2008.07.20

[フィナンシャル ジャパン] 株式100分割

[フィナンシャル ジャパン8月号掲載]
【会社法がわかれば商売がわかる!】 中央大学法科大学院教授 野村 修也氏


 最近、JR 東日本やNTTなどで、株式1株を100株に分割する動きが活発化している。株式の100分割といえば、かつてライブドアが、株券の印刷が間に合わない状況を作り出すことで、証券市場の需給バランスを崩し、株価を高騰させる手段として悪用していたことを思い出す人も多いだろう。しかし、今話題となっている株式の100分割は、合理的な理由に基づくものである。
 その理由とは、株券の電子化への対応である。2004年に社債等振替法が改正され、株券の電子化が決まった。ただし、システム開発等の準備のために、法改正から5年間の準備期間が設けられた。そのため当初は、株券電子化が始まるのは随分と先のことのように思われたが、それもつかの間いよいよ来年には5年目を迎える。今のところ、来年早々(予定では1月5日)には、株券の電子化がスタートする見通しである。
 株券電子化に伴う難題の1つとして、タンス株の問題があることはよく知られている。タンス株とは、証券保管振替機構(ほふり)に預託されずに、株主自身が保管したり保護預かりを頼んだりしている株式をいう。タンス株の場合は、ほふりに預託された株券とは異なり、電子化に際して新しい口座簿への自動移行が行われないため、放っておくと株式の譲渡ができなくなるといった不利益が生ずる。とはいえ、タンス株については、会社が費用を負担して特別口座簿に一時保管する仕組みになっていることから、株券電子化と同時に権利がなくなってしまうというわけではない。ところが、こうしたタンス株とは異なり、株券電子化に伴って口座簿に載せてもらえなくなってしまう権利がある。それは、端株である。端株とは、1981年に会社法を改正した際、出資単位の引き上げに伴って1株に満たない端数の経済的価値が高まったことに配慮して設けられた制度であった。例えば、株の数を1.5倍
にする株式分割が行われた場合、10株持っている人は15株になるが、5株しか持っていなかった人は7.5株になってしまうことから、この0.5株分を端株と称して、その譲渡や買増しを認めてきたわけである。しかし、2005年の新会社法では、単元未満株式制度との関係を整理する観点から、端株という制度は廃止された。すなわち、新会
社法の下では端株が新規に発生することはなくなり、この世の中に残っているのは、改正前に発行された古い端株だけということになったわけである。そのため、株券の電子化に際しては、端株用の口座簿という制度は用意されなかった。
 そこで、端株が残っている上場会社の多くは、株券電子化がスタートする前にそれを解消すべくさまざまな対策を講じている。これまでは、会社に対して端株の買取りを請求したり、逆に買増しを請求したりすることで、端株を
解消するよう促してきたが、株主側のアクションが必要であることから、この方法には自ずと限界があった。そこで、ここに来て会社が取り組み始めたのが、株式の大量分割というわけである。
 例えば、1株を100株に分割したとすれば、先ほどのケースで7.5株を有していた株主は750株を保有することになり、問題は解決するからである。
 いよいよ株券の電子化も秒読み段階に入った。システムの開発も含めて、スムーズな制度移行を期待したいものである。

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ポッドキャスティング-木村 剛が斬る!
今週のテーマ:米サブプライム処理のスピードは日本の10倍!?

アメリカの住宅公社のファニーメイとフレディマックが経営の危機に直面していると言うことで
アメリカの金融当局が救済に乗り出している。
これは問題の深刻さを正面から捉えた措置だが、当局の常識から言うと、
信じられないくらいの早さで、信じられないくらいの大きさの対策を打っている。

http://www.financialjapan.co.jp/podwmv/080716/080716mag_subprime.html

2008 07 20 [13. フィナンシャル ジャパン] | 固定リンク | トラックバック

2008.07.19

[フィナンシャル ジャパン] 隔離さえすればよいのか?

フィナンシャル ジャパン8月号掲載 「伯楽諫言」 木村 剛

 5月18日付けの毎日新聞の「携帯電話:小中生の使用制限『法整備』で一致」という見出しの記事を読んで、正直ぶったまげた。小中学生が携帯電話を持つことを法律で規制するというのだ。教育再生懇談会という首相の諮問機関の意向だそうだが、危ないこと、この上ない。
 子どもに携帯電話を持たせないという個々人のスタンスは是認できるし、私自身、そういう考え方に近い。それぞれの親が決めればいいだけだ。ただ、その程度のことに、いちいち国が出しゃばるという発想には恐ろしさを感じる。
 さすがに反対意見もあったようで、教育再生懇談会の第一次報告では、「必要のない限り小中学生が携帯電話を持つことがないよう、保護者、学校はじめ関係者が協力する」という線で落ち着いたが、お上頼みが目立つ最近の風潮はいよいよ危険水域に入ってきた。「子どもを有害情報から守る」という意図は悪くないが、その処方箋として、携帯の保有を禁止するという発想は、子供じみている。残念ながら、世の中は、無害なモノばかりで構成されているわけではない。有害なモノに出合う確率は少なくない。だからこそ、有害なモノと無害なモノを峻別することのできる目利きや、有益なモノを探し出す嗅覚を、子どもに身に付けさせなければならないのだ。
 目利きや嗅覚は、無菌状態の温室に隔離することで育成されるものではない。有害なモノと直面して誘惑され、時に失敗し傷つきながら、自分で身に付けていくものだ。子どもたちに必要なことは、自力で有害なモノの誘惑と戦い、打ち克つという体験である。
 それなのに、「有害なモノから隔離すればいい」という誤解に基づいた正義が横行すると、健全な部分に様々な弊害が及ぼされる。改正貸金業法は、「高い借入金利から隔離すればいい」という誤った正義を振り回した結果、日本国中の資金の融通をストップさせた。「耐震偽装の危険から隔離すればいい」という短絡的な発想で作った改正建築基準法は、日本中の建設にブレーキを掛け、国内需要を一気に冷え込ませた。「投資に関するリスクから隔離すればいい」という教育的指導を潜ませた金融商品取引法は、金融機関の行動を制約し、資本の動きを鈍らせた。
 どんなに元気な経済であっても、資金の流れが滞り、需要がしぼんで、資本が動かなくなれば、ダメになる。規制だらけで自由がなくなれば、かつての社会主義国のように、当然、沈滞する―― 残念ながら、それが、いまの日本の姿だ。
 そういう認識のない政府は、さネットを取り締まろうとしている。しまいには、『消費者庁』という規制モンスターを出現させ、「企業=悪」というドグマに依拠して、経済統制を狙っている。一世紀遅れた社会主義者たちが「格差をなくせ!」と叫び、「消費者を悪い企業から隔離せよ!」と危険な実験を日本で行おうとしているのだ。本当にこのままでよいのだろうか。
 非常に残念なことではあるが、「社会主義は富める者を引きずりおろすが、自由主義は貧しき者を引き上げる。社会主義は企業を殺すが、自由主義は企業を特権や保護の足かせから救う。社会主義は資本を攻撃するが、自由主義は独占を攻撃するのである」と喝破したウィンストン・チャーチルのような政治家は、日本の永田町には
いないようである―― 嗚呼。

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ポッドキャスティング-木村 剛が斬る!
今週のテーマ:米サブプライム処理のスピードは日本の10倍!?

アメリカの住宅公社のファニーメイとフレディマックが経営の危機に直面していると言うことで
アメリカの金融当局が救済に乗り出している。
これは問題の深刻さを正面から捉えた措置だが、当局の常識から言うと、
信じられないくらいの早さで、信じられないくらいの大きさの対策を打っている。

http://www.financialjapan.co.jp/podwmv/080716/080716mag_subprime.html

2008 07 19 [13. フィナンシャル ジャパン] | 固定リンク | トラックバック

2008.07.13

[フィナンシャル ジャパン] 東京・副都心線がもたらす変化の裏面を読み解く

[フィナンシャル ジャパン 7月号掲載]

 東京メトロ副都心線が、来る6月14に開業する。従来の交通網から取り残されていた都心の街を、池袋・新宿・渋谷へとつなぐ。埼玉県からは東武東上線、西武池袋・有楽町線、将来的には神奈川県から東急東横線が
直通する。果たして新線開業は首都圏の大規模地殻変動を促すのか──

埋もれた街に駅が来た

 東京都豊島区雑司が谷。夏目漱石、永井荷風など文豪や著名人が眠る雑司が谷霊園と子育て祈願で知られる名刹・鬼子母神を中心に、都心にもかかわらず、どこか鄙びた雰囲気を醸す街だ。そんな静かな街でも新駅建設が着々と進んでいる。これまで池袋・目白・護国寺など、周辺駅へのアクセスに時間を要した環境が大きく改善されそうだ。
 東京メトロ広報部によると、この副都心線開通に投じられた費用(池袋〜渋谷)は総計2510億円、ルートは都心の大動脈の一つ、明治通りの下を走る。新駅のうち、雑司が谷・西早稲田・北参道の3駅は従来、地下鉄接続と無縁だった地域だ。利便性の低さから一帯には〝昭和風〞の街並みが残るが、新線開業で沿線は様変わりする可能性がある。
 影響は無論、新線沿線の街並みだけにとどまらない。西武鉄道・東武鉄道は相互乗り入れでは副都心線と共同する格好だが、同線と競合する面もある。〝副都心線対策〞の一環として、6月14日からTJライナー(有料の座席定員列車)を運行する東武鉄道では、「開業で和光市〜池袋間の利用客減もありうる」(同社広報部)と想定
する一方で、「池袋駅(東武)リニューアルやTJライナーで沿線の優位性を高める。また副都心線利用者にも東上線の魅力をPRし、将来的な沿線価値向上につなげたい」と話す。

向上する利便性波及効果はどう出る?

