« [フィナンシャル ジャパン] 「国に逆らわないポートフォリオ」で資産防衛 | トップページ | [フィナンシャル ジャパン] リーダーの条件② »
2008.01.01
[フィナンシャル ジャパン] リーダーの条件①
「フィナンシャル ジャパン」1月号 巻頭企画
--リーダーの条件 安倍・小沢「投げ出し」騒動の本質
本宮ひろ志(漫画家)+伊藤達也(衆議院議員)+二宮清純(スポーツジャーナリスト)+木村 剛
リーダーの資質が今問われている
木村 安倍晋三前首相の突然の辞任や防衛省の守屋武昌前事務次官の業者との癒着問題など、このところ国や組織のトップのあり方が問われるような問題が次々と起こっています。そこで今回は『男一匹ガキ大将』をはじめとする数々のヒット作品を世の中に送り出し、多くの若者に影響を与え続けている漫画家の本宮ひろ志さんと、小泉政権時代に金融担当大臣を務め、内閣総理大臣という日本の最高責任者を間近で見てきた自民党の伊藤達也議員、そして、小誌連載コラムでお馴染みの二宮清純さんと私の4人で、「リーダーの条件」について議論したいと思います。
まず、本宮さんをこの座談会に誘ってくれたのは二宮さんなんですが、どうして「リーダーの条件」について、本宮さんに話を聞こうと思ったんですか。
二宮 伊藤さんには本当に申し訳ないけれども、私の目には突然辞意を表明した安倍前首相の姿が、「敵前逃亡」に映ったんです。国会の代表質問の前に、いきなり「お腹の調子が悪くなった」と言って、緊急入院してしまった。国際的には国連総会にも行かなければならない大事な時期だった。「国益」「国益」とあれだけ繰り返し言っていた人物が、一番国益を損なっているじゃないかと思いました。おまけに「美しい国づくり」と言っていた人が、あまりにも「美しくない」引き際を見せてしまった。
そのとき私は「安倍首相は男じゃないな」と思いました。私たちの世代はいわば「本宮世代」じゃないですか(笑)。『男一匹ガキ大将』『俺の空』『硬派銀次郎』を読んで育った世代としては、本宮漫画に登場するような男気のあるリーダーが本当に少なくなったなと感じている。だから本宮さんがこうした現象を、どう見ているのか知りたかったんです。
本宮 今はね、リーダーにとって、極めて難しい時代だと思うんです。世の中の方向性がピンポイントで決まっていて、それがあらゆる方向に向いている。つまり、個人の価値観があまりにも多岐に分かれているでしょう。そうした時代にリーダーになるのは極めて難しい。
例えば、終戦直後は本当に簡単な時代だったと思うんです。「所得倍増で豊かになりましょう」ということで、みんなが一本にまとまることができた。そうすると、どんな人物がリーダーになっても、全体が一つの方向に向いているから、そんなに難しくなかった。ところが、今はあらゆる方向にみんなが向いている。
しかも、たいていの人たちは会社勤めのサラリーマンとして、生計を立てているじゃないですか。例えば、出版社で編集長というとリーダーですよね。でも、彼らのほとんどが、組織の中の部品の一つとしてしか育っていない。つまり、部品として育った人間が「ポン」とアタマを張っている状態なんです。残念なことに、彼らは全体を見ている感じがしないし、リーダーという顔つきもしていません。
政治の世界で言うと、明白な意思を持って、総理大臣という日本のトップの座を、自分が手にしたザルの中に強引に叩き落とすような方法で獲得したのは、田中角栄と小泉純一郎の2人しかいないと思うんです。安倍前首相にしても、今の福田康夫首相のお父さん(福田赳夫氏・第67代内閣総理大臣)にしても、みんな手にしたザルの中に勝手に落ちてくるのを待っていて、結果として総理大臣になったように見えるんです。
二宮 つまり、チャンスが転がり込むのを、策を弄しながら待っているだけだったと。
本宮 そうです。前に麻生太郎氏(前自民党幹事長)と話したことがあるんですが、「総理大臣になることは、ある目的を達成するための手段だ」と言っていた。その言葉を聞いたときは「麻生さんはきっと総理大臣になるな」と思った。でも麻生さんは、前回の総裁選のとき、無理をしてでも自分の手で総理のイスを取ろうとしなかった。
