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2007.12.31
[フィナンシャル ジャパン] 「国に逆らわないポートフォリオ」で資産防衛
「フィナンシャル ジャパン」1月号 特集 資産防衛最前線 傾向と対策 より
藤巻 健史氏(フジマキ・ジャパン 代表)
インフレは過去の産物か?
―― なぜインフレに警鐘を?
インフレの要因はさまざまだが、いくつかの基本的なパターンがある。まず景気が良く、需要が供給を上回る場合。もうひとつは原材料価格が上昇して製品の製造コストが上昇したり、賃金が上昇してサービスを供給するためのコストが上昇したりする場合だ。
足元を見る限りモノ余りの構造は変わっていないし、賃金の上昇も鈍い。さらに、多くの日本人は、バブル崩壊後の15年間に、あまりにも長い経済の低迷期を経験したために、このような理由で起こるインフレなど、すっかり過去のものになったと信じて疑わない。
ただし忘れてはならないのは、貨幣価値の下落によりインフレが生じる可能性だ。足元のインフレ指数が落ち着いているとはいえ、日銀が超金融緩和を長期化しているので、国内はすでにおカネがジャブジャブの状態。仮に景気が悪くても、貨幣価値が下落すれば物価は上がる。この場合、一般物価の上昇に4~5年先だって生じレを作らざるを得ない。ただし、これは財政破綻の次に最悪の政策。本来は、同じ価値の貯蔵手段であるのに、土地とか株を持っている人は大儲けをするが、現金を持っている人は大損してしまうという「不公正」が起こる。社会的
な「不公平」「不公正」が起こるわけだ。
――ハイパーインフレはいつ起きるのか?
私は決して近い将来にハイパーインフレが来ると予想しているわけではなく、今すぐそれを回避する手段を打つべきだと主張している。日本人として、このような最悪の事態が訪れる前に、賢明な手段が取られることを望んでいる。
ただし今は、そのための青写真すら描けていないのが実情であり、実際にはほとんど選択肢がない。歳出削減と消費税増税の具体的なスケジュールすら決められず、一方ではこれをやり過ぎると景気が失速するというジレンマにも直面する。
ハイパーインフレという最悪の事態を回避する次善の策が、“穏やかな資産インフレ政策”だ。急激な資産インフレによるバブル崩壊は「いつか来た道」であり、過ちを繰り返さないためには、あくまでも“穏やか”であることが必
要だ。これに緩やかな歳出削減と増税を組み合わせるのが、現実的な選択肢だろう。財政赤字問題は、日本の“アキレス腱”。この行方が、日本の将来を左右する最も重要なポイントになる。残されているのは、インフレが“穏やか”か“急激か”の二者択一だ。
―― 政府も本音ではインフレを避けられないと思っている?
2011年度にプライマリーバランス(基礎的財政収支)が黒字化したところで、本質的な問題の解決にはならない。こんなものは、言葉の遊びにすぎない。ところが今はそれすら実現が危ぶまれており、不毛な成長率論争が繰り広げられている。
「最後はインフレ政策を取る以外に、ほかに解決策があるなら教えてよ」というのが政府の本音だろう。政治家は、今の財政赤字問題を自分の家計にたとえてみればよい。自分の任期を無事に乗り切るためだけの、長期的な視座に立たるのが、地価や株価の上昇が引き起こす資産インフレだ。資産インフレがもたらす「資産効果」は需
給を引き締めるので、巡り巡ってインフレ指数を押し上げる効果がある。
―― 財政赤字も将来のインフレ要因?
貨幣価値の下落は、日本の膨大な財政赤字とも深く関与している。財政赤字問題の解消へ向けて、さまざまな議論が行われているが、これだけ赤字額が膨大になると奇手奇策はない。
仮に赤字の解消が進まず、現在830兆円の国債発行残高が、むしろ900兆円、1000兆円へと膨らむようなことがあれば、インフレによって借金の実質的な価値を減らすよりほかに手段はないだろう。またこの場合、為替レートは理論上、円安に進む。
緩やかなインフレ + 歳出削減 + 増税が現実的
―― 政府がハイパーインフレによって借金を棒引きする?
万端尽きた後の最後の手段として、国は人為的にハイパーインフレを作らざるを得ない。ただし、これは財政破綻の次に最悪の政策。本来は、同じ価値の貯蔵手段であるのに、土地とか株を持っている人は大儲けをするが、現金を持っている人は大損してしまうという「不公正」が起こる。社会的な「不公平」「不公正」が起こるわけだ。
――ハイパーインフレはいつ起きるのか?
私は決して近い将来にハイパーインフレが来ると予想しているわけではなく、今すぐそれを回避する手段を打つべきだと主張している。日本人として、このような最悪の事態が訪れる前に、賢明な手段が取られることを望んでいる。
ただし今は、そのための青写真すら描けていないのが実情であり、実際にはほとんど選択肢がない。歳出削減と消費税増税の具体的なスケジュールすら決められず、一方ではこれをやり過ぎると景気が失速するというジレンマにも直面する。
ハイパーインフレという最悪の事態を回避する次善の策が、“穏やかな資産インフレ政策”だ。急激な資産インフレによるバブル崩壊は「いつか来た道」であり、過ちを繰り返さないためには、あくまでも“穏やか”であることが必
要だ。これに緩やかな歳出削減と増税を組み合わせるのが、現実的な選択肢だろう。財政赤字問題は、日本の“アキレス腱”。この行方が、日本の将来を左右する最も重要なポイントになる。残されているのは、インフレが“穏やか”か“急激か”の二者択一だ。
―― 政府も本音ではインフレを避けられないと思っている?