 副都心線は1985年に出された運輸政策審議会の答申で計画が示され、2001年に着工した。「開業初年度1日平均約15万人、東急東横線との相互直通運転開始予定前年度となる2011年度には1日平均約21万人の利用を想定」(東京メトロ広報部)とされる。
 この新線開業の全体的な影響を、三菱総合研究所主任研究員の加藤勲氏は、「(副都心線の)両側の東武東上線、西武池袋・有楽町線、さらに東急東横線と直通することで、首都圏の鉄道ネットワークが充実する」とし、ルート面での特徴を、「オフィス街の大手町、東京、有楽町といった山手線内東南部を通らない点が従来の地下鉄
路線とは異なる」と指摘する。副都心線がオフィス街へ向かわないのは、当初の計画段階から、池袋〜渋谷間の山手線の混雑緩和を目的としていたためだ。だが埼京線の登場で、その混雑も若干緩和されつつある状況だ。では新線に寄せられる期待は何なのだろうか?
 新線開通では、利用者にとっての〝身近な〞利便性が気になるところ。都営大江戸線開通時(00年)には、駅ホームが地上から深く、利用者からは移動が負担になるとの声もあった。
 この点について東京メトロでは、「新たに建設した駅では全駅で上下エスカレーターのほか、地上までのエレベーターを確保している」とし、高齢化社会を念頭に着々と準備を進めている。
 また同線開業は、都心の交通事情にも影響を与える。東京メトロは、「(副都心線が地下を走る)明治通りは都営バスの重要な幹線だが、開業はこの通りの渋滞緩和につながる」としている。一方で、渋滞緩和の見込みについて、「バスの運行体系が再編されるなどすればある程度の影響は出るだろうが、驚くほどの変化は見られない
のでは」(三菱総研・加藤氏)との見方もあり、開業後の変化は未知数だ。 
 05年のつくばエクスプレス(つくば〜秋葉原)開業では、新駅を中心に三井不動産が大規模な開発を行い話題となった。今回の副都心線でも、そういった動きが生じるのか。 沿線住民でなくとも興味をそそられるが、「鉄道の収益性だけでは、新線の開業効果は捉えられない」(加藤氏)上に、利用者の利便性向上や沿線住民増加による自治体の税収増など、開業の効果はさまざまな事象を複合的に見て判断する必要があるため、「経済効果は〜億円」といったわかりやすい数字を求めるのは簡単なことではない。

副都心で〝商圏〟獲得競争勃発か

 新線開業でしばしば持ち出されるのが、「商圏」という言葉だ。「一定の商取引の行われる地理的範囲(広辞苑)」のことなのだが、「つくばエクスプレス」によって「秋葉原」の商圏が広がり、大きく注目が集まったのは記憶に新しい。国内最大規模のヨドバシカメラが集客に一役買っているほか、秋葉原UDX、アキバ・トリムといっ洗練された複合施設ビルがオープン、「オタクだけのもの」だった街のイメージが刷新され、商圏自体も拡大した。
 副都心線開業ではどうなのか?新宿・渋谷は日本有数の商業施設集積を誇っている中、「もともと池袋は私鉄各線利用者にとって、目的地というより経由地の意味合いが強かった」(三菱総研・加藤氏)。
 新宿・渋谷へ直行できることになる開業は、池袋という商圏にとって脅威になりかねない。
 池袋の商業施設が、新線開業で新宿・渋谷との「顧客獲得競争」に巻き込まれるとの予測も出てくるゆえんだ。
「副都心線開業で大きな影響を被ることはないと考えている」と明言するのは、池袋西口の東武百貨店(以下、池袋東武)の広報担当・金井靖氏だ。
 同氏によれば、JR埼京線が新宿へ延伸されたとき(1986年)も、「池袋の空洞化」が世間を騒がせたが、池袋東武では「ほとんど影響はなかった」という。
 今回の開業についても、「池袋東武は食品の売り上げが全体の30%を占める地域密着型店舗で、〝ハレ〞の日に利用してもらうよりは、日常の用向きに応えるのが使命」(金井氏)とし、〝ハレ〞の新宿・渋谷の百貨店との「顧客獲得競争」は生じないとの考えだ。ここ5年間、1300億円程度で推移する売り上げにも変化は生じないと見る。「非日常の新宿・渋谷」と「日常の池袋」。戦う土俵が違うということだろう。

ピンチよりもチャンスが増える

 池袋東武は関東地区百貨店の中でトップの売り場面積を持つ(8万3000㎡)。店舗内の構成も、ユニクロが入店し、低廉な商品から高級品まで幅の広い品揃えをアピールする。顧客層も性別や年齢に偏りはなく、「近隣住民から手軽に来店できる点で便利」と認知されている。従来の顧客が、物珍しさから一時的に直通列車で新宿・渋谷へ流れても、最終的には身近な池袋の利便性を選ぶはず。池袋東武はそう読んでいる。 むしろ同店では新線が集客増につながると期待している。沿線住民増が実現し、結果的に池袋を訪れる人口増も見込まれるからだ。また副都心線池袋駅は出口を西口側に持つため、JR線との連絡では必然的に同店を通過することになる。
「全集客の25%を担うこのエリアの入り口で交通量が増えるのはプラス」(金井氏)の効果が期待できる。加えて池袋東武が中核とする顧客は練馬、板橋、北、文京、豊島の5区だが、豊島区の場合、これまで東口側までしか来なかった駅東南部(雑司が谷方面)の住民も新線利用で西口へ呼び込めるという。
 今年度中には東京メトロが地下鉄駅内商業施設「エチカ池袋」をオープンさせる。新線開業は、空洞化ではなく、池袋の商業施設集積を促す効果のほうが大きくなりそうだ。
 三菱総研・加藤氏が指摘する「池袋独自の魅力を掘り起こせば集客増になる」とは、東武の戦略がまさに体現しているとも言える。
 副都心線が生み出すインパクトは、利便性向上という点では非常に大きい。ただ東京・首都圏は街同士の〝棲み分け〞も進んでおり、商圏の大きな争奪戦が勃発する可能性は低いようだ。新線開業は、街の独自性をより鮮明にするきっかけとなるのかもしれない。

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副都心線とは・・・・
 新設部分(池袋~渋谷)は全長8.9キロ。全体は東武東上線、西武池袋線・有楽町線から、新宿、渋谷方面へ直通する。2012年に渋谷から先、東急東横線との相互乗り入れも実現する。
 東武・西武の両社では開業日に合わせてダイヤを改正する。東武は朝ラッシュ時に上り7本、昼間4本の渋谷行きの他、夕方ラッシュ時下り4 本を運転、西武は朝ラッシュ時に上り6本、昼間4本の渋谷行きの他、夕方ラッシュ時下り4 本を運転する(いずれも1時間あたりの本数)。直通運転は通勤サラリーマンの乗り換え負担軽減に貢献しそうだ。なお副都心線を走る列車は急行、通勤急行、各駅停車の3 種。池袋〜渋谷を急行11分、各停16分で結ぶ。