結局、安倍首相が誕生し、今の谷垣禎一政調会長のチャンスがなくなって、自然の流れから今回は麻生さんしかいないという雰囲気が出来ていたのに、結局、福田さんが総理大臣になった。やはり麻生さんには足りないものがあった。それは、自分の手で自分のザルの中に叩き落とさなかったことです。そこが田中角栄や小泉純一
郎という人物と大きく違う。
木村 政治家である伊藤さんから見て、田中角栄と小泉純一郎という人物は、やはり歴代の総理大臣と違いますか。
伊藤 うーん、僕は「ナマ角栄」を見てないから(笑)。田中首相については正直よくわからないんですが、小泉首相は実際に間近で見てきました。3回目の総裁選挙では、私は違う候補者を一生懸命に応援していましたから、敵方として、本宮さんや二宮さんが指摘する通り、「権力を奪い取るんだ」「自分の力で引き寄せるんだ」という、小泉さんの気迫を強烈に感じました。
木村 小泉首相は権力闘争が好きそうな雰囲気がありますよね。
伊藤 もう大好きかもしれないですよ(笑)。とにかく政局をいかに動かして、自分の悲願であった「郵政民営化」を実現するかということのために行動したという見方もできます。
木村 麻生氏は「落ちてくる」のを待っていた。一方の小泉首相は「俺が叩き落としてやる」という信念で行動した。そういったエネルギーの違いが、リーダーとしての条件なのでしょうか。
ナマ角栄の迫力にビックリ
本宮 落ちてくるのを待つのと、無理やり叩き落とすのとでは、ものすごく違うと思うんです。エネルギーと集中力において、比較にならないぐらいの差がある。僕は昔、「ナマ角栄」に会ったことがあるんですよ。
取材のために4時間ぐらい話をしました。びっくりしたのは「わしは総理大臣をやったことがあるんだぞ。お前だって知ってんだろう」と、会うなり僕にこう言うんです。
全員 あははは!(爆笑)
二宮 そりゃ、誰だって知っていますよ(笑)
本宮 それと「お前は敵か、味方か」みたいなことを言うんです。「お前みたいなのが敵に回っても、俺は怖くもなんともないんだ」といきなり言われました。しかも、平気な顔をして大声で言うんです。病院の待合室みたいなところの奥から、あのオヤジのデカいだみ声が響きわたるわけです。もう秘密なんかあるわけないですね、あの人は(笑)。
ちょうど土光敏夫さんが臨調(臨時行政調査会)をやっていた時代ですから中曽根政権の頃です。僕が訪ねたときは、台風が日本列島を直撃した直後で、部屋に入ると田中さんは電話中だった。建設省(当時)だと思うんですが、役所に電話している。「おお、わかった!じゃあ水道止めなくていいんだな!」なんて言っているわけです。「すいません、水道を止めるのを決めるのは田中さんなんですか?」と尋ねると「俺が決めている」と答えるんです(笑)。
二宮 水道の開け閉めまで決めていたんですか(笑)。僕は田中角栄氏を題材にした「大いなる完」という本宮さんの作品を読みました。確か、本宮さんは新自由クラブ(当時)の田川誠一氏も取材されていますよね。ロッキード事件で田中角栄氏が逮捕され、いわゆる「政治とカネ」という政治倫理が重要課題になっていたときに「田中的な政治ではダメだ」と田川氏は主張していた。
その作品の中で、今でも印象に残っているのは、それは田中角栄氏をモチーフにした人物のオーラのすごさと田川氏をモチーフにした人物の「言ってることは正しいけれど、人間としては面白くない」というような「器の違い」が描かれていたことです。
本宮 それは僕が言ったんじゃない。田中さんが言ったんだ(笑)。実は田川さんを取材したことを田中さんに伝えたら、「ああいうピーチクパーチクきれいごとを言ってる人間は気楽でいいやな」と田中さんが言うんです(笑)。
僕は連載の中で、それをそのまま描くわけです。すると今度はそれを見た田川さんが激怒して、「国会の代表質問のときに、君の漫画のことを質問しようと思ったぐらいだ」と僕に文句を言ってくるんです。
全員 へーっ(笑)
本宮 国会で取り上げられたら、ある種とんでもない宣伝になるし、僕は名誉なことだと思ったけれど、「お前はあの刑事被告人の田中角栄を持ち上げて、その言い分を全国の子供たちに読ませるとは何事だ」と、田川さんから長文の「お叱り」の手紙をいただきました。でも僕は、「子どもたちは純粋な、きれいな水の中で育っているわけじゃない。泥水だって世の中だし、それをそのまま伝えるのが自分の仕事だ」という返事をした。
