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2007.10.06
[フィナンシャル ジャパン] モノづくりの「王様」を目指せ
「フィナンシャル ジャパン」 10月号掲載
[特集 Made in Japan ニッポンの低力鄭力]
モノづくりの「王様」を目指せ キーデバイスが経済を立て直す
「アナログの強みを活かすべきだ」
日本企業のあり方をこう語る江上剛氏は、日本経済を最前線で見続けてきた。これから日本企業がめざすべき方向について聞いた。
日本の製造業はたしかに強いが、最終組み立てメーカーとして生き残っている企業は少ない。
たとえば、トヨタ自動車や本田技研工業の自動車やオートバイは、世界中で売れている。しかし、自動車メーカーのほかに、海外で競争力を発揮しているのは、ソニー、松下電器産業のような電気機器メーカーぐらいだ。この業種にしても、中国や韓国のメーカーに追い上げられている。携帯電話は通信システムの事情から、日本でしか使えない機種しか作られていない状況だ。
最終組み立てメーカーとして勝負できているのが一部の企業だけとすれば、どこで強みを発揮するのがよいのだろうか。
それは、“アナログな感覚〟を活かして作る「部品の製造」だ。
化学メーカーのJ SRは、透過性のある特殊な高分子化合物を作っている。液晶スクリーンに塗って薄膜処理すると、光の透過度が調整されてきれいな色を出せる。これがないと液晶テレビの画質が落ちるので、絶対必要になる。韓国でも、サムスン電子やLG電子のそばにJSRの工場がある。
また村田製作所は、コンデンサ(蓄電器)のシェアで世界一だ。テレビも携帯電話も、村田製作所のコンデンサがないと作れない。
部品を作るのは容易ではない。たとえばパソコンは、意外と簡単に作ることができる。しかしそれは、「部品が揃っている」ことが条件だ。「組み立てるだけ」なら、少し知識があればできるのだ。
部品の製造には、“アナログな感覚〟が不可欠だ。どんなに高度なデジタル製品でも、その開発と製造は地道な作業だし、熟練が必要になる。そこが日本は強い。
JSRの例でいえば、高分子の混合比率などを決める際に、アナログな感覚が必要になる。日本人特有の美的意識が、色合いや風合いを出す上で力を発揮するのだ。
ある電子部品メーカーの技術者が「韓国や中国のメーカーと仕事をしても、モノづくりの楽しみがない」と話していた。
日本の最終組み立てメーカーの技術者は、一緒に考えて、いろいろと工夫して提案する。しかし、韓国や中国のメーカーは、「注文したものを届けてくれればいい」というスタンス。だからその人の目には、「モノづくりが好きじゃ
ない国」として映るし、「一緒に仕事していても楽しみがない」と嘆くことになるのだ。
「これからの日本はキーデバイス国家になるべき」――。早稲田大学大学院経済学研究科の深川由起
子教授はこう主張する。
JSRと村田製作所に共通の強みは、「それがないと最終的に製品が組み立てられない」という部品を押さえていることにある。
ここにヒントがある。
つまり、「日本のキーデバイスがなければ、何もできない」という状況を生み出してしまえばいい。それは、「王様」になれるということだ。
ただ問題がある。
日本がモノづくりに携わる人材を大切にしていないことだ。待遇や研究開発の報奨金の面などには、改善すべき点が大いにある。
今、大学の理工系学部は、学生が集まりにくい状況だ。しかも、好景気になって金融機関が採用を増やしているから、理工系の学生でも「ひと儲けできる」と思って金融機関に就職する始末。なぜそうなってしまうのかは、しっかり分析しなければいけない。
日本はキーデバイス国家をめざすべきだ。そのためには、モノづくりに対して尊敬の念を持つ雰囲気を醸成しなければいけない。その上で、日本の製品を海外に売り込むために、しっかりとした「戦略」を立てなければならない。
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江上 剛 作家
[えがみ・ごう]1954 年兵庫県生まれ。77 年早稲田大学政治経済学部卒業後、第一勧業銀行(現みずほ銀行)入行。銀行員として勤めるかたわら、2002 年『非情銀行』で小説家デビュー。03 年の退行後は、作家・コメンテー
ターとして活躍。数多くの企業を取材している。
2007 10 06 [13. フィナンシャル ジャパン] | 固定リンク
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