2008 07 13 [13. フィナンシャル ジャパン] | 固定リンク | トラックバック

2008.07.12

[フィナンシャル ジャパン] 隠された資源大国よ目覚めよ

フィナンシャル ジャパン7月号 連載コラム『超経済外交のススメ』 青山繁晴氏

 時代の転換は、ちいさな予兆にこそ表れる。
 中東イエメン沖で日本の原油タンカーが海賊に攻撃された。関係者は衝撃を受けたし報道もされた。だが船体の損害は軽微で、負傷者なく、航行に大きな支障もなかった。だから不可解な一過性の出来事として忘れられるだろう。
 ところが、これまでの海賊事件と決定的に違う一点がある。
 それは精製前の原油を積むタンカーが狙われたことだ。
 海賊は転売できる積み荷こそを狙う。精製後のガソリンや軽油なら狙われてきたが、転売できないはずの原油が狙われたケースはあるか。海賊事件について、完璧に信頼できる国際統計はない。しかし日米英の当局者はいずれも「過去になかった」と話し、海上保安庁の公式アドバイザーを務めるわたしも、一度も聞いたことがない。
「お馬鹿な海賊が間違って襲ったんだろう」とみることもできる。それなら忘れ去ってよい。
 だが、この海賊船を追尾した多国籍海軍の情報によると、海賊船は5隻が組織立った行動をとり、武装もロケットランチャーや機関砲を備えていたようだ。すなわち高度なプロフェッショナルという可能性がある。それならば精製設備を持つ国家あるいは企業が海賊団に発注して、この初攻撃となった可能性を考えねばならない。
 襲われたタンカーは空荷だった。だから15万トンの巨体が16・5ノットで逃げ、海賊は約50分で追跡を止めた。これも「やはりお馬鹿な海賊」と考えて済ませる思考法もある。しかし「情報がまだ不充分だったか、日本船と多国籍海軍の動きをみる小手調べだったか」と考えてみる方法論もある。
 海賊という言葉は、古い野蛮な賊のイメージだ。そのような海賊も確かにいる。だが多くは不法ビジネス集団であり、確かな需要か契約があって初めて動く。そうでなければ船団と戦闘員を維持できず、弾薬や糧食を補給できない。
 そして、ちいさな事件の底流に巨大な潮流が動いている。眼を中東から北極海に転じてみよう。
 北極海は、地球の温暖化によって氷が解け、北極グマが足場を失うという危機にある。そこへカナダは軍を出し、同じく軍をせり出してきたロシアと鋭い緊張が高まっている。なぜか。氷が溶けるのなら海底の資源を採れるからだ。
 あの穏やかなはずのカナダにして、これである。世界は資源戦争に突入している。中国やインドの爆発的な資源消費がある以上、奪い合いは続く。この背景を考えれば原油タンカー襲撃が一過性とは、とても決めつけられない。日本が中東から船で油もガスも運べない時代も想定せねばならない。
 この危機に備えるために、ひとつは自衛隊のシーレーン防衛の開始がある。そしてより根本的な解決として、自前資源の開発がある。
 わたしたちはみな、日本は資源小国だと幼い頃から教わってきた。だが真実は、隠された資源大国である。人類の第四の埋蔵資源であるメタンハイドレートの世界最大級の埋蔵国だ。また国連機関の報告では、東シナ海の尖閣諸島から沖縄にかけて原油と天然ガスが一定量、埋蔵している。
 日本の資源外交とは、外国からいかに安定的に資源を売ってもらうか、であった。これを東シナ海をはじめ、自前資源を新開発するための環境を整える外交に変える。まさしく超経済外交である。

2008 07 12 [13. フィナンシャル ジャパン] | 固定リンク | トラックバック

2008.07.06

[フィナンシャル ジャパン] 低PBR投資で勝つ

 [フィナンシャル ジャパン] 株式投資力 トレーニング講座

 株式投資は、武器の多い人が勝ちます。PBR(株価純資産倍率)という武器を自由に使いこなす人は、PBRを見ない人より、有利に戦いを進めることができます。なぜならば、日本株投資では、PBRの低い割安な株に投資したほうが、PBRが高い銘柄に投資するより高いリターンが得られる可能性が高いからです。

 道を歩いていたら、いきなり声をかけられました。「すいません。この1000円札、800円で買ってください」。1000円札が800円? そんなこと、あるわけないですね。でも、それと似たようなことが起こっています、日本の株式市場で。1株当たり純資産が1000円ある会社で、株価が800円だったりするのですから。日本株には、そんなのが、たくさんあります。現在、東証1部上場銘柄の約半数が、解散価値といわれるPBR(株価純資産倍率)1倍を割り込んだ異常事態です。
 PBRとは、株価を1株当たりの純資産で割った数字です。株価が800円で、1株当たりの純資産価値が1000円だったとすると、PBRは0.8倍(800円÷1000円)です。日本では、普通に利益を上げていて財務内容になんの問題もない銘柄が、PBR1倍を割れですよね。
 欧米の株式では、PBRは普通2~3倍です。つまり、1株当たり純資産額が1000円ならば、株価は2000~
3000円するってことですよ。なんだって、日本株ばかり、そんなに割安に放置されるのでしょう。私は、PBR1倍割れの割安株は買いの好機と見ています。ただし、投資企業を選ぶ際に気をつけなければならないことがあります。まず、今日のクイズを解いてください。

 A社とB社、どちらもPBR(株価純資産倍率)が0.5倍。ずばり、買うなら、どっち?

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 会社の資産内容を図式化したものです。まず、A社を見てください。A社は総資産が1 兆円、自己資本が2000億円、負債が8000億円です。自己資本とは、返済義務のないお金のことです。これに対し、負債には将来の返済義務があります。銀行から借りたお金や、他人に一時的に立て替えてもらっているお金が負債です。自己資本の2000億円は俗に言う、解散価値です。A社の株式時価総額は1000億円です。A社株をすべて時価で買い取るならば1000億円必要ということです。つまり、解散価値の半分の金額で、会社が丸ごと買えることになります。
  
 割安株投資には、成長株投資とはちがった醍醐味があります。解散価値であるPBR1倍を割り込むところまで売り込まれた銘柄を買えば、いつか、割安さが見直されて株価はPBR1倍まで戻るかもしれません。たとえば、PBR0.5倍で投資して、株価がPBR1倍になったところで売れば、投資した金額は2倍になります。投資した企業の売り上げや利益が倍になって株価も倍になるのを目指す成長株投資とは異なる面白さがあります。
 ただし、PBR1倍割れ銘柄を買って、高いリターンを得るためには、一つ重要な条件があります。投資した企業が倒産しないことです……。解散価値を割り込むまで株価が売り込まれている銘柄には、倒産リスクが高くなっている銘柄も含まれています。上場企業とはいっても、本当に倒産してしまうこともありますから注意が必要です。
 倒産リスクの調査は、厳密にやれば、とても大変な作業になりますが、一つ簡単な目安もあります。自己資本比率を見ることです。自己資本比率とは、総資産に占める自己資本の比率のことです。A社は20%(2000億円÷1兆円)、B社は80%(8000億円÷1兆円)です。自己資本比率の高いB社は、自己資本比率の低いA社よ
りも倒産リスクが低いと推定されますので、ここで買うなら、B社を選んだほうが無難です。 企業は、借金が返済できなくなると倒産します。借金がほとんどなければ、つまり自己資本比率が高ければ、たとえ業績はさえなくても、倒産することはないわけです。同じPBRの低い銘柄だったら、自己資本比率の高い銘柄を選んだほうが無難なわけです。
 ただし、自己資本比率が20%のA社の倒産リスクが高いというわけでは決してありません。自己資本比率が2
0%でも財務内容に問題なく、黒字を計上している企業ならば、割安株投資として魅力的な投資対象です。でも、きちんと財務内容や業績動向を調べてから買うようにしましょう。そのような調査が自分ではできないという人は、あえて自己資本比率の低い銘柄を選ぶべきではありません。
 PBR0.5倍で投資したら、倒産しない銘柄であれば、「果報は寝て待て」。1年後か2年後か、はたまた5年後かもしれませんが、いつか割安さが見直されて、株価がPBR1倍まで上昇するかもしれません。5年なんて長すぎるなんて言わないでください。5年で株価が倍になればリターンは+100%ですから、年平均20%のリターンに
なります。他人のすすめる株を買って下がってしまったり、短期トレーディングで失敗して苦い思いをした人は、一度ぜひ、割安株の長期投資に挑戦してみてください。急がば回れ。


窪田 真之(くぼた・まさゆき)大和住銀投信投資顧問シニア・ファンド・マネー
ジャー。日本証券アナリスト協会の企業会計研究会委員。企業会計
基準委員会のセグメント情報等開示専門委員会専門委員。

2008 07 06 [13. フィナンシャル ジャパン] | 固定リンク | トラックバック

2008.07.05

[フィナンシャル ジャパン] インフレ時代の“負けない投資”

第7回資産運用サミット2008

北野 一 JPモルガン証券株式調査部 マネジングディレクター チーフストラテジスト
朝倉智也 モーニングスター社長 COO
木村 剛

暫定税率や日銀総裁人事など政治の迷走が目立つ中、景況感は悪化し、物価は上昇している。経済の専門家や企業トップによる講演などが行われた「第7回資産運用サミット2008」。「いま個人投資家が持つべき視点・取るべき行動」について考える機会となったようだ。詳細をレポートする(肩書きは当時)。