しかし、今改めて思い返すと、田中角栄というあのオヤジは、やはり「天然」のすごい人物でしたが、正直に言うと、うまく会話ができなかった。
二宮 どういうことですか。会話ができないというのは。
本宮 田中さんは話し出したら、1人で喋りまくるんですよ、一方的に。それで会話するコツを教わった。当時はもう朝からオールド・パーを飲んでいたんですが、秘書から「ウイスキーを口に入れたときに質問しろ」とレクチャーを受けたんです(笑)。
飲み終わった瞬間に、こっちの質問が終わってもいないのに、バラバラバラバラーッと答えだすんですよ(笑)。
あの当時、田中さんとまともに会話ができたのは、おそらく真紀子さん(現衆議院議員・無所属)とお孫さんぐらいじゃないかな。僕はそのとき「この人とは会話ができないな」と思いました。その後、僕は竹下登(第74代内
閣総理大臣)さんにも会いました。パーティの席で、竹下さんは僕の顔を見て「君が本宮君か」と話しかけてきた。そのとき僕は「この人についていこう」というような気持ちになっちゃった(笑)。
田中さんとはまったく会話ができなかったけれど、竹下さんは「君が本宮くんか」というぐらいだから、少なくとも僕のことを知っているわけじゃないですか。
木村 つまり、竹下さんが本宮さんの作品を読んでいたということですよね。
本宮 しかも、僕を見ながらニコーッと笑ったんです。竹下さんは田中派内の勉強会として創政会を結成していましたが、その後、中間派を取り込んで経世会という自分の派閥を立ち上げるでしょう。田中さんの決定に、ほかの人たちは一切口をはさめなかった。ところが竹下さんはああいうタイプだったから、みんなは「彼を立てれば自分たちも意見が言える」と思ったんですよ。だから、一斉に竹下さんについて行った。経世会発足のニュースを聞いたとき、そう思いました。(続く)
2008 01 01 [13. フィナンシャル ジャパン] | 固定リンク
トラックバック
この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/15160/17506691
この記事へのトラックバック一覧です: [フィナンシャル ジャパン] リーダーの条件①:
» 謹賀新年 2008年元旦 [ある女子大教授の つぶやき から]
謹賀新年
「猪突猛進」から「窮鼠猫をかむ」年に変わった。本当は何も変化していないのであるが、子供のころからの習慣で、元日になると不思議なことに何かが変わったような気分になれる。年をとると1年というサイクルが時間的空間的に収縮して、何かあちらの世界へ急がされているようの気がするのは管理人だけであろうか。
... 続きを読む
受信 2008/01/01 10:53:07
» 朝まで生テレビ 2008年 元旦 を観て [不動産と景気・経済 から]
防衛省問題については、とても興味深く観た。識者のコメントには具体性があった。東京地検の特捜部が金丸信以来、追及しているイシューなので、腕の見せ所(手腕)である。久間元防衛大臣の逮捕は必至だろう。反守屋派の追及によっては、他の官僚や政治家の逮捕者が出る、となれば... 続きを読む
受信 2008/01/01 18:50:15
» マスクをしても、ウイルス感染の防御にはなりません [大塚晃志郎の、経営者とその家族のための健康管理と「命もうけ」の知恵 から]
このブログは、おもに経営者やそのご家族の健康管理や「命もうけ」の知恵として役立つような目からウロコの情報や発想を、できるだけわかりやすくお伝えすることにあります。
ごぶさたして申し訳ありません。
12月に入って中旬を過ぎたあたりからとくに、寒い冷える....... 続きを読む
受信 2008/01/03 8:51:01
» リーダーシップと点滴とミルク [舩木俊介 革新時代の仕事脳 から]
「フィナンシャル ジャパン」1月号巻頭企画の「リーダーの条件」で、漫画家の本宮ひ 続きを読む
受信 2008/01/11 15:40:26

