2011年度にプライマリーバランス(基礎的財政収支)が黒字化したところで、本質的な問題の解決にはならない。こんなものは、言葉の遊びにすぎない。ところが今はそれすら実現が危ぶまれており、不毛な成長率論争が繰り広げられている。
「最後はインフレ政策を取る以外に、ほかに解決策があるなら教えてよ」というのが政府の本音だろう。政治家は、今の財政赤字問題を自分の家計にたとえてみればよい。自分の任期を無事に乗り切るためだけの、長期的な視座に立たない無責任な議論などできないはずだ。
現預金は本当に安全か?
――インフレに備えるためにはどのような資産運用が望ましい?
私は個人的にも資産を運用するのと同時に、海外や日本の投資家に助言をする機会がある。その際には、「長期固定でおカネを借りるだけ借りて、日本の不動産を買ったらどうですか」「日本株、それとアメリカの株を買ってはどうですか」「外貨建て商品を買ってみたらどうですか」「債券、特に日本の国債を売ってみてはどうですか」と提案している。
資産インフレによって、不動産価格が上昇するのは言うまでもない。企業はインフレで売上高が増える。また、たいていの企業は借金をしており、インフレで実質的に借金が目減りするので株もよい。不動産価格の上昇で、不動産を多く保有している企業の株価はさらに上昇する。
日本でインレになるということは、円の価値が下がり、外貨の価値が上がることを意味している。その意味では、ドル資産を含む外貨建て資産も魅力的だ。
また将来、国内市場だけでは国債を消化しきれなくなったときに、長期金利は外国人投資家にとって魅力的な水準まで上昇せざるを得ない。そうでないと誰も日本国債など買ってくれない。したがって、今のように金利が低い水準では、国債への投資はお勧めできない。
―― しかし日本の個人金融資産は圧倒的に現預金が多い。
確かに日本人は個人金融資産1550兆円の半分以上を現金・預金で持っている。これは皆が、現預金が「安全資産」だと信じているからだ。デフレの時代には確かにそうであり、面倒な投資を行うよりもはるかに楽だった。
しかし、もし本当に大変なインフレになったら、現預金は安全資産ではなくなる。それどころか、一番の「リスク資産」になるかもしれない。たとえば汗水流して100万円貯めて、老後を迎える。ものすごいインフレが来て、仮に
タクシーの初乗り料金が100万円になったとする。こうなると一番危ないのが現金だ。100万円は価値がなくなったに等しく、ほとんど“紙っぺら”になってしまう。何が「安全資産」なのかは、その時代によって異なると考える
べきだ。
―― 日本人はリスク回避的?
そもそも日本人は、リスクシナリオにとらわれる性向が強い。さらに、バブル崩壊の“トラウマ”がまだ根強いことと、マスコミの報道にリスクを強調するバイアスがかかっていることも影響していると思う。
―― マスコミのバイアスとは?
最近の例でいえば、「サブプライム問題の影響はまだまだ続く」という類の報道は、欧米のマスコミ報道とは対照的。これは、「どうしてもそれをリスクと結び付けたい」という、日本人の性向を反映している。日本の報道はともすれば一方的になりやすく、国民はこれに流されやすい。
「貯蓄から投資へ」は本源的問題
――「貯蓄から投資へ」という掛け声が実現につながらないが。
貯蓄から投資へという流れは投資家のためでもあるが、同時に社会のためでもある。リスクマネーのない日本社会は、いずれ沈滞するしかないことを知るべきだ。「日本人が、これからも日本で働き続けることができるのか」という、より本源的な問題だ。日本に仕事がなければ、いずれは海外に出稼
ぎにいくよりほかなくなる。
―― 日本の株式市場が低迷している。
リスクにばかり目がいき、世界の株式市場が最高値圏にいる現実が見えていない。この事実に気がつけば日本の株式市場も上昇するだろうし、再び円相場が円安に振れれば、これを好感したラリーに入るだろう。
―― 不動産相場に過熱感は?
まったく感じていない。現状は1980年代後半のようなバブルではないし、あのときのような投機的な相場ではない。また、アメリカの不動産市場の上昇も、決してバブルではないとみている。相場の上昇スピードは程度の問題であり、すべてをバブルという言葉で片づけてしまうのは安易な思考停止だ。
――「長期固定でおカネを借りてでも投資を」という発想は大胆。
これは個々人の考え方にもよるし、その人の置かれた環境によっても異なる。ただし私は、「国と同じポートフォリオを持っていればチャンスは大きい」と考えている。“個人”対“国”がガチンコ勝負をすれば、間違いなく国が勝
つ。財政赤字解消へ向けた妙案がない以上、国はインフレ誘導の誘惑を振り切れない。だから私も「長期固定でおカネを借り」、「そのおカネで土地、株と外貨建て商品を買う」。つまり「インフレ対応型のポートフォリオ」を構築しているのだ。
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