景況感が “ようやく”悪くなってきた 

 4月12日午後、東京・六本木のアカデミーヒルズ。約300人の個人投資家らが来場した「第7回資産運用サミット」の冒頭、フィナンシャル ジャパン発行人の木村剛が「日本経済と金融の行方」と題して講演した。
 最近の景況感について「大企業を含めて“ようやく”悪くなってきた。だが中小企業の景況感は以前から良くなかった。年商1億円以下、従業員10人以下の小企業は深刻で、特に2007年の秋口から特に悪くなったと感じている経営者が多かったはず」と述べた。
 サブプライムローン問題が表面化して以降、日本ではアメリカ経済を心配する声が高まっているが、「日本のほうが株価は下がっている。アメリカより自国の心配しなければいけない」と訴えた。
 日米の対応のスピードに大きな差があることを問題視。アメリカは、シティグループのトップ更迭、中東マネーの受け入れ、FRBによる特融などが一気に行われた反面、「日本は90年代の不良債権処理を思わせる遅さ」と指摘。「福田政権はその原因を真摯に考えるべきだ」と警鐘を鳴らした。
 日本の現状を憂れうべき証拠として、「欧米と日本の金融機関の貸出量が、サブプライム前と後でどれだけ変化したか」というデータを提示。07年1月と8月の各前年同月比を見ると、アメリカの法人貸し出しは1月より8月のほうが5.8ポイントも伸びて19・8%になっているし、EU(欧州連合)加盟国も同様に1.3ポイント伸びて14・5%に
なっている。一方の日本は、2.8ポイント下がって▲0.3%。前年よりも法人への貸し出しが減ったということだ。
 その上で、こうした日本の現状を「行政不況」と断じた。例として、金融商品取引法の施行で金融商品の説明に何時間もかかるようになったことや、建築基準法の改悪で審査に時間がかかるようになり新規住宅着工件数が激減したことなどに言及した。
 さらに、貸金業法の改悪でグレーゾーン金利が廃止され、商工ローンなどの貸金業者による貸出金額が、以前の半分である10兆円程度になるとの見通しを示した。「中小企業が借りている金額を1社500万円としても、200万社が影響を受ける計算だ。少なめに見積もって50万社が商工ローンから借りているとして、日本にある440万社からすると8社に1社は貸し渋りにあう。これで経済に影響がないわけがない」と訴えかけた。
 こうした中で、資源価格のみならず、各種の物価指数も上昇していることに触れ、インフレに負けず、政府や年金だけを当てにしないためにも、投資の必要性があると述べて講演を締めくくった。

米国金利動向に注視――北野
予測より分散投資を――朝倉

 「負けない投信の選び方」と題したパネルディスカッションには、投資信託の評価を行うモーニングスターの朝倉智也・社長COOと、JPモルガン証券株式調査部でチーフストラテジストを務める
北野一氏が登場した。司会はFJ発行人の木村が務めた。
 北野氏はまず、日本の実体経済がかなり悪くなっているとした上で、日本の株式市場がアメリカの金利動向にリンクしていることを指摘。「FRBの金利引下げが打ち止めになれば日本の株も下げ止まるだろう」と述べた。その例として、06年にはアメリカの金利引き上げが一旦止まった、その10週前に日本の株価が当時のピークを
つけていることを挙げた。
 朝倉氏は「常々、『マーケットを予測して買っては行けない』とお話ししている。サブプライムローン問題が起き、先進国とのリンクは低いと見られ、一時は上がり続けた中国などエマージング諸国の株価も、結局今では下がっている。この点、予想を外した専門家もたくさんいる。だからこそ分散投資が必要なのです」と自説を展開。分佐藤氏の方法として「違った値動きをする商品を複数買うこと。よくわからない商品に投資しないことです」と訴えた。
 さらに、日本の金融資産が約1500兆円として、投信の残高は約75兆円に過ぎない。一方でアメリカは1200兆円もあるという事実を挙げ、「国内外、株式や債権などにバランスよく投資してくれる投信がもっと投資先になら
なければ」と話した。

投信選びのポイント
分散投資はつまらないが……
 

 日米の投資について考え方の違いについて北野氏は、欧米の運用会社では、ファンドマネジャーの評価が過去8年の成績でボーナスが決まることもある一方、日本では四半期とか半年、1年での結果が求められるとし、「日本の投資家のほうが、予測が当たったか外れたかどうかに対する評価が厳しい」と述べた。理由として、海外の投資家は、投資先を最終的に決めるのが自分であるという意識があるからだと述べた。海外では、予測の当たり外れよりも、(予測が自分の考えに)刺激をもたらしたかどうか、論理に一貫性があったかどうかが重視されるという。
 朝倉氏は、日本の個人投資家には、目的を持たずに投資している人が多いと述べ、「目的がないから、リスクを取る必要のない人が取りすぎていたり、逆にリスクをもっと取って投資していい人が、リスクを取らなすぎたりしている」と問題提起。「『半年で倍になる商品を教えてくれ』などと言われることがあるが、それは投資ではなく投機です」として、あくまで長期投資の必要性を強調した。
 さらに朝倉氏は、投信選びのポイントとして、▽過去5年以上など長期にわたる運用実績▽トータルでかかるコスト(ノーロードでも信託報酬が高いものがある)▽運用会社の得意とする分野――などを見ることを提案。販売員から商品に関する説明を受けたあとで、「ところであなた(販売員)はこの投信を買ったのですか? と聞けばいい」とまとめた。
 北野氏は豊富な経験からさまざまなエピソードも披露した上で、「分散投資はつまらないものです。隣で集中投資をしてたまたま高リターンを出している人がいても情をコントロールしてそれをうらやまず、“平凡な”利回りを出
すことです。年7%でも複利運用すれば10年で元金が倍になるのですから」と呼びかけた。
 来場者の中には、メモを取っている人、真剣なまなざしで壇上を見つめる人も少なからずいて、経済の先行きが不透明な時代だからこそ、投資の指針が求められていることがうかがえた。
 資産運用サミットではこのほか、保育所運営会社などを傘下に持つJPホールディングスの山口洋社長によるIRプレゼンテーション、木村剛との対談なども行われた。

2008 07 05 [13. フィナンシャル ジャパン] | 固定リンク | トラックバック

2008.06.29

[フィナンシャル ジャパン] 株主優待の季節

[フィナンシャル ジャパン7月号掲載]
【会社法がわかれば商売がわかる!】 中央大学法科大学院教授 野村 修也氏

 上場企業のうち株主優待制度を実施している会社は、1000社を超えている。そのうち7割以上の会社は、5月から7月にかけて優待品を株主に届けている。まさに、春から夏にかけてのこのシーズンは、株主優待の季節だ。
 個人株主増強策として、すっかり定着した感のある株主優待制度であるが、最近では、その内容にも進化が見られるようになっていることは周知の通りである。
 例えば、株主優待に代えて、社会福祉施設やNPO法人等への寄付を選択できるようにする会社も見られるようになった。会社が用意している優待品(自社の飲料水)の代わりに環境活動への寄付を選択できるようにしている、アサヒビールやキリンホールディングスなどがその代表例である。そのほか、目薬の商品名を社名に採用しているロート製薬では、盲導犬の育成に努めるアイメイト協会への寄付を選択できるようにしており、本業と親和性のあるCSRの運動に株主を巻き込むことが試みられている。
 その他、注目すべき傾向として、優待内容に工夫を凝らす企業が増ている点も指摘できる。例えば、アパレル業のクロスプラスは、100株以上の株式を有する株主を対象に、株主総会の会場で海外旅行券の抽選を行っている。TBSやテレビ東京などのように、スタジオ見学や公開番組への招待といったユニークな株主優待を実施
しているところもある。
 そんな中で注目されているのが、同じ株式数でも長期に保有している者への優待を厚くする仕組みである。例えば、インターネット上で飲食店の情報を提供しているぐるなびは、株主優待として飲食券を配っているが、3年以上連続して株式を保有していると、その枚数が倍になる仕掛けだ。お米券を配っている投資会社の昭栄の場合も、3年以上連続して株式を保有している株主には、1 kg分のお米券が追加されることになっている。
 株式の長期保有に対するインセンティブを付与しようとするこの試みは、一歩間違えれば、露骨な安定株主工作を通じた買収防衛策と見られる危険性があることから、リーガル・チェックが不可欠である。
 株主優待制度が抱える法的な問題点は、①株主に対する利益供与の禁止規定(会社法120条)に抵触しないか、②株主平等原則(会社法109条)に違反しないか、③配当規制(会社法453条以下)の脱法行為となっていないか、という三点に集約できる。①については、形式的にみれば株主優待は会社法120条に抵触しそうであ
るが、同条はもともと総会屋に対する利益供与を禁止する趣旨で設けられたものであるから、その趣旨に照らし、株主優待には適用されないというのが通説である。
 しかし、敵対的買収が現実化している中で、突如高価な株主優待が導入されたり、長期保有に極端な優遇措置を設けたりすれ、会社法120条との関係が問題になる可能性は否定できない。また、合理的範囲を逸脱する形で、差別的な優待制度を導入したり、分配可能額がないために無配になっている会社が、漫然と高額な株主優待を継続することにも、厳しい目が向けられる可能性がある。
 特に、最後の点については、金銭のみならず現物での配当が認められるようになった新会社法の下では、配当と優待との区別が難しくなっていることにも留意する必要がある。

