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2007.09.23

[フィナンシャル ジャパン] 監査役が会計監査人を選ぶ?

「フィナンシャル ジャパン」 10月号掲載
連載コラム―会社法がわかれば商売がわかる!
(中央大学法科大学院教授 野村 修也氏)

 去る7月21日の日本経済新聞朝刊は、法務省が、会計監査人の選任や報酬の決定に関わる権限を、経営陣から監査役に移すこと等を内容とする会社法の改正案を、来年の通常国会に提案する方針を固めたと報じた。法務省側は、完全なる「誤報」と言っているが、この会計監査人の選任等の部分に立法的課題があることは否定できない事実である。 
 現行法上、会計監査人の最終的な選任は、株主総会において行われることになっており、この点を変える必要はない。問題は、その原案を決定するのは誰かという点にある。
 会計監査人には、取締役から独立した人物が選ばれるべきであるが、選任議案の提案権を取締役会に委ねておく限り、その独立性を確保することは難しい。なぜなら、いくら会計監査人が社会の要請に応えるべくしっかりとした監査をしようとしても、監査対象会社の経営者に自らの人事権を握られていたのでは、及び腰にならざるを
得ないのが実情だからである。
 そこで会社法は、このいわゆる「インセンティブのねじれ」を克服するために、まず監査役(会)設置会社について、取締役が会計監査人の選任に関する議案を株主総会に提出するには監査役(監査役が複数いる場合はその過半数)もしくは監査役会の同意を得る必要があるとした。また、それにとどまらず、監査役(監査役が複数
いる場合にはその過半数)もしくは監査役会は、取締役に対して、計監査人の選任を株主総会の議題とすること、もしくは、特定の者を候補者とする選任議案を株主総会に提出することを要求できることにしている。
 それに対し、委員会設置会社の場合には、会計監査人の選任等に関する議案の内容を取締役会ではなく監査委員会に決定させる仕組みとすることで、会計監査人の独立性を担保することにしている。
 このように、監査役(会)設置会社であるか、委員会設置会社であるかによって、会計監査人の選任議案は、その発議の仕方が異なっていることになる。
 この点で、昨年の12月22日に金融審議会公認会計士制度部会が公表した「公認会計士・監査法人制度の充実・強化について」と題する報告書は、監査役(会)設置会社においても会計監査人の選任議案等の決定権を取締役ではなく監査役(会)に付与すべきではないかとの問題提起を行った。これについては、取締役(委員会設置
会社における監査委員は取締役である)と監査役との職責の違いをどのように整理すべきかといった会社法上の難問が横たわっているものの、改正の要否を含めて検討に値すべき問題提起であることに間違いはない。
 冒頭の新聞報道は、こうした方向で法務省も動き出したと報じているが、筆者の知る限り、法務省が方針を固めたというには、いささか時期尚早のような気がする。この問題を解決するには、そもそも監査役(会)設置会社をど
のようなガバナンス・システムとして発展させていくのか、という根本問題にメスを入れる必要があるからだ。
 会社法は、監査役(会)設置会社と委員会設置会社を限りなく接近させた。それを超えて、明治以来の監査役制度に抜本的改革を施すのかどうか、今後の法務省の動きに注目したい。

2007 09 23 [13. フィナンシャル ジャパン] | 固定リンク

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