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2007.10.14

[フィナンシャル ジャパン] ルーツは「寺子屋」!?

「フィナンシャル ジャパン」 10月号掲載
特集―Made in JAPAN ニッポンの底力 
≪サービス≫ルーツは「寺子屋」!?日本で生まれた世界の学習法

海外の44カ国で266万人が学習

 1974年、ニューヨークに「KUMON」の教室が開かれたのが海外第1号。88年、アメリカ・アラバマ州の小学校で正課として導入され、算数の試験の平均点が20点上がるという驚異の実績を上げ、一気に認知度が高まった。
 日本国内で現在142万人が学んでいる、公文教育研究会の「公文式」は、今では日本を含め45カ国に広がっている。普及の早かった北米や、アジアや南米、欧州、オセアニア、アフリカと海外では約266万人が学んでいる。これだけ広く世界中で受け入れられた教育サービスはほかにはない。
 広く浸透した理由は、「生徒自身の学ぶ意欲を尊重する」という姿勢と、「紙と鉛筆があれば、どこでもできる」という手法があったからだろう。個人別の自学自習というスタイルは、開発途上国でもスムーズに受け入れられた。

親から子への愛情がベース
「自分で考え、答えを出す」

 公文式学習法は、高校の数学教師だった創始者の公文公(くもん・とおる)氏が、息子の毅氏のために算数の教材を手づくりしたのが始まりだ。その目的は「自分で考え、自分の力で解けるようになる」ことだった。
 親子のコミュニケーションから生まれた公文式。それだけに、ベースには「愛」がある。「学ぶことで生きる力を付けてほしい」という親の愛、親心。橋口健グループ広報室長が「勉強さえできればいいというのではなく、将来のために生きる力を身に付けてもらいたいと願っています」というように、子どもに対する視線は、まさに親のそれだ。
 各教室で教えているのは、主に数学、英語、国語(母国語)。教科を問わず、個人のペースに合わせて、“自学自習”で学んでいくのが公文の方式だ。たとえば数学。ゴールは高校3年生で習う「微分・積分」で、それに向かって、生徒がそれぞれ個別に足し算、引き算、掛け算とステップを上げていく。
 教材はやさしいものから難しいものまで、小刻みに分けて作られている。幼児から大学生レベルまで、どこかにその個人に合う教材が必ず見つかる。それは海外でも同じ。学ぶ内容を学年で決めないため、得意な教科はどんどん先に進めるし、不得意な教科はじっくりと時間をかけて学べる。小学3年生が、まだ学校で習っていない、本来4年生で習う内容を学んでいるということもよくある。誰もが自分の能力に合った問題を解き、100点を取り、ステップアップする。「学ぶ喜び」を味わえる仕組みなのだ。国に関係なく、公文の優れている部分はここにある。

「子供優先主義」と
地域に根差した学習法

 教材と学習方法に加え、教える人材の充実に力を注いだことも公文式が発展した理由の一つだ。世界各地に、「子供のために何かをしたい」という人はいる。そういう人たちに対して、「地域の教育者」になるための教材とノウハウを提供してきた。
 こうした人たちに、ただ教室を開設し、運営するための指導をするわけではない。オーナーにも、教え方、子供との接し方を「自ら学ぶ」という姿勢で学習するよう促している。生徒だけでなく、指導者に対しても自学自習を求めるのが、公文式なのだ。
 「日本のやり方」を押し付けるのではなく、その地域の人が、その地域の人のために教育を行うためのノウハウを提供するというスタンスに立っている。
 海外展開が成功した要因として忘れてはいけないのが、利益よりも「教育の普及」をめざした精神にある。途上国では、教育費が払えない家庭は珍しくない。たとえばフィリピン。日本よりもはるかに貧富の格差が大きく、公文に通えるのはまだまだ富裕層に限られる。
 こうした地域では、公文はNGO(非政府組織)とタッグを組み、貧しい地域の子どもたちも学べるような取り組みを行っている。橋口室長は、「会費が払えない方々にも、どうしたら学んでもらえるかを模索しています」と話す。
 教育を通した地域への貢献。それが、公文が世界各地で受け入れられた大きな要因だ。

共通点多い寺子屋と公文式

 なぜ日本で公文式の学習法が生まれたのか。その源流は、寺子屋にある。「自主的に学ぶ」「誰でもできる」「紙と鉛筆があればできる」「学ぶ喜びが味わえる」「学ぶ力が付く」――こうした公文式の特長は寺子屋と共通している。
 西洋では、1700年代に貴族に対する教育や修道院での教育の制度は整備されていたが、庶民層への教育機関はなかった。その時代に、藩校や私塾、寺子屋と、武士階級から庶民までの教育機関がそろっていたのは日本だけだった。
 このためか、日本の識字率は江戸時代末期から明治初期にかけて世界最高レベルだった。明治維新が成功し、近代化が実現したのも、寺子屋が存在し、庶民にも教育が施されていたからだとも言われている。
 橋口室長は「公文と寺子屋は、個人別学習という点で共通点があります。寺子屋が描かれた浮世絵などを見ても、一人ひとりに教材が用意されていて、親近感もあります。また、女性の先生が多いのも共通しています」という。
 寺子屋の時代から読み書きを大事にし、地域に根差した教育方法を培ってきた日本。そういうDNAがあったからこそ、公文式が生まれたのではないだろうか。
 受験や学校の成績では、順位や優劣が付けられる。たしかに、そうすることで子どもたちのモチベーションが上がるなど、効用があることは否めない。
 日本には、昔から競争至上主義ではなく、「勝ち負けを作らない」という風土がある。
 公文式では、進み具合の差はあっても、“負け”がない。一斉学習ではなく、自分のレベルに合わせたスピードで、学習を進めていくことができる。だから、公文式では脱落する子は生まれない。つまり公文式は、「勝ち負けを決めるのではなく、常に昨日の自分よりも今日の自分をよくしていこう」という、「日本らしい」部分が良い方向に現れた結果なのだ。親から子へ。大人から子供へ。次世代を担う子どもたちに対する深い愛情と、可能性を信じる気持ちがあったからこそ、公文式は「KUMON 」となり、世界に広まっていった。
 今日も、世界のどこかの「KUMON 」の教室で、子供たちが自らの意思で勉強し、生きるために必要な力を付けている。

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Summit2007_11_4

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