2008 06 29 [13. フィナンシャル ジャパン] | 固定リンク | トラックバック

2008.06.28

[フィナンシャル ジャパン] コンテンツ力が支える快進撃

[フィナンシャル ジャパン7月号掲載] 少子化日本で勝つ“ディズニー” コンテンツ力が支える快進撃

 東京ディズニーリゾート25周年記念セレモニーはファン殺到

 「25周年記念オープニングセレモニーにご来場ありがとうございます。これもひとえにこれまで来場してくれた多くのゲスト、支えてくれたパートナーであるウォルト・ディズニー社のおかげです」。
 4月15日、東京ディズニーランドのシンデレラ城前で開かれた「東京ディズニーランド25周年記念オープニングセレモニー」で、オリエンタルランド(OLC)の加賀見俊夫代表取締役会長兼CEOはそう語った。続いて米ウォルト・ディズニーのボブ・アイガー社長が登壇し、「米ディズニーにとっても意義深い日」と祝辞を述べ、「これからの25年に大きな期待を寄せています」とした。
 さらにシンデレラ城の上方にミッキーマウスが顔を出し、25周年の開幕を告げると花火が華々しく打ち上げられ、楽隊の演奏とともにキャラクターやキャストが賑やかに踊るイベントが始まった。
 この日は、平日にもかかわらず開演前には1万5000人を超えるゲストが東京ディズニーランドの入り口前で列をなしていた。1年間を通じて行われる25周年記念イベントに向けられるファンの期待は大きい。開門の時刻を迎えると、来場者が勢いよく駆け込む光景が見られた。OLCが掲げた今年のテーマは、〝夢よ、ひらけ。〞だ。今年も夢見心地のひとときを求める人が数多く来園するのだろうか――。
 3月、「ウォルト・ディズニー・ジャパン」の動向が大きな注目を集めた。まず同月1日に「ディズニー・モバイル」がスタートした。次いで6日には、日本におけるアニメ制作が発表された。今年は奇しくも「東京ディズニーリゾート25
thアニバーサリー」。〝ディズニーイヤー〞めいたものすら感じられてくる一連のニュースだった。
 東京ディズニーリゾートを運営するOLCは、米ウォルト・ディズニーからライセンスを受けて運営する(同社広報部)という立場にあるものの、「〝ディズニー〞のコンテンツがわれわれの大きな強みのひとつ」とするように、コンテンツの浸透力とは無縁でない。コンテンツの人気と盛り上がりは追い風にもなる。

 少子高齢化にも対応東京ディズニーリゾートの戦略

 OLCによると、07年度の東京ディズニーランドと東京ディズニーシーの合計来園者数は2542万4000人。これは前年比98・5%だが、同社広報部は「これまで〝周年〞の年は増加となってきた。25周年の今年は過去最高を目指したい」と意気込む。
 OLCは昨年5月に発表した「中期経営計画」で、東京ディズニーランドと東京ディズニーシーという「コア事業の更なる強化」を掲げた。ここに、「ターゲットの明確化」という項目が含まれている。
 これについて、OLC広報部は、「子供向け」の発想から脱した魅力開発・提供で時代に応じていく姿勢を強調する。
 「従来はファミリー中心で来園者を見ていたが、近年は、子どもが参加できる〝ディズニーキッズ・サマーアドベンチャー〞や、子育てを終えた世代向けにディズニーシーで実施する〝フラワー&ツリーツアー〞といったサービスを用意している」。
 こういった老若各階層の特性に合わせた〝参加型〞スタイルの手法は、少子高齢化が進行する中、マーケット確保の意味で有益な手だてとなろう。
 また「クオリティの向上」(同経営計画)の一環として、今年7月には総工費440億円をかけた「東京ディズニーランドホテル」が開業する。室数はリゾート内のディズニーホテルでトップの705室で、「現在来場者の3割半ばを占める〝滞在型の来場者〞を、これからもっと増やしたい」とするOLCの狙いを象徴している。
 10月には、「アレグリア」などで知られるエンターテインメント集団、「シルク・ドゥ・ソレイユ」専用の常設劇場「シルク・ドゥ・ソレイユ シアター東京」がオープンし、滞在型で楽しめる環境づくりは着々と進んでいる。
 OLCでは、年々増加しつつあるアジアを中心とした、海外からの集客にも着手している。専門の営業チームを設置し、中国、香港、台湾、韓国で現地メディアを巻き込んだPR活動を展開中だ。06年度の時点ではこの層は、全来場者数の3.6%と占有率は低いものの、中国をはじめとしたアジア圏の成長が、東京ディズニーリゾートの来
園者増につながる可能性もある。

徹底した〝非日常〟の演出
End重視で満足感を引き出す

 娯楽産業のサービス創出に詳しい長島直樹氏(富士通総研上席主任研究員)は、東京ディズニーリゾートの独自性を、「全体システムでの非日常性創出」にあるとする。
 外部の日常的な建物が見えないよう配慮された設計は、その最たるものだ。同氏は、「①コンテンツ(アトラクション、ショー・花火)、②〝キャスト〞と呼ばれる現場スタッフ、③心理学を応用した空間設計」が相まってリピーター率95%という驚異的な数字を残す結果につながっていると分析する。
 さらに長島氏は、東京ディズニーリゾートは「ピーク・エンド・ルール」に照らしても理に適っているという。同ルールは、米国の行動経済学者ダニエル・カーネマンが提唱、顧客の評価は最高もしくは最悪の時間(Peak)と最後の体験(End)で決まるとするもの。
 夜に花火を打ち上げ、帰宅する来場者が駐車場から出るときも自社スタッフが丁寧に応対するのも、このルールに適い、来場者の満足に寄与していると同氏は見る。02年には、首都圏で「横浜ドリームランド」「向ヶ丘遊園」、関西圏では03年に「宝塚ファミリーランド」、06年に「神戸ポートピアランド」が閉園した。「子供向け」の遊園地は、少子化の時代、厳しい戦いを強いられる。
 だがもちろん希望はある。エンターテインメント自体にお金を使いたいと考える人が減少しているわけではないからだ。経済産業省の調査によれば、所得が年間100万円ずつ10年間増える(計1000万円)と仮定した場合に、「娯楽」は「貯蓄」に次ぐ2位で約140万円が割り振られるとの結果が出た。
 同調査では、全体で見ると60代〜70代がもっとも「娯楽」にお金を注ぎ込みたいと考えている(=遊びたがっている)ことから、テーマパーク・遊園地ビジネスにとって、「孫を連れて」というニーズの捕捉が今後は重要事項となるかもしれない。
 この点で、「大人が〝遊園地〞に行くという心理的抵抗を取り除く〝テーマパーク〞のスタイルを確立している東京ディズニーリゾートは強い」(富士通総研・長島氏)との見方が成り立つ。老若各階層の嗜好・興味を丁寧に読み取る姿勢が、テーマパーク・遊園地ビジネスの厳しい状況下でも、同リゾートの好調を導き出す要因なのだろう。

注目集まったモバイル進出コンテンツ力で集客効果

 「ウォルト・ディズニー・ジャパン」は3月1日から、ソフトバンクモバイルと協同して「ディズニー・モバイル」をスタートした。ユーザーは既存の携帯電話サービスが提供する主要サービスすべてが利用可能なほか、ディズニー・デザインの携帯電話機(シャープ、ソフトバンクと開発)、ディズニー・ドメイン(〜@disney.ne.jp)、限定コンテンツなどのサービスでファンに訴求していく。
 ビックカメラ有楽町店の原沢友之・携帯電話コーナー主任は、ディズニー・モバイルの勢いを、「発売から3月下旬にかけて非常に勢いがあり、まさにお客さまが〝群がっている〞印象があり、契約も伸びた」と語る。
同氏によると、立ち止まって手に取るのは10代後半から30代の女性が圧倒的だったという。「毎日を楽しく生きたい20〜30代を中心とする女性にむけて開発されたサービス」(ウォルト・ディズニー・ジャパン発表資料より)という送り手の戦略は、見事に成功している。
 「注目度の高さは商品カタログが短期間でなくなったことからもわかる。1000部程度用意しても2、3日でこれがはけてしまったため、店頭に置く際、部数を限定せざるを得なかった。通常の携帯電話ではこういうことはない」(原沢氏)やはり、〝ディズニー〞という知名度・認知度の高いコンテンツによって、来店者の目を引く効果が生まれたことは確かなようで、中年の来店者まで足を止めていたという。
〝ディズニー〞は、送り手の意図を超えて、老若男女を問わず、幅広い層に受け止められていると言っていい。  「4月に入って若干落ち着いてきた感じもするが、今後は新商品が投入されるとの話も聞いている」(原沢氏)ため、これまで以上の反応も見込まれる。

日本市場を意識かアニメにも〝ローカル色〟

 アニメと言えば、世界的な高評価を受け、〝日本のお家芸〞との意識も国内で高まっているが、今回のウォルト・ディズニー・ジャパンによる日本でのアニメ制作は、日本の制作会社と協業する形であり、日本のアニメ力を取り込もうという意図も感じられる。同社は『リロ&スティッチ』(03年)を、沖縄県竹富島を題材にテレビアニメ『スティッチ(仮)』として日本で制作すると発表した。日本市場を強く意識した作品作りを視野に入れている。
〝ディズニー〞はアメリカ発の〝舶来品〞だが、アニメ、キャラクター商品、そしてテーマパークの魅力を通じ、国籍〞を超えた市民権を得るに至った。始まったソフトバンクとの協業、日本のアニメ制作会社との提携、東京ディズニーリゾート25周年もさらにその流れを強めるだろう。確立された〝コンテンツ力〞を基盤に、少子高齢化で日本の人口構成が変わろうとも、性別・年齢を超える〝ディズニー〞の快進撃は変わらず続きそうだ。

