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2007.10.21

[フィナンシャル ジャパン] 株式分散と事業承継

フィナンシャル ジャパン」11月号掲載
【会社法がわかれば商売がわかる!】 (中央大学法科大学院教授 野村 修也)

 中小企業にとって事業承継ほど頭の痛い問題はない。
 発行する株式のすべてを譲渡制限株式とすることによって株式の分散を防止している会社(会社法では非公開会社という)であっても、相続を原因とする株式の分散だけは防ぎようがない。なぜなら株式の「相続」は「譲渡」ではないので、譲渡制限株式であっても、取締役会の承認を受けることなく「相続」されてしまうからだ。
 他の株主が、亡くなった元株主との間で固い信頼関係を有していたとしても、その相続人との間で同様の関係を結べるとは限らない。相続が時として内紛の火種になるのはそのためだ。そこで他の株主としては、いったん相続された株式を何とか相続人から取り戻せないかを検討することになる。
 相続人の側が相続税の支払資金を賄う等の理由から、相続した株式を現金に換えたいと考えているならば、さほど問題は難しくない。他の株主自身か、あるいは、彼らにとって好都合な第三者のいずれかが購入を申し出れば、一件落着となる可能性が高いからだ。しかし、株式の値段が高額なために、個人では購入できない場合も考えられる。そのときは、会社自身が相続人から自己株式を取得する方法を検討することになる。
 改正前の会社法では、会社が特定の株主から自己株式を取得する場合には、その株主だけを優遇する危険性があることから、株主総会の特別決議を要するとともに、他の株主にも同じ条件で株式を売却できるチャンス(売主追加請求権という)を与えなければならなかった。 
 他方において、株主に出資金を返還してはならないという株式会社の基本原則(資本維持の原則という)があるため、自己株式を取得するための財源は、配当に回すことのできる金額(新しい会社法では、分配可能額という)に限られるといった制約がある。そこで、改正前のように、他の株主に対して無制限に売主追加請求権が与えられるとするならば、相続人から取得できる株式の数が少なくなり、相続税を賄いきれなくなるといった不都合があった。そこで、新しい会社法は、相続人が株主総会で議決権を行使するまでの間は、会社が相続人から自己株式を取得する場合であっても、他の株主に売主追加請求権を保障する必要はないものと定めて(会社法162条)、問題の解決を図った。
 では、相続人が、自己の相続した株式を譲渡したがらない場合はどのように対処すればよいのだろうか。 
 改正前の会社法では、このような場合を想定した効果的な制度は用意されていなかった。それに対し、新しい会社法は、あらかじめ定款で定めておけば、相続人の意に沿わない場合であっても、その相続した株式を会社に対し強制的に売り渡すよう請求できる権利を創設した(会社法174条以下)。すなわち会社は、定款の定めに基づき、株主総会で相続人に対する売渡請求を決議すれば、相続後1年以内である限り、相続人に対して株式の売渡を請求できるわけである。
 この制度は、相続による株式の分散に頭を悩ましていた経営者には朗報であるが、注意すべき点もある。いったん定款を定めると、会社は株主総会で売渡請求を決議できることになるが、相続人はその決議に参加できないため、下手をすると、少数派に会社を乗っ取られる恐れがあるからだ。事業承継対策の難しさは、こんなところにも見え隠れしている。

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071017mag01


ポッドキャスティング-木村 剛が斬る!
今週のテーマ:「資産運用サミットに行こう!」

日本では学校でお金について学ぶ機会というのは無く、
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株式や商品の情報に直接触れることの大切さを知ってもらいたい。

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