ植民地を建設。次第にボーア人と呼
ばれる新住民らが原住民と対立を強めた。
 それ以降も、ヨーロッパ諸国から移民が続き、18世紀には、金やダイヤモンドなどの鉱脈を狙ったイギリスが進出、イギリス人とボーア人の対立が激化した。2度にわたる戦争に発展したが、結局、イギリスが勝利した。
 1910年には、大英帝国内の自治領「南アフリカ連邦」として独立。アフリカーナ(ボーア人)が政治の中枢を掌握し、人種差別法をはじめとした白人優遇制度が次々に導入された。48年には、「アパルトヘイト政策(人種隔離
政策)」を打ち出した国民党が選挙に勝利。61年にはイギリス連邦から脱退し、「南アフリカ共和国」となるも、人種差別政策は続いた。その後、民主化の動きが進み、91年にはアパルトヘイト関連法が廃止、94年には全人種参加の総選挙が行われ、ネルソン・マンデラ氏が大統領に就任、国連にも復帰した。人種平等などを柱とした新憲法が97年に発効された。2000年の九州・沖縄サミット以降のG8に毎年参加しており、近年、国際的に政治・経済ともに注目を集めている。

豊富に埋蔵するレアメタル 

 ヨーロッパ諸国が進出した理由にもなったように、南アは資源が実に豊富だ。石油の産出はないものの、金は世界最大の埋蔵量と生産量を誇り、ダイヤモンドや、工場需要の高いプラチナなどの希少鉱物資源、石炭やウラン、鉄鉱石なども産出する。
 国際協力銀行(JBIC)国際金融第2部で中東・アフリカを担当する小川和典課長は、こうしたレアメタルは、石油など産出国が多い資源と違い、世界的に偏在していることを指摘し、「企業が南アフリカへ進出したり、投資した
りするインセンティブといってよい」という。
 たとえば航空機や液晶、燃料電池などの製造に欠かせない「フェロクロム」、ジェットエンジンやロケットの建造に用いる「フェロバナジウム」「五酸化バナジウム」というレアメタルがあるが、日本はこれらの輸入の半分以上を南アに頼っている。

海外企業が進出、金融業が発達

 企業の進出も盛んで、ダイムラー・クライスラーやフォルクスワーゲン、トヨタ自動車や日産自動車が工場を建設、輸出の拠点としている。日本からは、自動車産業だけでなく、大手商社も軒並み進出。今年も、住友商事が、鉄鉱石などを生産するアソマン社へ資本参加している。
 海外企業が進出する理由はいくつかある。資源が豊富であることや、自国内よりも労働力が安価に獲得できること。そして、南アがEUと自由貿易協定を結んでいることから、非課税で輸出できるという有利な条件を備えているからだ。また、小川氏は「税制など、政府の優遇政策も進出の要因」と分析する。
 産業構造は、自動車メーカーの進出が取りざたされることから、製造業が多いように思われがちだが、最近ではそのほかの産業への構造転換が進みつつある。日興コーディアル証券によれば、製造業は全産業の2割程度。商業・飲食業や金融・不動産など、いわゆる第3次産業がおよそ7割にも上る。特に現在は消費需要が堅調な
ことから、ホテルや飲食業が良好。携帯電話の普及も急速で、通信業も好調だ。
 意外に思われるかもしれないが、金融業界は進んでいる。ヨハネスブルク証券取引所(現JSE)は1887年に設立され、2002年にはロンドン証券取引所と互換性のあるシステムを導入。今や上場企業の数は約390社、時価総額も60兆円で、規模は世界第15位に成長している。そもそも、アパルトヘイト政策をはじめとした人種差別政策の歴史があるものの、差別政策を行っていた白人社会は、いわば先進国のように発展していたのだ。


アパルトヘイト廃止とBEE政策
労働者の急増で消費も拡大

 消費が堅調なのは、黒人所得が拡大していることが理由といわれる。アパルトヘイトが廃止された後、「ブラック・エコノミック・エンパワーメント(BEE)」と呼ばれる、黒人の経済進出を支援する政策に関連した法整備が進ん
でいる。
 JPモルガン・アセット・マネジメントの小谷聖子シニア・リレーションシップ・マネジャーは、「国民の8割といわれるほどの人たちが政策によって差別され、実質的に経済活動に参加できていなかった。その状況が変わり始めたことはインパクトが大きい。単純に、彼らが働き、収入を得て、消費することだけを考えても、今後の成長は計り知れないものがある」と話す。同社は、「VISTA」と呼ばれる新興国(ベトナム、インドネシア、南ア、トルコ、アルゼンチン)に投資するファンドを販売しているが、ほかにも「JPM・BRICS5・ファンド」というファンドも売り出している。これはいわゆる「BRICs 」の4カ国に「S」、つまり南ア(South Africa)を追加したもので、期待のほどがわかる。
 実際、黒人の所得が伸びて中間層が増え、住宅など高価格の商品を購入するようになったほか、サービス業や小売業なども盛んになってきており、市場としての魅力も増している。

拡大する経済規模
通貨「ランド」が人気

 経済規模も拡大している。実質GDP成長率は、ここ10年をみると、98年に0.5%をつけているものの、05年には
5.1%となるなど堅調に推移。96年に約8億ドルだった直接投資受入額は、05年には約63億ドルと7倍以上に伸びている。外貨準備高も約9億ドル(96年)から、約185億ドル(05年)に急伸している。
 2010年には、サッカーのFIFAワールドカップが行われることから、競技場や空港、これらを結ぶ輸送設備などのインフラ整備が進むため、新規雇用が生み出されるほか、観光収入のアップも期待されている。
 また、政策金利が約9%と高いことから、通貨「ランド」が投資家から注目されている。外為どっとコムは今年6月、外国為替証拠金取引(FX)の取引通貨ペアに「ランド/円」を追加した。また国際金融公社がランド建ての利付き債を発行しているほか、スタンダードチャータード銀行などがランド建ての外貨預金を発売して人気を集めている。

課題も多いが資源・労働力豊富な「アフリカのリーダー」

 このようにみてくると、これからも順調に発展を続けていきそうにも思えるが、もちろんリスクもある。
 たとえば高い失業率。97年の21%以降、その後も20%を超える水準で推移しており、04年は27・8%と、約4人に1人が仕事のない状態だった。ほかにも、同じ黒人の間でも生まれ始めた所得格差の拡大、犯罪の増加、HIVのまん延、ワールドカップ開催準備の遅れなど、懸念される材料は少なくないのだ。
 また、JETROが昨年発表したレポートによると、国内各地で停電が頻発しているという。急速な電力需要の拡大に送電能力が追いついていない証拠で、急激な成長を裏付ける皮肉な格好ともいえるだろう。
 とはいえ、南アが、資源も労働力も豊富な国であることに変わりはない。アフリカ大陸内でもいち早く民主化、先進国並みの経済環境の整備が進んでいる南アは、アフリカ域内のリーダーたる存在なのだ。ひとまず、2010年のワールドカップまでは注目しておきたい国ではある。


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ポッドキャスティング-木村 剛が斬る!
「8月利上げとサブプライム問題」
はこちらからご覧いただけます。

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