2008 06 28 [13. フィナンシャル ジャパン] | 固定リンク | トラックバック

2008.06.22

[フィナンシャル ジャパン] 顧客第一主義は本当に顧客利益になるのか

「フィナンシャル ジャパン」 7月号掲載
連載コラム―ミクロを変える経済  財部誠一氏(経済ジャーナリスト)

 「分けてください」
 本当に美味しいものを売っている京都の老舗に買い物に行くとき、ついついそんな言葉がでてしまうと、堀場さんが言う。堀場さんとは、あの堀場製作所の創業者、堀場雅夫さんだ。BS日テレの情報番組『財部ビジネス研
究所』の取材でお目にかかった時の話である。
 本当に価値のあるものを作れば、お客さんのほうから「お願いですから、分けてください」と言ってくる。それくらい価値のあるものを創りださなければいけないというわけだが、私にはこの言葉がじつに新鮮に響いた。短期の収益を追いかけるあまり、コストカットや合理化ばかりが取りざたされるようになり、商品の価値そのもので勝負をするという思想が、ないがしろにされすぎてはいないだろうか。
 「分けてください」と客に言わせてしまう京都の老舗は、見ようによっては「プロダクト・アウト」に見える。客の事情などおかまいなし。供給者の論理で、一方的にモノを売ろうというやり方は最低最悪だ。対照的にお客さんの声、市場の声に真摯に耳を傾けた「マーケット・イン」が正しいと誰もが言う。その通りだ。だが客におもねり、値
下げまでして売ろうというのはちょっと違う。価格競争しなければ売れないというのは、市場価値が低いだけである。本当にお客さんが望む商品やサービスを提供していれば、お客さんのほうから出向いてきて「分けてください」となる。
 商売の本質だ。
 先日、大阪で日伝の西木利彦社長とお目にかかった。日伝は産業機械や工場設備などに必要な部品等々を幅広く扱う卸問屋である。この西木社長からこれまた驚くべき新鮮な言葉を聞かされた。「うちは仕入先第一主義です。顧客第一主義ではありません」
 卸問屋としての価値は、いい品物をどれだけ扱っているかで決まる。まずやらなければならないことは、素晴らしい商品を生産している仕入先との間で絶対的な信頼関係を構築することだという。それができなければ、お客さんの要求に応えられない。問屋の価値を決めるのは仕入先の価値だというわけである。
 まさに「分けてください」に通じる考え方だ。最近は猫も杓子も口を開けば「顧客第一主義」。だが言葉通り、本当に顧客利益を第一に考え、行動している企業はめったにあるものではない。ほとんどすべての企業は「自社第一主義」だ。自分の会社の利益が第一で、それを最大化するための手段、方便、それが世の中一般の「顧客第一主義」である。
 しかし堀場さんの「分けてください」や西木さんの「仕入先第一主義」という思想のほうが、実質的にはどれだけ顧客利益にかなっているかわからない。本物の価値、最高の価値を顧客に届けるという哲学が彼らの言葉の背景から見えてくる。本物の価値、最高の価値を顧客に届けるという哲学が彼らの言葉の背景から見えてくる。
 自分の会社にとって本当の「顧客第一主義」とはなんなのか。そんな議論をまじめに、繰り返し、やってみる。いまこそ青臭い議論が必要なのではないだろうか。会議で「マーケット・イン」をいくら叫んだところで空しいばかりだ。顧客への思いの深さが商売繁盛を呼び寄せるのである。

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ポッドキャスティング-木村 剛が斬る!
今週のテーマ: 社会保険庁をぶっ潰せ

福田首相が消費税の引き上げを示唆するような発言をした。
今の財政状況を考えれば、何らかの増税は必要ということは理解できる。
しかし、我々の保険料を無駄使いしている社会保険庁を残したままの増税には反対だ。

http://www.financialjapan.co.jp/podwmv/080618/080618mag_shaho.html

2008 06 22 [13. フィナンシャル ジャパン] | 固定リンク | トラックバック

2008.06.21

[フィナンシャル ジャパン] 年収1 億円とR O E 1 割

フィナンシャル ジャパン7月号掲載 「伯楽諫言」 木村 剛

 4月16日、経済産業省は、英投資ファンド「ザ・チルドレンズ・インベストメント・マスター・ファンド」(TCI)による電源開発株の買い増しを中止することを決定した。資本に関する外資規制自体は他の先進国にもある。だから、判断自体を間違いだと言うつもりはない。
 ところが、反対する論理の中身が薄っぺらすぎる。ある関係者は、「TCI は3~5年の投資期間を考えているからダメ」と語ったが、国内のファンドに対しては、同様の規制を課すつもりがない。そこで、「国内では短期で逃げる人はいない」と語ったからビックリ。いつから日本人投資家は、長期投資家に変身したのだろう。
 そもそも、TCI が短期間で高い投資効率を求めると、電源開発の経営が不安定になり、電力料金が上がったり、安定的に供給されなかったり等の影響が出る、という筋書き自体に無理がある。
 中でも、「TCI ファンドに対する勧告について」という公式文書には、「電源開発に対してROE を少なくとも10%、
ROA を少なくとも4%といった経営指標の目標値を設定し、その達成に経営陣が説明責任を負うことを要求している。他方、これら要求内容の具体的な実現方法は必ずしも明確ではない」と記されているのだが、これは笑止千万。
 株主がわがままなことを言うのは彼らの権利。命の次に大事なおカネを投じているのだから、経営を委託した経営者に対して、高い目標を要求するのは当たり前だ。
 その手の要求に対して、「それは、こういう方法で成し遂げます」と応えるのか、それとも、「大変申し訳ありませんが、その要求は非現実的と考えます。ただし、この程度の目標であれば達成してみせます」と回答した上で、結果を示して戦うのが、経営者の手腕と力量というものである。 
 なお、TCI が求めているROE10%という水準は、厚生年金を運用している企業年金連合会が要求しているレベルと同じ。法外に高いものではない。
 だから今回の顛末をみていると、「年金を運用する主体が必要としている利益水準を、日本企業に求めるなんて強欲だ」と開き直っている感じすら受ける。
 わが国の株式会社を率いる経済産業省がそういう考え方に染まっている限り、私たちの年金の運用利回りが改善することはない。そういう体たらくだから、公的年金はうまく運営されないのだ。
 冷静に考えてみてほしい。「具体的な実現方法を株主に問う」というのは、「現経営陣はバカなので、その要求にお答えする方法がわかりません。だから、株主であるあなたが示す義務があります」と主張しているに等しい。だったら、トットと現経営者をクビにすべきということになる。
 要するに経済産業省は、「俺たちの会社である電源開発に文句を言うやつは要らない」と言って、駄々をこねているだけなのだ。電源開発は2004年10月に上場して以来、営業利益を減らし続けているが、天下りを含めた役員全体の報酬は増額され、一人当たり7000万円ももらっている。トップは1億円を軽々と超えているに違いない。
 それだけの高給を食んでいる経営者であれば、ROE1割というハードルごとき軽々と超えてみせてほしい。それが、経営者としての心意気なのではあるまいか。

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ポッドキャスティング-木村 剛が斬る!
今週のテーマ: 社会保険庁をぶっ潰せ

福田首相が消費税の引き上げを示唆するような発言をした。
今の財政状況を考えれば、何らかの増税は必要ということは理解できる。
しかし、我々の保険料を無駄使いしている社会保険庁を残したままの増税には反対だ。

http://www.financialjapan.co.jp/podwmv/080618/080618mag_shaho.html

2008 06 21 [13. フィナンシャル ジャパン] | 固定リンク | トラックバック

2008.06.17

[ゴーログ] 消費税率UPの前に茨木空港を止めろ!

 皆さん、こんにちは。木村剛です。「むとうすブログ」さんが、圏域人口や羽田空港までの所要時間が酷似している福島空港と比較しながら、茨城空港について語ってくれています。

福島空港について。現在一日に片道で、大阪へ5便、札幌へ2便、沖縄へ1便飛んでいる。・・・2007年度の国内線利用者は40万人ほど。・・・福岡便が2006年に、名古屋便が2007年になくなっている・・・。・・・大阪便の・・・利用率は平均で60%前後で、小型機を使って便数を増やしても、利用者の減少に歯止めが掛からない・・・。2007年度には関空便が1往復減、今年はさらに伊丹便が1往復減っている。・・・大阪便には、札幌便や那覇便にない利用価値がある。それは、福島空港では維持できなかった福岡便をはじめ、四国、九州方面へ、大阪乗り継ぎ利用を期待できるという点。しかし、新幹線を使って羽田空港を利用した方が安い。しかも便数が多いので時間的なデメリットは大きくない。つまり、お金を出して都心での乗り換えを嫌う人にしかメリットがない。

茨城空港について考えてみる。・・・需要予測は年間約81万人とのこと。しかし、東京へのアクセスで似た条件にある福島空港から見ると、まず、大阪便、札幌便、沖縄便で福島空港の年間利用者40万をクリアできるかどうか。これが結構厳しいハードルであることが見えて来る。羽田空港までの料金はどうかというと、郡山からは新幹線を使って8,440円で、水戸からは特急を使って4,490円、バスならさらに安くて3,500円。この差が小さくないように見える。茨城空港で札幌、沖縄、大阪以外のルートはどうか。やはり羽田空港に料金的に福島空港より近いという点が大きい。福島空港で飛ばなかったものが、茨城空港で飛ばせるとは想定し難い。昨今は、燃料高騰によりむしろ地方路線は整理が進んでいる。そんな中で、福島空港よりも条件が悪そうに見える茨城空港に対して、茨城県の要請に応える会社がいくつあるだろうか。 

 要約すれば、茨城空港はペイしないということですね。「むとうすブログ」さんの読みは概ね正しいのではないか、という感じがします。額賀財務大臣は増税による財政再建を唱えていますが、地元空港の不採算性に目をつぶるのであれば、説得力はほとんどない。消費税率アップの前に、茨城空港を断念することを英断したらどうでしょう?


