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2007.11.25
[フィナンシャル ジャパン] 良識問われる株式併合
「フィナンシャル ジャパン」12月号掲載
【会社法がわかれば商売がわかる!】 (中央大学法科大学院教授 野村 修也)
東証マザーズに上場している「モック」による株式併合が、ビジネス法務の世界で話題になっている。
去る9月7日、同社は、自社の発行済株式について10株を1株とする「株式併合」を行った上で、大量の新株予約権を特定のファンドに有利発行すると発表した。これにより、同社の株主である約8400名のうち、10株未満の株式を保有する約8割の株主(約6700人)が株主権を失い、現金で締め出されることになる。そのため、かかる手法の正当性をめぐってさまざまな議論が展開されているわけだ。
株式併合の結果、1株に満たない端数が生じた場合には、端数は会社の手によって競売等の方法で一括売却され、端数の保有者にその売却代金が分配される仕組みになる。したがって、10株を1株にするといった大掛かりな株式併合が行われる場合には、かなりの株主が株主権を失い、端数の売却代金を渡されて締め出される結果
となる。
同社の発行済株式数は13万4 263株なので、併合後は、1万3423株となる一方、ファンドによって新株予約権がすべて行使された場合には、40万株の株式が新たに発行されることになる。つまり、発行済株式数の約30倍の株式を特定のファンドが保有することになるわけだ。この際、1株を取得するために払うべき新株予約権の行使価格は1万5000円であるため、本件計画を公表する前(株式併合前)の株価(8700円)を10倍にした額の8万7000円に比べて、約83%も安い価格で1株を手に入れることができる計算になる。
株主の締め出しは、現金を対価とする組織再編行為(交付金合併など)によっても起こりうるが、その場合には、反対株主に株式買取請求権が付与される点に留意する必要がある。それに対し、本件のような株式併合を用いたスキームでは、反対株主の株式買取請求権は認められない。この違いは、締め出し後に、会社の株価が上昇
するような場合に顕在化する。端数売却の場合には、売却時の市場価格が基準となるために、将来の株価上昇の見込み分は、締め出される株主に分配されない。組織再編行為の場合も、株式の市場価格を基準としたフェア・バリューで対価が計算されるため、その限りでは、将来シナジーの分配は行われにくいが、その額に不満がある株主は、株式買取請求権を行使することで、将来シナジーを考慮した公正な価格での買い取りを請求できる形になる。
こうした点に配慮して、良識的なビジネス・ロイヤーの多くは、株式併合による締め出しを「禁じ手」と考えてきた。その代わりに、手続きは面倒であるが、全部取得条項付種類株式を用いる方法が使われてきたわけである。すなわち、定款変更によって会社を種類株式発行会社に変更した上で、既存株式を全部取得条項付種類株式にする定款変更を行い、さらに株主総会の特別決議によって全部取得条項付種類株式を全部取得するわけだが、その対価として出資単位の大きい株式を用いることで、少数派株主の株式を端数にして売却するというスキームだ。この方法によれば、全部取得条項付種類株式への変更に際し、反対株主には株式買取請求権が付与されることになる。
しかし、9月末に行われたモックの株主総会は、この「禁じ手」を承認してしまった。法律家の良識が問われる出来事であった。
2007 11 25 [13. フィナンシャル ジャパン] | 固定リンク
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