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ポッドキャスティング-木村 剛が斬る!
今週のテーマ: 蔓延する政府規制への「変な妄想」


政府の教育再生懇談会の第一次報告のなかで、
「有害情報から守るため、小中学生に携帯電話を持たせない」という提言が出された。
法律で規制するという話まであったこの問題だが、あまりに純粋培養だし、
この問題に限らず、「政府がちゃんとやれば何とかなるんだ」という
変な妄想が増えてきていないだろうか。

2008 06 17 [13. フィナンシャル ジャパン] | 固定リンク | トラックバック

2008.06.15

[フィナンシャル ジャパン] 四半期開示と四半期配当

[フィナンシャル ジャパン6月号掲載]
【会社法がわかれば商売がわかる!】 中央大学法科大学院教授 野村 修也氏

 4 月1日より、上場企業の四半期開示が充実した。金融商品取引法の施行によるものである。
 わが国における四半期開示の制度は、東証マザーズの創設に伴って、1998年から始まった。その後、東京証券取引所が、新興企業のみならず上場企業全体に四半期開示を義務付けたのは、2003年4月のことである。し
かし、これらはあくまでも取引所の自主規制であって、従来の法律では、通期決算と半期決算が義務付けられていたにすぎなかった。
 そのため、取引所の自主ルールに基づく四半期開示については、公認会計士や監査法人による監査は行われず、仮にその開示内容に虚偽があったとしても、罰則の適用はなかった。また、損害賠償を容易にするための推定規定も適用されないといった点が指摘されてきた。さらに、開示すべき期限も明確ではないといった問題があっ
た。こうした問題点は、今回の法制化によって大幅に改善された。四半期報告書への虚偽記載に対しては、刑事上および民事上の厳しい制裁が加えられるようになったほか、公認会計士または監査法人による簡易監査も導入された。さらに、四半期報告書は、3カ月ごとの期末から45日以内に提出することが義務付けられた。
 一方、会社法は、これに先立って、四半期配当を可能とする制度を導入している。旧商法の下では、営業年度を1年とする会社は、年に1回の利益配当と、年1回の中間配当しか認められなかった。しかし、剰余金の配当と実質上同じ機能を持っている「自己株式の取得」が何度でもできるのに、配当だけ回数を制限するのはバランス
を欠くといった批判が強かった。また、分配可能額の範囲内でのみ配当を認める形にするのであれば、債権者の保護に欠けることにはならない。そこで、会社法は、利益配当の回数制限を撤廃し、期中に何度でも配当を行えるようにしたわけである。
 その結果、株式会社が、最終の事業年度の直後の事業年度に属する一定の日(臨時決算日)を定めて、その日における財産の状況を把握するための臨時計算書類(441)を作成し、決算に要する監査等の手続き(441ⅡⅢⅣ)を経た場合には、臨時計算書類に属する損益計算書上の当期純利益(461Ⅱ②イ・⑤)と、自己株式を処分した場合における当該自己株式の対価額(461Ⅱ②ロ)を、分配可能額に加算することが認められることになった。言い換えれば、分配可能額の算定基準時を臨時計算書類の確定時にずらすことによって、最終の事業年度の決算日後に生じた利益を株主に分配することを可能としたわけである。これにより理論上は期中に何度でも配当できることになるが、決算の手続きを要することからすれば、事実上は四半期配当を想定したものと理解できる。
 いずれにせよ、いよいよわが国でも、四半期ごとに決算を行い、その業績を開示するとともに、四半期ごとに剰余金を配当する時代が現実味を帯びてきたことになる。現場からは、3カ月ごとに「業績を作るのが大変」との声もささやかれているが、決算はそもそも「作る」ものではない。その意味では、会社の側に「お化粧」の時間を与えないことが、これらの一連の改正の最大のメリットかもしれない。

2008 06 15 [13. フィナンシャル ジャパン] | 固定リンク | トラックバック

2008.06.14

[フィナンシャル ジャパン] ハイテク水着、ルールの厳格化より科学技術と人間の共存を!

 [フィナンシャル ジャパン] 6月号掲載  勝者の実学 スポーツジャーナリスト 二宮清純氏

 北京五輪を前に、競泳は空前の世界記録ラッシュに沸いている。先の欧州選手権では男子50、100m 自由形のベルナール(フランス)、女子50m 自由形のフェルトハイス(オランダ)、同400m 自由形のペレグリニ(イタリア)らが立て続けに世界新記録を樹立した。


 AP 通信によると、2月中旬以降に生まれた世界新記録は実に13。このうち12までがスピード社製の水着によるものだった。
 ここまでくれば何がしかの因果関係があると見るのが自然だ。偶然の産物とはとても思えない。
 さすがに「水着と浮力の関係」を無視できなくなったのか、国際水連は調査に乗り出す構えを見せているが、スピード社は「国際水連は一度、使用を認めている。なぜ今になって問題視するのか」と疑問を呈している。
 五輪の歴史は、同時に用具類の“進化”の歴史でもある。水着に限って見ても、1960年代から70年代にかけてはまだスクール水着をアップグレードさせた程度のものだった。
 それが80年代に入ったあたりからシームレスや超極細繊維の水着が続々、登場し、90年代に入ると画期的な低抵抗素材による水着が生まれる。水との摩擦抵抗を極限にまで減らす研究が進んだことで、いよいよ「ハイテク水着」の時代を迎える。
 その象徴が2000年シドニー五輪を席捲した「サメ肌水着」だ。ほぼ全身を覆うボディスーツ型で、イアン・ソープ(オーストラリア)が400m 自由形をはじめ合計3個の金メダルを獲得したことは記憶に新しい。
 「サメ肌水着」というネーミングでもわかるように、水着の表面にはV字型の溝が刻み込まれていた。整流効果を高めるためだ。流水力学の結晶がこの「ハイテク水着」だったのである。
 聞くところによると製品開発チームは実際にサメが泳いでいる姿を観察し、ウロコの形状まで事細かに調べ上げたという。
 ところで新型水着が登場するたびに「ルール違反だ」「いや合法だ」との議論が巻き起こる。国際水連は「推進力や浮力を与える用具」の使用を禁止しており、規定に抵触するかどうかが争点になる。私に言わせれば、五輪競技はルールと科学技術の進歩との永遠のいたちごっこである。字義どおりに解釈すれば、水着の生地表面
の凹凸を熱プレスで加工するだけで、これはもうルール違反である。表面にV字の溝を刻む「サメ肌水着」なんてもってのほかだ。 
 そもそも水着メーカーは「推進力や浮力を与える用具」こそを最良の製品として追求しているわけであり、その結果としての世界新記録の誕生なのだ。
 一部にルールの一層の厳格化を主張する者もいるが、今さらスクール水着の時代に戻れるわけがない。先祖返りして世界新記録のひとつも誕生しない五輪を誰が歓迎するだろう。もちろん行き過ぎは論外だが、科学技術の進歩をどのようにして競技の発展に結びつけていくか、それを模索するほうがはるかに建設的だと言えよう。
 ちなみに競泳の日本代表チームは他社との契約の関係上、スピード社製の水着を着ることができない。選手が望んでもダメなのだ。北京五輪で「8個の金メダル」を目標に掲げるJOCはこの硬直性こそを問題にすべきである。

2008 06 14 [13. フィナンシャル ジャパン] | 固定リンク | トラックバック

2008.06.08

[フィナンシャル ジャパン] 名誉あっての外交あり

フィナンシャル ジャパン6月号 連載コラム『超経済外交のススメ』 青山繁晴氏

 外交とは、国民の広い総合力で臨むものだ。だが、日本国では、外交・安保に関わる者は社会の深い部分で「変わり者」とみなされ、「狭い分野の人」にされてしまう。いわゆる軍事オタクの話ではない。専門家が、外交・
安保を包括的に国家戦略に組み込もうとすればするほど「いや、外交・安保の世界だけに閉じ籠もっていろ」という圧力を受ける。
 しかし逆に国の外交・安保が、たとえば一見は関係の薄い個人個人の名誉の問題と、どう根っこで繋がるかを国民が理解すれば、日本外交が劇的に変わる希望が生まれる。
 わたしは過日、長野県の松代町を訪れた。信州の山並みに残雪が美しい日曜日、ここで一人のアメリカン・ヒーローの法要が行われた。栗林忠道さんである。
 太平洋戦争末期の凄惨な硫黄島の戦い、そこで玉砕した陸軍中将の栗林さんがアメリカン・ヒーローとは、奇をてらって述べているのではない。栗林中将は、戦った敵国のアメリカでは名将として称えられ、祖国日本では忘れられ、生地の松代では「2万人の兵を玉砕に追いやった人」と貶められて、戦後の60年が過ぎた。
 ところが一昨年、ハリウッド映画「硫黄島からの手紙」が公開され、このアメリカからの発信で栗林中将の見直しが始まった。わたし自身も、硫黄島を忘れていたおのれを恥じて、民間人は立ち入り禁止の硫黄島に入ろうと防衛庁(当時)と交渉を始めた。難交渉の果てに、自力で島に入った。
 遺骨収集に同行し限定的に島を見た人たちはいるが、完全に自由に島内をくまなく検証したのは、いまだに不肖わたしだけである。
 その検証から浮かびあがったのは、指揮官・栗林中将の冷静にして熱い志だ。中将は将兵にバンザイ突撃と自決を禁じた。帝国陸軍に稀な親米派であり、最後まで日米開戦に反対したからこそ、アメリカがなぜ硫黄島を取ろうとするか、その真意を知っていたのだ。
 なかなか降伏しない日本を降伏させるには、硫黄島を拠点に本土を爆撃し、女性と子供を殺害して「民族根絶やしになる前に降伏しよう」と決断させる。それが真意だと見抜いて、玉砕を禁じ、灼熱のなか地下壕を掘って籠もり、奇跡のように持ちこたえて本土爆撃を遅らせてから、最後に玉砕した。
 見抜かれたアメリカは、海兵隊の猛将をはじめクリバヤシをフェアに絶讃し、いまだに硫黄島が大統領の演説に登場する。
 松代町で開かれた法要は「63回忌」であった。死者を偲ぶのは、ほんとうは50回忌で終わりだ。法要は単なる法要ではなく、栗林さんと、それから硫黄島で戦った「日本兵」という名の、30、40歳代のふつうの日本国民の名誉を回復する試みだった。だが、それは胸を突く異様な法要でもあった。主がいない。墓に遺骨がない。いまだ
硫黄島に取り残されたままだ。なぜか。名誉なき悪者にされているからだ。2万人の戦死者のうち遺骨となって帰郷したのは、たったの8千余。1万2千人以上が63年を経てなお、閉じ込められている。
 この法要を開くまでには、地域で嫌がらせもあったと聞く。参列し、つたない講演をしたわたしにも、これは全国から嫌がらせがある。おのれの名誉を知らない国に、たとえば名誉が何であるかを知るアメリカと、対等な外交はない。
 経済交渉であれ同じ事である。

2008 06 08 [13. フィナンシャル ジャパン] | 固定リンク | トラックバック

2008.06.07

[フィナンシャル ジャパン] 職は世につれ・・・・・・

フィナンシャル ジャパン6月号掲載  大学生の就職人気ランキング

 2008年の新人が入社したばかりだが、すでに09年の就職活動(就活)戦線は動いている。学生の人気企業ランキングも公表されており、常連大手の名前が並んでいる。

大卒就職は
超売り手市場

 大学生の就職事情はここ数年、かなりの売り手市場だ。その背景には、団塊世代が退職し始めていることや、バブル期の大量採用とその後の採用抑制で、年齢構成のバランスが崩れていることがある。毎日コミュニケーションズが09年春に卒業見込みの大学生、大学院生を対象に行った調査(有効回答数は1万7153人)を見てみ
よう。その中でも経済学部や法学部、文学部の学生を主に対象にした、いわゆる「文系」の人気ランキングについて検証する。
 1位はJTBグループ。以下、資生堂、ANA(全日本空輸)、三菱東京UFJ銀行、JAL(日本航空)、トヨタ自動車など、「知らない者はいない」と言えるほど知名度が高い会社が並んでいる。
 選んだ理由を見ると、JTBグループは「やりたい仕事ができそう」、資生堂は「業界上位である」「企業イメージがいい」、ANAやJAL(日本航空)は「国際的な仕事ができる」「やりたい仕事ができそう」、トヨタ自動車やメガバンクは「業界上位である」「安定している」という理由で支持されている。

上位20社を見る
人気企業の財務状況は?

 人気上位の企業は、果たしてどのような財務状況なのだろうか。上位20社まで広げて見ていこう。このうち、JTBグループ、サントリー、講談社、集英社は非上場企業だ。
 当然といえば当然だろうが、20社はみな、広く名前が知られた企業だ。マスコミ、運輸、電機、自動車。各業界のトップ企業がずらりと並んでいる。
 項目別に見ていくと、会社の規模の目安になる「売上高」「従業員数」とも圧倒的なトップに位置するのは、トヨタ自動車。大学生全般で人気が高く、文系では8位だが、理系では5年連続して首位の座を堅持している。
 収益性の目安となる「売上高経常利益率」を見ると、メガバンクが上位を占める。また、「自己資本比率」を見ると、フジテレビジョンが突出して高いことがわかる。続いて積水ハウス、ベネッセコーポレーションとなっている。
 健闘しているといえるのが、「エイチ・アイ・エス」だ。平均年収を公開している15社のなかで唯一、500万円以下。平均年齢が30歳未満ということもあるだろうが、「収入よりもやりたい仕事」を優先する社員が多いということかもしれない。
 前年との比較では、トップ3どころか、6位までの企業は(位置こそ変わっているものの)顔ぶれに変わりはない。7位に入った三井住友銀行が、22位からランクを上げた点が特徴といえるだろう。上位にいきなり食い込むのは難しいといったところだろうか。
ちなみに、理系のトップ10を挙げると、
①トヨタ自動車
②資生堂
③ソニー
④カゴメ
⑤シャープ
⑥日立製作所
⑦サントリー
⑧松下電器産業
⑨三菱重工業
⑩本田技研工業
となっている。俄然、メーカーが増えるなかで、4位のカゴメが目を引く。前年度と比較してみると、ソニーが20位から一気に3位へ。シャープが13位からトップ5に入ってきた。世界企業の面目躍如といえる。

20年前は
「公務員」がランクイン

 就職人気企業は世相を反映する。過去の変遷をたどってみよう。
 現在、企業活動の中心を担っている40歳代のビジネスマンが、就職活動したのが1980年代。今年の新卒社員が赤ん坊のころだ。この時期、人気があったのは、公務員や保険会社、商社などだ。
 そこから日本は、バブル経済に向かい、人気企業は一転。銀行や旅行会社が花形企業として躍り出る。バブルが崩壊すると、銀行は人気企業から姿を消す。94年を見ると、民営化されたJR各社、日本道路公団(JH)がランクイン。安定志向が復活したのだ。
 その後のIT革命は文系学生の意識にも影響を及ぼした。NTT、ソニーなどが人気を集めた。ランクには入っていないが、ITベンチャー企業が多く登場して注目されたことは記憶に新しい。
 注目したいのがJALだ。ここ数年、度重なるトラブルなどから経営が危ぶまれたにもかかわらず、文系大学生からは高い支持率を誇る。「ナショナルフラッグは潰れないだろう」と思っている学生が多いということなのだろう。

09年も採用数は増加へ
学生のイメージだが……
 2009年度の新卒採用計画数については、さらに伸びることが予想されている。
 業界別にみると、電機業界は東芝、シャープ、松下電器産業が採用数を増やすことを発表。自動車業界では、トヨタ自動車は前年並みだが、本田技研工業は採用数を増やすことを発表している。
 サブプライムローン問題の影響が大きい金融業界だが、大手に関しては前年と同程度以上であるようだ。みずほフィナンシャルグループは前年度と同水準の2350人、三菱東京UFJ銀行は前年度比でほぼ1割増の1500人、三井住友銀行は前年度比5割増となる2400人の採用を予定している。ここ数年、採用数を増やしてきた生命保険会社はほぼ横ばいだ。
 「大学生就職人気企業ランキング」は、あくまで学生のイメージであって、社会人として感じるもの、投資家として感じるそれとは異なっているかもしれない。だが、未来を担う若者が「自分が入るとしたらここがいい」と思う企業は、世間一般からのイメージも悪くはないだろう。

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ポッドキャスティング-木村 剛が斬る!
今週のテーマ: 蔓延する政府規制への「変な妄想」


政府の教育再生懇談会の第一次報告のなかで、
「有害情報から守るため、小中学生に携帯電話を持たせない」という提言が出された。
法律で規制するという話まであったこの問題だが、あまりに純粋培養だし、
この問題に限らず、「政府がちゃんとやれば何とかなるんだ」という
変な妄想が増えてきていないだろうか。